表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

174/258

174 なにか、おかしい

「アヤちゃん!」


 パキトポーク隊の元へ救援物資を届けてくれた一団に、アヤの姿があった。

 アヤはスジーウォンを先導するはずだったが。

 コリネルスが気を利かせてくれたのか。

 確実にイコマと、そしてンドペキに会えるだろう救援隊に入れと。


 しかし、互いの無事を喜び合っている時ではない。

 イコマはパキトポークらを廊下に残し、ンドペキが消えたと思われる広大な空間を隅々まで探索して回った。

 誰の姿もない。


 パキトポークが腰に手をやり不信感を表したが、「本当にここなのか」とは言わなかった。

 ヘッダーの中では、さぞかし仏頂面をしているだろう。

 イコマに残っているンドペキの意識は、この部屋の中ほどまでだ。

 広間の中央に差し掛かった時点で、意識の共有が切れたのは確か。

 バーチャルに囚われたのなら、その状態の肉体が存在するはず。


「ここだと思うんだが……」 

 しかし、何らかの理由で、多少の転移が生じている可能性もある。

「待っていてくれ」

 仮想装置を気にする必要のないフライングアイだけで行動するほうが身軽だ。

「周辺を回ってくる」



 パキトポークの不信は無理もない。

 アギと記憶や思考を共有しているマトがいるなど、誰が思いつくだろう。

 もはや、実は、などと話してしまうべきときだろうか。

 いや、それはできない。

 パキトポークだけならまだしも、他の隊員達もいる。

 それに、ンドペキの意識と同期していない今、自分の判断だけで話すことではない。



 廊下を飛び回りながら、イコマは奇妙な感覚に襲われた。


 なにか、おかしい。



 その原因はすぐにわかった。

 アンドロ兵の姿がないのだ。

 政府建物に突入した当初、幾度かは遭遇した。

 ドトー率いるレイチェル騎士団は殲滅された。

 ということは、相手の戦力はまだ維持されていて、それに加えて自分達の現在位置は捕捉されていると思っていい。

 にも関わらず、攻撃がないどころか姿もない。


 ここに移動してくるまでの間、離れた地点で戦闘が行われてはいた。

 その場を避けるようにして移動し、ここに到達したのだ。

 当方はンドペキ隊とパキトポーク隊、そしてパッション率いる防衛軍ロクモン隊、シェルタに撤退したドトー隊の四部隊だけ。

 パッション隊も今や大幅に戦力を削り取られている。

 しかも、侵攻方面がかなり異なる。

 それならあれは、どの隊が交戦していたのだろう。



 アンドロ軍の内部分裂?

 そういえば、エリアREFへのアンドロ軍の攻撃。散発的で、決して統制の取れたものではなかった。

 攻撃してきたかと思えば、タールツーの使者と称して来た連中もいる。


 あれは、降伏を勧めに来たのであろうが、タイミングとして奇妙だった。

 当時、こちらが劣勢に立っていたわけではない。

 それに、使者三名の装備は、攻撃してくる連中とはかなり違っていたように思う。

 まるで騎士団のように、白尽くめで整った装備……。



 まさか。


 タールツーに寝返った親衛隊、あるいは騎士団が?

 それとも防衛軍?

 掌を返したロクモンの例もある。

 騎士団であれ、防衛軍であれ、寝返りはありえないことではないが……。

 寝返りがあったとして、元からあるアンドロ軍と、新規加入の兵との交戦なのか……。


 そんな可能性。あるだろうか。


 どの廊下も奇妙に静かで、人の姿はどこにもない。

 ただ、フライングアイの姿では部屋の扉は開けることができない。

 中にンドペキがいても、あるいはアンドロ兵が潜んでいてもわからない。

 やはりパキトポーク隊の誰かと回ればよかったか、と思い始めたとき、声が響いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ