110 多くの謎が謎のまま
イコマは自分の部屋でひとり考えていた。
多くの謎が謎のまま、とうとうアンドロとの戦闘に突入していくことになった。
解けた謎はといえば、レイチェルのシェルタへ至る符号の意味がわかったことのみ。
セオジュンの行方も知れなければ、アンジェリナの行方も知れない。
ハワードが消えた謎に至っては、手がかりさえない。
もうひとつ。アンドロ軍の不可解な動きの謎。
政府建物への侵攻の前に掴んでおきたいことだったが、SP達からの報告は常に「建物内に兵の姿がない」というのみ。
少なくともセオジュンの行方だけは知りたいと考えるようになっていた。
アンドロ軍については、攻めていきさえすれば、おのずと知れるだろう。
しかし、セオジュンの行方については、こちらが動かなければ真相が向こうからやってくることはない。
真実に近づき、チョットマを少しでも笑顔にしてやりたかった。
その手がかりを掴むため、マリーリに聞いてみたいこと、話しておきたいことがあった。
面識を持っておきたいという気持ちもある。
二人を部屋に呼んでいた。
「私もお話があるんです。今から伺いましょうか」
別れ際、ニニはそう言ってくれたが、マリーリが乗り気ではなかった。
レイチェルに関係したこともあるので、と納得はさせたが、果たして来てくれるだろうか。
ンドペキのことを思った。
微妙な気分だった。
今はまだシェルタで、最後の作戦会議を開いていることだろう。
同期した意識が、こんなふうに途切れるのは初めての経験。
ンドペキが睡眠に入ったときに感じる空虚感とはまた違う。
通信機器がコネクトを探してトライし続けているような、ザワザワとした感触。
むっ。
突如として、ンドペキと同期し、ンドペキの思考が流れ込んできた。
今まさに話し合われていたこと。
明日からの作戦の詳細。準備しておかなければならないこと、などなど。
ンドペキの意識の中に、チョットマにいつ歌を披露してもらおうか、というのがあって、イコマは少しおかしかった。
と同時に、ンドペキの余裕が感じられてうれしくもあった。
シェルタにいるンドペキにとって、詰めておくべきことはたくさんある。
隊員は各自の準備や休息のために、エリアREFに戻ってきている。
しかし、ンドペキやパキトポーク、コリネルスには、作戦開始まで自由になる時間はない。
それでもンドペキは、電波の通じるところまで出てきて、わざわざイコマと同期させたのだった。
理由は、よくわかる。
イコマ自身にも、ユウにも、アヤにも、今後の作戦行動の全体像を知っておいて欲しいと思っているからだ。
そして、居残り部隊となったチョットマを見守るという意味でも、イコマに状況を把握しておいて欲しいと思うからだった。