表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

147/258

147 再びシナリオが進み始める

 浅い海の底。


 ンドペキは迷っていた。

 行き詰っていたと言ってよい。


 この海から抜け出す方法は、ただひとつ。

 マトやアンドロが入って来たというゲートを探し出すことのみ。

 ただ、自らをアギだと名乗るあいつの言葉が正しいとすれば。


 彼らとて、アギかどうか、わかりはしない。

 人口頭脳が作り出した仮想の像が語った、偽りの情報かもしれない。


 あらかじめ設定されたいくつものシナリオに沿って、迷い込んだ、あるいは侵入した者達を誤った方向に導いていくための嘘。

 むしろ、そう考える方が自然だ。



 しかし、どうしてもこの装置を破壊することはできなかった。

 幾度、エネルギー弾の集中砲火を浴びせようとも、海は何事もなかったように、緩やかな潮流で砂を巻き上げるだけ。


 しかも、ンドペキ達はそこから移動することもできなかった。

 この空間の特殊な位相構造。

 今いる場所はその直前にいた場所とは違う。

 集団行動には向いていない。

 その言葉がンドペキ達を縛っていた。


 足を踏み出せば、異なる位相に移動することもありえる。

 同時に仲間とはぐれしまう。

 そうなれば、ここにいる全員が、それぞれ孤立することになる。



 突っ立ったまま、かれこれ一時間ほどになる。

 ブーツが砂に埋もれかけている。

 もう、行動を起こすときなのか。

 ンドペキは己の愚かさを呪った。

 やすやすと罠に絡め取られてしまった己を。



 いつ、この罠に嵌ったのだろう。

 暗闇の空間に足を踏み入れたときか。

 あるいは、暗闇の中で装置のスイッチを踏んでしまったのだろうか。

 どこかでセンサーを横切ったのだろうか。

 はたまた、あの廊下の突き当りに無理やり穴を開けようとしていたとき既に、仮想空間に入り込んでいたのだろうか。


 ンドペキは隊員達に図った。

 どうするべきかを。


 しかし、打開策を口にできる者は誰一人いない。

 唯一、スゥが、全員手を繋いで、言ったことだけ。

 今、全員が武器を収納し、手を繋ぎあっている。




「行こうか」

 ンドペキは無理に元気な声を張り上げた。

「おう!」

 何人かが応え、まずは一歩を踏み出した。



 と、そのとき、声が聞こえた。


「厄介なところに入り込んだもんだな!」


 野太い男の声。



 足を踏み出したことで、再びシナリオが進み始めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ