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202/258

202 戻るしかないのか

 芝生広場での出来事の後、アヤは取り残されてしまった。


 本来、スジーウォン隊に合流するつもりで、一足先に正門へ向かったのだが、そこで群衆に飲み込まれてしまった。

 ンドペキとスゥが群集に揉まれながら、回廊を移動していくのが見えていた。


 スジーウォンと会わなければ。

 それができないなら、ンドペキと行動をともにしなければ。

 気は焦るが、動こうにも動けなかった。



 ようやく身動きができるようになって、イコマと合流した。

 フライングアイは別次元への移行はできない。


 どうする。


 アヤはほとんど悩まなかった。

 決めたのだ。

 私の家族はンドペキとスゥ。


 イコマと別れることは辛かったが、それはいずれ訪れること。

 それが今。



「おじさん」

「アヤちゃん」

「お別れね」

「そうだね」

「これまで……」

 後の言葉は続かなかった。


 なにを言えばいいのかわからなかった。

 しかし、涙は見せられない。

 スジーウォンが近づいてくるのが見えたから。



 スジーウォンが隊を纏めようとしていた。

 通信は使えない。

 隊員を探して、辺りを走り回っていた。


 アヤは、スジーウォンに断った。

 建物の奥へ向かう。

 すなわち、アンドロの次元に移行するつもりだと。


 スジーウォンは止めもしなかったが、後から行くとも言わなかった。

 考えがあるのだろう。

 隊長次席としての。



 政府建物も停電のおかげで、薄暗い。

 行けどもいけども、何の変化もない。

 次元移行のゲートがあるはずなのに。

 白い壁と天井が続いているだけ。

 空調によって冷やされた空気が熱を帯び始めていた。


 ところどころ、ンドペキ達が破壊した跡が残るばかりで、一向にゲートを通過する気配はない。

 とうとう最奥部に到達した。



 もう無駄だ。


 ゲートは閉じたに違いない。

 そう思うと無性に悲しくなった。




「どうすれば……」

「アヤちゃん」

「はい……」

 しかし、イコマからも答は聞けなかった。


 アヤは涙が流れていることを感じた。

 ゴーグルの中でもそれとわかるほど、次から次へと。




 一旦、戻るしかないのか。


 どこへ?

 隊に合流するか。

 でも、ンドペキやスゥのいない隊には……。


 少なくとも、見知った人がいる。

 スジーウォン。

 それだけでも心強いとは思う。

 でも……。



 考えがまとまらなかった。

 なにをすればいいのか、全くわからなかった。


 周囲には、同じように呆然としている多くの市民。

 頭を抱えている者もいれば、泣き叫んでいる者も。

 誰も、他人のことなど気にしていない。

 目を血走らせ、ただただ走り回っている者もいた。

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