13 特殊な能力を持っているのかも
「カイラルーシの街は無防備みたいに見えるだろ」
「まあな。あの屋根があるといっても、そこにマシンがたむろしているとしたら、ぞっとしないな」
「うん。でも、そんな心配は要らないんだ。街の周辺にいくつも駐屯基地があるし、自動化された要塞も幾重にも張り巡らされてる」
「ほう」
「マシンは、めったなことでは街に近づけもしないんだよ」
「なるほど。で、この街の兵力はどれくらいあるんだ?」
「ああ、その言葉は禁句にしておこうね」
「……そうか」
この少年は、何者なのだろう。
この世界の常識どおり、ひとりで生きているのだろうか。
マトかメルキトだろうから、幾度も死に、そして再生されているのだろう。
コートを開いて見せてくれたとき見たもの。
あの装備は、何を意味するのだろう。
「その装備は?」
「もうすぐ戦争だろ」
とかわされたが、とはいえ、この少年が兵士であるというのもちぐはぐな印象だ。
あるいは一オールド前は兵士であり、その名残、あるいは思い出の品といったものだろうか。
ロア・サントノーレに連れていくなら、少しはこの少年のことを知っておかなければいけない気がした。
しかし、行く理由を聞くわけにはいかない。
聞けば、こちらの理由も話さざるをえなくなる。
つい、「まだ遠いのか」と、言わなくてもいい言葉が出てしまった。
アビタットは、フフンと、
「尾行してくるやつを巻きながら、だからね」と鼻で笑った。
「んっ」
あの女か。
「なぜ飛空艇に乗りたいのか知らないけど、足手まといはごめんだろ」
もちろんである。
「で、巻けたのか?」
「それが、敵もさるもの。巻いたつもりが、またついてくる」
「うむう」
「特殊な能力を持ってるのかもね」
「厄介だな」
「どうする? きりがないみたいだ。諦めて、飛空艇乗りの店に行く?」
スジーウォンは迷った。
乗客が増えて飛空艇屋は喜ぶかもしれないが、定員ってものもあるだろう。
しかも、行き先が違う。
「もう夜も遅い。夜間の外出禁止令なんて出ていないよな」
「それはないよ。ただ、どんな店も零時には閉まるから、人通りはなくなるよ」
「そうか、今、十時。あまり時間の余裕はないな」
「うん」
「じゃ、直行しよう。女が来れば、それはそのとき」
「だね!」