235 失踪の原因は
私は貴方といつも一緒にいます。
これからもずっと身近なところで。
でも、私の姿は見えなくなるでしょう。
心配しないでください。
ハワードはそう言った。
愛の告白?
そうとも取れる。
別れの意味にも取れる。
いずれにしろ、セオジュンとアンジェリナはともかくも、これまで親しくしていたハワードの失踪は、隊にとって痛手だったし、疑念を持ったことも事実。
ただ、アンドロ軍と戦い、巨大太陽フレアが今にも地球を襲うという状況下で、彼らの失踪事件のことは意識から遠ざかっていった。
大方の隊員にとっては、そもそも事件でさえなかった。
しかし、チョットマが目撃したんだ。
政府建物の正門でチョットマ隊が前線を張っているとき、マリーリが血相を変えて駆けこんでいくのを。
続いてニニも。
ニニは二人の失踪をとても悲しんでいた。
どこに行ったのか、知りたいと言っていた。
任務だから、でもあろうが、心からそう思っていたと思う。
だからチョットマは、ニニが太陽フレアから逃れるためにアンドロ次元に戻るとは思えなかった。
なにか理由があるはず。
チョットマの問い掛けに、やはりニニはこう答えた。
「レイチェルを探すことより、アンジェリナの救出の方が優先するかなって」
そして、アンジェリナの居場所の見当がついたと。
そこにセオジュンもいるかもしれないと。
彼らを助けに行くのだと。
いずれにしろ、この三人が失踪した原因について、これ以外に、まとまった情報は全くと言っていいほどなかった。
あるのは断片的な事象や昔話ばかり。
ンドペキは部屋を見回した。
「この調子で話していたんじゃ、時間がいくらあっても足りないぞ。どうする?」
「いいんじゃないか」
スジーウォンが、どうせ暇なんだし、と応えた。
「では、隊長のお言葉に甘えて。眠たくなったら寝ててもいいぞ」
「聞きたいことがあるんだけど」
と、ンドペキはライラに顔を向けた。
「なんだい」
仮定に基づいた推理を展開するより、単刀直入に切り込んだ方がいい。
「ある仮説を持っている」
「ん?」
「ライラ、旦那の前でいうのもなんだけど、あんたの夫、ひとり前はブロンバーグ、そしてその前はゲントウ。だろ」
「やなことを思い出さすんだね!」
「ハハ。思い出話を聞きたいんじゃないよ。聞きたいのは、マリーリのこと。あんたは、彼女ににいい感情を持っていなかった、よな?」
「本人がいないから言うけどね。そのとおりさ」
「あんたの後か先かは知らないけど、マリーリはゲントウといい仲だった。どう?」
「だから、やなことと言ったんだよ!」
「はい。もう一つ、マリーリは本気だった。なんていうのかな、つまり一途だった。アンドロ流かもしれないけど。どう?」
「まあね」
「マリーリは、ゲントウとの子を産んだ」
「ふん! さあね」
「それが、アンジェリナ」
「おい! あんたね!」
「あるいは、産んだと思っていた」
「聞いてどうするんだい!」
「ですね」
探偵から聞いた話。
あれは、完全に混乱していた。間違っていた。
ゲントウ、マリーリ、タールツー、キャリー、アンジェリナ……。
そしてレイチェル……。
誰が誰で誰の子か。
ライラから聞いた話、ヌヌロッチから聞いた話。
これによって、今は完全に見えている。
ただ、完全ではない。推測の域を出ない。
ひとつずつ、確認していこう。




