表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

164/258

164 あたしゃね、そこに行こうと

 作戦室の外に、ライラが待っていた。

「歩きながら話すよ」

 と、案内人を先に行かせ、ピッタリ体を寄せてくる。


「まずは、うれしい話」

 サブリナという娘が帰ってきたという。

「よかったですね!」


「うん。よかったよ。じゃ、次の話」

 ライラはあっさり表情を変えると、

「おまえには知っておいて欲しいからね」と、早口で話し始めた。



 カイロスが発動するや否やに関わらず、この状況では、全市民の避難はやむをえない。

 避難命令は長官名で発令されるものだが、暫定長官がアンドロのタールツーとなれば、その命令は誰が出すのが正統なのか。


「正しいかどうかなんて、もうどうでもいいさ。誰が出してもいい。ブロンバーグは市長として命令を出すつもり」

 ブロンバーグはすでにタールツーに要請文を送ってあるという。

「そろそろ向こうの手元に届くはずだけど、まだ何の動きもないね」



 ライラでさえ、珍しく軽装甲を身に付けていた。

 いよいよそのときがやってきたのだ。



「ブロンバーグはおまえにもメッセージを発信して欲しいと思ってる。レイチェルの代理としてね」


 自分が?

 そんな大それたことを?


 チョットマは一瞬そうは思ったが、不安を口にしたりはしなかった。




「さて、ここからが本題」

 ライラが顔を覗きこんでくる。

 頷き返すチョットマに安心したように、言葉を続けた。

「問題は避難先」

「避難先?」


「そうさ。エリアREFの地下深くには、古の時代に作られた巨大な空間が広がっている。知っているだろ?」

「はい」

「ブロンバーグはそこに物資を運び込んでいる。彼が出す指示も、そこへ避難せよ、だ。ところが」

 タールツーはそうするだろうかという不安がある。


「タールツーはアンドロ。実はアンドロ次元にも避難先が用意されているらしい。ゲントウによって。以前、話したよ。覚えてるかい?」

 チョットマは頷いた。

「そこには容易なことでは近づけない。アンドロ次元自体が、生身の人間が活動できる場所じゃないからね」

 膨大なエネルギーが渦巻いている空間。そんな話を聞いた記憶がある。



 前を行く案内人に聞こえないように、ライラが顔を寄せてきた。

「あたしゃね、そこに行こうと」

「えっ! ライラが!」

「ちっ、大きな声で」

「ごめんなさい……」

「あたしにも夫がいる。ろくでもない男だが、今、その道筋を作ろうとしている。オーエンと一緒になって」

「えっ、あっ、そうなんですか」

「オーエンはその時期が近づいたことを知って、ホトキンを手に入れたかったのさ。アンドロ次元へ至る新しいゲートを開くための作業員としてね」

 

 今通じているアンドロ次元へのゲートは、使えなくなる可能性があるという。

 ゲートを維持するエネルギーが、こちらの次元から供給されているためだ。

 オーエンとホトキンが作ろうとしているのは、その逆。アンドロ次元の無尽蔵なエネルギーによってゲートは維持される。


「なんとか間に合いそうなんだとさ」

 ライラはフッと溜息をついた。

「夫が作ったゲートを潜らなくて、女房とは言えないだろ。うだつのあがらない男だけどね」



「でも……」

「ん? 心配かい? アンドロ次元が」

「うん……」

「そこを人が暮らしていく、少なくとも移動くらいはできる状態にするのも、ゲントウが作ったもうひとつの装置なのさ」

 その装置は、アンドロ次元に新しい位相を作り出し、その中で人々は暮らしていけるという。


「実は、今ここにも位相の異なる空間は存在するんだよ」

「そうなの……」

「いくつもあるらしい。くだらないアギどもが余生を送る場所さ」

「……」

「しかし、そんなものは太陽フレアの一撃で、ペシャンコさ」


 そうなのか。

 まさか、ンドペキはそこに落ち込んだのではないのか。


 ライラがチョットマの不安に気づかないはずはないが、話は先を急ぐのだろう。

 また、あっさり話題を変えてきた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ