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197 しばらく自由行動

「スミソ」

 パリサイドが頷いた。

 その目が、何としてでもチョットマを守り抜きます、と言っている。

「頼む」

「はい。眠ったようです」


 スミソが言うには、チョットマはセオジュンとアンジェリナを探しに行くつもりだという。

 そのために、この次元へ来たのだと。


「元々はそうじゃなかったんですけどね。元はといえば、あの緑色の髪の女、カイロスを起動させたタールツーを逃がすまいと」

「そうなのか」

「追いついて、どうするつもりだったのか、わかりませんけどね」



 芝生広場の隠し階段を降り、その階からここへ移行して来たという。

 スミソが、どうしたものかというように小首を傾げた。

 きっと、今のようにチョットマはスミソを手こずらせたのだろう。



「さっき、ここがアンドロの次元だと聞きました。いろいろ大変だとは思いますが、私はチョットマと共にいたいと思います」

「ああ」

「勝手を言いますが、しばらく自由行動をとらせてもらえないでしょうか」


 それは構わない。

 それで、チョットマが気を取り直してくれるなら。


「ありがとうございます。では、このまま、セオジュンとアンジェリナを探しに向かいます」

「ん、どこへ?」

「わかりません。この世界のアンドロに聞けば、なにか手がかりはあるでしょう」



 ヌヌロッチへ向けた言葉だったが、ヌヌロッチは我関せずという風で、市民のいる方向を眺めている。


「どうです? なにか、手がかりになるようなことは?」

 ンドペキが重ねて問うたが、これにもヌヌロッチはぶっきらぼうに、知りません、と応えただけだった。


「うむ。そこにおられる方々はいかがです?」

 しかし、誰も進んで声を上げようとする者はいなかった。




 ヌヌロッチが溜息をついた。

「ああ、こういうことになるとは……」

 眉間に寄せた皺から、困惑の色が浮き出ていた。


 市民が押し寄せてきたことを言っているのか。

 ンドペキは憮然としたが、違った。


「この次元も様変わりしてしまいました。だいたい、こういう、なんていいますか、気候のいいところではないのです」

「気候?」

「ここは、とてつもないエネルギーが充満し、暴れまわっている次元です。いつもなら」

「ふむ」

「こんなに平穏な状態は初めてです」

「そうなのか……。いつから?」

「ここ最近、徐々にですね。特に今日は。あなた方が入ってくるのを見越していたように。いつまで続く」

 のかわからないが、とヌヌロッチは言いかけて、「きっと何らかの作用が働いたのでしょう」と言い直した。




「大丈夫か、二人だけで」


 元々、このベータディメンジョンは生身の人間が生存できる場所ではないと聞いている。

 地球上の街のように、お上りさんよろしく歩き回れるところではないはず。


 ゲントウが作った装置といえども、どの程度の効果が見込めるのか、まだ実証はできていない。

 なにしろ、起動したばかりなのだ。

 今は確かに、少々息苦しく体が重く感じられはするものの、行動に支障はないし、生存が危ぶまれる環境でもないが。



 ゲントウがここに作った装置。

 人が住める環境にするための装置。

 数百年前に、アンドロ達に作らせた装置。


 ヌヌロッチは語ろうとしないが、どこかにあるはず。

 そして何らかの方法で起動させたはず。

 なにか隠しているのではないか、ンドペキはそんな気がした。



 背後に気配を感じた。


 ん!


 生きた溶岩に変化が起きようとしていた。

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