128 星空さえも幻影なのか
隊員たちが、倒れた者を担ぎ上げ、ビルに戻ろうとしていた。
少なくとも十名以上。
幾人かは、下腹部が装甲ごと抉り取られていた。
事情は聞くまでもない。
光線に焼かれたのだ。
しかし、なぜそんな事態に。
ルートを外れざる得なかったのか……。
政府建物への侵入を阻む緩衝地帯に張り巡らされた、バーチャルな罠。
なにが実体で、なにを信じればいいのか。
いや、今見ているこれさえも……。
弱気になりかけたが、フライングアイである自分が見聞きしたものは真実である、という信念に従うしかない。
そのためにここに来たのではないか。
隊員の声が、恐怖にわなないいていた。
霧が晴れて、俺達はじっとして、状況の変化を待っていたんだ。
突然、霧が立ち込めたかと思うと、前の方にいた連中が倒れたんだ。
俺ももう少しで死ぬところだった!
わき腹を光線が掠ってたんだ!
そんなことにさえ気づけなかったとは!
イコマは己の想像力のなさを責めた。
門へと導くルートを示す光線は一定でも、その他の光線は、生成される都度、位置や方向が変わる仕組みだったのだ!
チョットマが光線を切ったことで、新たに生成された光線の罠は、それまでとは違う編み目になったのだ!
たまたまそこに立っていた隊員たちを貫通して。
この防御装置を見くびっていた。
霧を無事に抜けさえすれば、そこに門があり、何らかの手を打てると考えていた。
それはとんでもない間違いで、ビル群まで一目散に撤退ということになった。
霧に突入するという作戦自体が、間違っていたのだ。
チョットマに、再考を促すべきだった。
己の危機予知能力の欠乏が情けなかった。
チョットマは無事だろうか。
強烈な不安にかられる。
ルートリストは、復路にも通用するものだったのだろうか。
帰路は別のルートだとしたら……。
今、霧は晴れているのだろうか。
立ち込めているのかもしれない。
こうして飛んでいる間にも、フライングアイは光線に焼かれるかもしれない。
イコマにとっては見えない光線に。