195 除隊いたします!
チョットマはひどくやつれて見えた。
顔色悪く、こわばった表情。
充血した目を見開き、唇にも血の気がない。
「無事でよかった」
と言っても、突っ立ったまま。
「あ」
チョットマの手から血が滴り落ちていた。
「怪我を」
チョットマは何も言わず、思いつめた顔で見つめ返してくるだけ。
「大丈夫か」
近寄ろうとすると、拒むかのように後ずさる。
「どうした……」
チョットマに代わって、前に出てきたパリサイド。
カイロスの広場でチョットマを守っていたパリサイドだろうか。
どうしたんだ。
チョットマ……。
こんな態度は。これまでなかったこと。
冷たいともいえる乾いた視線を向けてくる。
いったい、どうしたんだ。
パリサイドが口を開いた。
「チョットマは自分の髪を切ろうとして。ハクシュウの手裏剣で」
「えっ」
「うるさい! ほっといて!」
チョットマが悲鳴に近い金切り声を上げた。
「ほっといて! 私のことは!」
パリサイドが、「ほっとけないさ」と、肩をすくめた。
「僕は、東部方面攻撃隊隊員。隊長に報告する義務がある」
「えっ!」
「うるさい! 黙れ! 私の話が先!」
パリサイドはまた肩をすくめ、
「というような状況です。スミソです。再生されました。この体で」
パリサイドとして!
再生!
ンドペキは仰天したが、あり得ること、とすぐに思い直した。
「なっ、あ、そうか!」
「はい。ロア・サントノーレのパリサイドに。サブリナという女性です」
「サブリナ。そうだったのか。命があって、何よりだったじゃないか」
祝福の言葉として適切だったのかどうかわからなかったが、とっさに出た言葉にスミソは意外にも、
「この体、なかなか扱いに慣れなくて」
と、笑ったような気がした。
その短い言葉のやり取りの間も、チョットマは厳しい視線をはずそうとしない。
そればかりか、見ていてわかるほど震え始めた。
そしてまた、金切り声を上げた。
「ンドペキ隊長! 私、この場限りで東部方面攻撃隊を除隊いたします!」
「なんだって!」
チョットマ!
待て!
なんだ?
話を!