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191/258

191 一時間経って戻らなければ、捜索隊を

 ベータディメンジョンに移行してきた市民は、その時点で三万人弱を数えた。

 時間が経つにつれ、新たに出現する市民の数は減った。

 最終的に隊員は、二十六名。

 市民を概ね千人ずつのグループに分け、それぞれに連絡係という名目で隊員をつけた。

 各グループは、それぞれに大きな円を描いて座らせている。



「ぬ? ヌヌノッチの野郎は?」


 市民をグループ分けし終え、それでどうする、という段になって、パキトポークがアンドロの姿がないことに気づいた。

「では後ほどって、どこかに行ったぞ」

「おいおい。ここをほったらかして、どこへ行きやがったんだ」

「さあな。次のお沙汰を待つしかないんだろうさ」

「なんともはや、段取りの悪いことだな!」




 しかし、待てど暮らせど、ヌヌロッチはおろか、アンドロは誰も現れない。

 オーエンが言ったパリサイドも、姿を現さない。


「おい。そろそろ、ちょいとまずいんじゃないか」

 パキトポークが群集を見やる。

「うむう」

 痺れを切らした市民が、不安と不満を高まらせている。


「では、こっちから行動に出るしかないか」

「移動するか?」

「ああ。しかし、この大人数での移動は始末が悪い」

「だな」

「この規模の行列を維持するのは無理だ」


 気分の悪い者や、老人もいる。

 勝手な行動を取りたがる連中もいる。

 すでにあちこちで小競り合いが起きていた。



「見てくる」

 ンドペキの提案に、パキトポークが難色を示した。

「いや、隊長はここにいてくれ。俺が」

「俺に行かせてくれ。スゥと一緒にだ」



 ヌヌロッチが言いかけたタールツーのこと、というのが今になって気にかかる。

 律儀なアンドロだから、ではなく、なにか重要な情報を伝えようとしていたのではなかったか。

 ということを口実にして。


「そういうことだ。だから、隊長である俺が行くのがいい」


 実際、東部方面攻撃隊の隊長だからといって、この群集を代表しているわけではない。

 市民を前にして、隊長だから話せることがあるとは思えなかった。


「なにか、考えがあるのか。そんじゃ、任す」

 パキトポークが折れた。

「性に合わないんだがな。ああいう連中を相手するのは」


 群衆の中で喧嘩が始まり、隊員が鎮めようと躍起になっていた。

「頼んだぞ。一時間経って戻らなければ、捜索隊を」




 ぐらりと眩暈がした。

「ん?」

「揺れたな」

 眩暈と思ったものは、地震だった。


 群集がにわかにざわついている。

 立ち上がる者、叫びだす者。


「座って! 座ってください」

 隊員が言い聞かせるように、それぞれのグループを纏めようとしていた。


「いざとなりゃ、こいつでも配るさ」

 食料チップ。

 さすがに三万人分はないが、少しは気分を和らげてくれるだろう。

「食ったことのある奴は少ないだろうがな」

「余計に混乱するんじゃないか?」

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