133 作戦は成功させるさ
騎士団を頼って、時間を空費した。
今更ながら悔やまれる。
しかも、シェルタ経由作戦に勝機が大きいかといえば、そうでもないのだ。
常に騎士団との合流を主張していたロクモン。
あいつは、なにを画策していたのだろう。
少なくとも自分だけでも騎士団に合流したい。それだけだったのだろうか。
ンドペキ隊を捕らえることを手土産にして?
しかし、それがどんな意味を持ったのか。
ロクモンの部下達も、あの行動は全く寝耳に水だったという。
ドトーも、ロクモンと親しかったわけではないという。
奴の目的は、いったい……。
そんな思いが頭をもたげてくる。
「なぜ通路が塞がれたのか。もちろん騎士団を袋の鼠にしておいて、残るルートから攻め入ってくるつもりだったんだろう」
とはいえ、一度たりともアンドロ軍がシェルタへ侵入を試みた形跡はないという。
「タールツーがやったとしか考えられないんでしょう?」
アヤの頭の回転は速い。
逆説的に聞いてくる。
「まあな」
としか言いようがない。
臆病風に吹かれた騎士団自身が通路を塞いだとも考えられるが、さすがにそれを口にはしなかった。
「エリアREFには、攻めてきたのに?」
アヤは騎士団を、もう信用していない。
「腑に落ちないことはたくさんあるが、考えている時間は既にないし、ドトーも協力的でない」
いずれにしろ、治安省の小部屋に向かう通路を進むしかないのだ。
「治安省か。かなり奥まったところにあるよ」
「ああ。問題は、そのポイントがレイチェルの居住空間とも、執務室ともかなり距離があるということ」
治安省庁舎は、政府建物群の最奥部にあり、むしろアンドロ次元へのゲートに近い。
「マップはあるけど、どれほど役に立つか。一面瓦礫が原にしながら進むしかないんだ。弾薬の供給が問題だな」
やけくそ気味に聞こえたのか、アヤが心配顔になった。
「もしかして、作戦、失敗するかもって思ってる?」
ンドペキは改めて笑顔を見せた。
「作戦は成功させるさ。総合的にはな」
さてと、とンドペキは張りのある声を出した。
ギアチェンジだ。
「スジーウォン達を、レイチェルの長官室とベッドルームに連れて行ってやってくれ」
「三ブロックほど離れていますが」
アヤも、隊員の顔に戻る。
「優先順位は、到達時の時間帯にもよるだろうが、まずは長官室だ」
「了解!」
「マップはあるが、政府に勤めていた君がいれば何かと好都合。頼むぞ」
「はい!」
「連絡班リーダーという役割をどうするか、それはコリネルスが決めてくれる」
「はい!」
ンドペキは、体をアヤに心持ち近づけた。
「ねえ、アヤちゃん。さっきの質問だけど」
応えておかなければならない。
「僕自身の気持ちは……」
しかし、言い淀んでしまった。
目の隅に入ってきたものに気をとられて。