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186 命、尽きるとき

 地鳴りがした。


 回廊は静まり返った。

 固唾を呑んで見守る人々。

 その目に、数十個のフラッシュが焚かれたかのような鮮烈な光が飛び込んできた。

 空が一瞬にして明るさを増す。



 ついに、カイロスが起動された。



 フライングアイは、刃が振り下ろされると同時に、チョットマを抱いたパリサイドが空に飛び立つのを見た。

 女二人連れは、消えた。

 小さな階段でもあったのだろう。忽然と姿を消した。

 取り残された老人がひとり、刃が突き刺さったままの珠を悄然と見つめていた。



「ああっ! 光の柱が!」


 叫びが聞こえた。

 ニューキーツの西、数キロ先にある光の柱。

 普段は美しい光を放って屹立しているが、今や世界中の苦しみを呑み込んだかのようにのたうっていた。

 数倍にも膨れ上がり、地球上と宇宙空間の一点に頭と尻尾の先を縛り付けられた蛇のように、もがき苦しんでいた。

 しかも、見てはいられないほどの明るさを放っている。

 想像もつかないほどのエネルギーを運んでいることがわかる。

 光の柱が突き刺さる空は一面、虹色の渦。

 踊り狂うさまざまな色彩が現れては消え、イルミネーションのような光の粒を撒き散らしていた。



 その不吉さに、回廊の人々の顔に張り付いた不安が、ますます色濃くなった。



 アヤの元へ!

 イコマは引き返し、身動きも取れず呆然と立ち尽くす人々の頭上を飛んだ。


 爆発は起きなかった。


 空が見えない人々の心には、ジワリとした安堵感が湧き上がっていることがわかった。

 誰の目も、まだ不安で見開かれていたが、それでもゆっくりと息を吐き出す姿があちこちで見られた。



 探偵が最後に残した言葉が、心に残っていた。

 命が尽きるとき、友と話せてよかったよ。

 そうか。

 あいつはそう思っていたのか。


 刃が珠に突き刺さると同時に、探偵との通信は切れた。

 自ら切ったのか、システムが落ちたのか。


 以前、ユウから聞いたことがある。

 アギのシステムは、パリサイドが握ったと。

 しかし、システムそのものは地球人類の製造物。

 いくらエネルギーが供給されようとも、情報を流す装置自体は年代物。

 カイロスが生み出したエネルギーの波に、通信網は耐え切れなかったのだろう。




 しかし!

 まだ、フライングアイは飛んでいる!


 思考は、クリアだ!

 極度の興奮状態だが!

 ンドペキとの同期も切れていない!

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