表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

159/258

159 私にできること

 私にできること。

 ニューキーツを救うために。


 地球という概念は意識に遠い。

 このニューキーツから出たことがなかったし、街の外に興味もなかった。

 地球上にどんな陸地があって、どんな街があるのかも知らない。

 自分にとって、世界はニューキーツそのもの。



 そういや、パパは。


 世界中の街のことを話してくれた。

 昔の世界のことも。


 今、どうしているだろう。

 パキトポーク隊に無事に合流しているはず。



 私、どうすればいい?


 ライラは教えてはくれなかった。

 具体的に私がなにをすればいいのかを。

 なにをしなければならないのかを。


 わかっていることは、カイロスの刃とカイロスの珠を持って、どこかでなにかをするということだけ。

 その結果がどうなるかも知らない。

 しかしもう、ライラに聞きたいとは思わなかった。


 私は、言われたとおりのことをするだけ。



 それでいい。


 どうせ私は。

 出来の悪い隊員だから。


 隠された三つの門を封じ、正門を見張る。

 そんな簡単なことさえ、きちんとできない私。

 三人もの隊員を死なせてしまった私……。


 たちまち落ち込んでしまう自分を奮い立たせるため、緑色の髪を持つ女としてやるべきことをやる、と言い聞かせているだけのこと……。



 しかしいつしか、こうも思い始めていた。


 絶対に、ニューキーツを救う。


 エリアREFにいて、侵攻してくるアンドロ軍を蹴散らしている頃は考えもしなかった。

 ましてや、ンドペキをめぐってレイチェルと角突き合わせていた頃には。


 自分にこんな覚悟が生まれてくるとは。


 街の様子を知るにつけ、これはただ事ではない、と思うようになったから?


 長官レイチェルの身代わりだから?

 身代わりとして作られたクローンだから?


 強烈な暑さの中、健気に出勤してくる政府職員の姿を見ながら、思う。


 それに私、身代わりクローンの私自身も、そんな私を作ったレイチェルも、とうの昔に許せるようになった……。



 私、いつからこんなふうにものを考えるようになったんだろう。

 賢くなったわけじゃないし……。

 記憶容量が増えたようにも感じないし……。


 パパやンドペキやライラといろんな話をして、少しずつ大人になってきたのかな。


 ああ、また、あの頃のように……。

 いつ、ンドペキに会えるかな……。


 まさか……。

 もう、会えないのかも……。



 以前の私なら、そう考えただけで、涙していたと思う。

 でも、今は、悲しい気持ちも苦しい気持ちも、悔しい気持ちさえ、胸の内に留めておけるようになった。


 私は私の仕事を。

 私にできることを。



 政府建物に駆け込んでいく人の流れを見つめ、出てくる者がいないか、気を引き締めなければ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ