215 毛布を! 二人分!
ンドペキは案内された部屋を眺めた。
「ここでお休みください」
ここもまさしく何もない。
ただ、床と壁と天井があるだけ。
ベッドはおろか、何の家具もない。
トイレやシャワーも必要でしょうから。
食事は、こちらで。
今はアンドロが運びますが、いずれは皆さん自身で。
一応、テーブルとチェアは。
念のため、私に用があるときは、こちらの……。
ンドペキはがくりと膝を折った。
スゥは?
あっ。
すぐ横で同じように膝をついていた。
パキトポークが走り寄ってきた。
「すまない! しばらく寝てないんだよな!」
ここで眠ってしまうわけにはいかない……。
まだ知っておくべきことが……。
しかし、意識は薄れていく。
そうだ……。
クシの死体を屋根の上にあげて……。
ロア・サントノーレの荒野で、スジーウォンがカイロスの刃を手にするのを見物……。
「ヘスティアーに保護されし孤児、生贄を喰らう」の言葉のままに、ごうごうと燃え盛る火に飛び込んでレイチェルのシェルタに……。
騎士団に捕らえられ……。
政府建物に侵攻し、青い海のアギに弄ばれ、そして……。
その間、一睡も……。
「毛布を! 二人分!」
パキトポークが叫んでいた。
「装甲を脱げ!」
「いや、もう、このままで……」
「そうか、じゃ、ゆっくり休んでくれ」
その声を最後に、ンドペキは眠りに落ちた。




