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150 己が祝福されない人間であることを思い知れ

「一時間、待て。退屈か?」

「ふざけるな! 待てん! 今すぐだ!」

「まあ、待て。今、ホトキンが必死で作業してくれている」


 ホトキン!


 もしや、これは……。

 ンドペキの気持ちが揺らいだ。


 本物のオーエンの声ではないか……。



「ホトキンにしてみれば虚しい作業だぞ。本来なら妻のライラを助けることの方が重要だろう」


 妻のライラ!


「そこを後回しにしてでも、お前達を助けようとしているのだ」


 揺らぐ気持ちに追い討ちをかけられたようなものだった。

 そんなシナリオが組まれていたとは思えないではないか。


「これは恩返しだと思ってくれ。義理は果たす」

 などとも言う。



 実は、とオーエンの声が話し出した。

「俺は、間違っていたようだ。パリサイドに対して、誤った気持ちを持っていたようだ」



 忘れもしない。

 エーエージーエスでの惨劇。

 パリサイドへの憎悪に駆られ、オーエンは無関係な百人もの兵を瞬殺したのだ。

 そんな心情が、数百年間も抱き続けた怨念が、それほど簡単に溶けるはずもない。



「JP01というパリサイドが来て……」

「えっ」


「サーヤが……」


 神の国巡礼教団に洗脳され、宇宙に飛び立ったオーエンの妻。

 JP01がパリサイドとなったオーエンの妻を連れて、エーエージーエスを訪ねた。

 しかし、そのときオーエンがとった行動は。


 この声はそれをどう説明するのだろう。

 俺を騙す気か、とその場でサーヤを真っ二つに切り裂いたその行動を。



 声は語らなかった。

 しかし、憎しみが幾分か安らいだことは、その口ぶりから窺い知れる。

 恩返し、義理を果たすという言葉は、それを表しているのか。


「そのパリサイドは何度も……、いや、それはもういい」



 ンドペキはスゥを見た。

 スゥは他の人に悟られない程度に、頷いてみせた。


「そいつはよかったな。めでたい日じゃないか」


 ンドペキはオーエンの声に向かって、朗らかに祝福を述べた。

 自分の罪を悔いればいい。

 己が祝福されない人間であることを思い知ればいい。



「さて、大事な話はここからだ」

 オーエンの声が、決然とした口調になった。

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