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15 無口なロクモン

「タールツー軍の様子は分からないのか」

「ほとんど見かけないらしい」

 政府内にも内戦中の空気はなく、職員も平静を取り戻しているという。

「馬鹿にされたような気分だな」

 かといって、今、強硬に攻めてもうまくいくとは思えない。


「我々にも行動を起こすべきときは来る」

 こういう時、コリネルスは慎重だ。

 参謀役として最も頼りになる男。

「確実に勝てる見込みがつくまで、辛抱するしかあるまい」

 政府内に攻め込むとなれば、一般職員に犠牲が出る。逆襲された場合には、市民にも迷惑がかかる。



 大まかな戦術は練ってある。

 前提は、レイチェル騎士団との合流。


 むしろ、騎士団が本隊で、政府建物内の状況に疎いンドペキ隊は別動隊となるだろう。

 騎士団にどれほどの人数が残っているのか分からないが、合わせれば百五十から二百ほどの軍になる。

 タールツー軍の人数も分からないが、荒野でのあの戦闘によって、かなり削減できているはずだ。


 もうひとつの前提は、ターゲットであるタールツーの居場所が長官居住区にあること。

 幸い、タールツーはほとんど長官居住エリアから出ないようだと情報があった。


「理由は分からないが、タールツーは暫定長官を名乗ってから、一度もやつらの次元に帰った形跡がないらしい」

 万一、そこに逃げ込まれては始末に困る。

「寝に帰る必要がなくなったからなのか、離れられない理由があるのか」

「両方だろう。まだ自分の軍さえ統率できていないんだから」



 タールツーが長官居住区から離れない件について、意見は割れていた。

 統率力に疑問を持つ意見。つまりまだ、政府や行政機関はタールツーの思い通りに機能していないという考え。

 いや、そうではない。使者の一件のような指示系統の混乱は、意図的にされているという意見。つまりンドペキ隊を翻弄するために。

 騎士団の動きが読めないからではないか、という意見もある。なにしろ、騎士団が篭るシェルタは長官居住区に直結している。


 そして、そもそもタールツー軍は、統一された隊ではないのではないか、という考え。

「やつら、もともとタールツー直属じゃなかったんじゃないか。治安省にいた連中だろう?」

「タールツーは治安省長官だぞ。直属でない兵がいるのか?」

 結局、そんな疑問だけが残ってしまう。


「ヌヌロッチとかいう男の情報を待つしかないな」

 レイチェルSP、ヌヌロッチという男。

 食料省の幹部だが、近々治安省へ転籍になるという噂があった。


「その件、どうも腑に落ちない」

「そうだな。今回の配置換えは、タイミングからみてタールツーの意図だ。治安省へ送るとなれば、タールツーの信任が厚いやつということになる」

「あるいは監視のために手元に置いておこうとしているのか」

「ハワードは信用してよい、と言っているが……」

 ただ、ハワード自身も、ヌヌロッチの移動の意味が分からないのだった。




「政府建物群はかなり複雑だ」

 コリネルスは暇さえあれば、マップを眺め、頭に叩き込んでいる。

「何棟にも分かれているし、フロアによってもかなり違う」

「重要なことは、タールツーをどうやって長官居住区に押し込めたまま戦うかだ」

「うむ」


 長官居住区は政府建物群の中央部。

 比較的小さな五棟の建物が、中庭を取り囲んでいる。

 それらの建物は地下でも繋がっており、他の建物群とも繋がっている。

 タールツー軍がどこに集結しているのか分からないが、きっとその近辺だろう。


 最も重要な点は、タールツー自身がどの建物で執務し、どの部屋で過ごしているのか。

 これがわからない。

 交戦しながら、どの部屋に突き進めばいいのか分からないのだった。

 下手をすれば逃げられてしまう。

 ンドペキ達はアンドロ達の住む次元、ベータディメンジョンまで追っていくことはできないのだ。



「タールツーがあっちの次元へ向かうルート。これは幾通りも考えられる」

 次元のゲートは、政府建物群の最奥部に集中している。

 長官居住区とそれらとの位置関係は、本来、万一の場合を考えて定められたのであろう。

「すべてのルートを押さえるのは難しい。遮断ラインも色々考えられるが、押さえるポイントの少ないパターンはこれだ」


 コリネルスがマップの上に引いたラインを説明した。

 作戦の大筋は、軍を二隊に分けることになる。

 タールツーを捕捉する隊、長官居住区内で取り逃がした場合のもう一隊。

 外側の網となる隊は、長官居住区に集結しているであろうタールツー軍をおびき出す役目も担うことになる。

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