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161/258

161 もう時間がないんだから

「チョットマ」


 あ。

 声が遠い。

 スジーウォン?


 さっと辺りを見回すと、建物の陰に、

「ニニ!」


 人目を憚るように、手振りでこっちに来いという。

 持ち場を離れるわけにはいかないし、門から目を離すわけにもいかない。

 あなたこそ、とチョットマは手招きを返した。



「会えてよかった」

 周囲を気にしながら近寄ってきたニニが思い切り笑顔を作った。

「門の見張り。だからここを離れられない」

 ニニは頷いて「ごめん」と舌を出した。

「私も職業柄、こんなところであまり人目に触れたくないから」

「SPだから?」

「大きな声で言わないで」


 ニニはSPではない。

 しかし、そのようなもの。

 アンドロでありレイチェルの直属の用人が、大勢の市民や政府建物内から監視しているかもしれぬ者の前で、反政府軍の兵と歓談している状況は、見咎められて得なことは何もない。



「それにニニ、あなたその恰好」

 ニニは軽装備ではあるが、防具を身に付けていた。


 装甲自体は普遍的なもので、一般市民でも所有している者がいるだろう。

 現に今、目の前で門に流れ込んでいる群衆の中にも散見される。

 その程度のものだ。

 しかし、ニニがなぜ……。


「この方が動きやすいから。それに、ほら」

 軽ヘッダーに取り付けられたゴーグルを落とすと、もう誰かわからなくなる。

「一応、私も隠密なので」

 くすりと笑ってから、ニニの声が改まった。


「どんな挨拶をすればいいのか、わからないけど」

「なに?」

「お別れなのよ」

「えっ」



 ゆっくり話している時間はない、とニニは言う。

「私、アンドロ次元に向かうことにした」

「……」


 ニニはマリーリが脇門をくぐり抜けていったことを知っているだろうか。

 同じ理由で?


「レイチェル長官を探すサポートをしろって、頼まれてるんだけど」

「そうね」

「私、決めた」

「なにを?」


 チョットマとニニは並んで立っている。

 正門や脇門から目が離せず、ニニもゴーグルを下ろしている。


「顔を見せてよ」

「チョットマの方こそ」

 仕方ないね、状況が状況だからと、ニニがまた笑い声をあげた。

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