11 少年に見透かされて
「屋根の上が街だと思ってたんだろ」
「う」
「この街には空がないだろ。だから時々、街の人は屋上に出て太陽の光を浴びたり、夜は星を眺めたりするのさ」
そうか、だからやたらとゆっくり歩きながら上を見ていたのだ。
「マシンが攻撃してこないときだけね」
「そうか……」
「街はこの下にも広がっているよ。ここは最上階」
アビタットが、両手を腰に当てて、自慢のポーズをとってみせた。
「さあてと、どこに案内する? 飛空艇?」
「ん……」
この少年も、飛空艇を探していることを知っていた。
まあ、それは仕方のないことなのだろう。
秘密にしていたわけでもない。
ただ、先回りされるのは癪に障る。
完全におのぼりさんもいいところだ。
スジーウォンは、ラバーモードでスミソに話しかけた。
「こいつに飛空艇屋に案内してもらおうか」
「君に任せるよ」
表情は見えないが、スミソもさぞかし目を丸くしていることだろう。
また少年がニコリと笑った。
「ねえ、ひそひそ話はやめてよ。僕を信用してくれないと」
ラバーモードで話していることさえ、見透かされている。
スジーウォンは心を決めた。
この少年の案内無しでは、結局はこの街のどこかで野宿ということになるだろう。
「それとも、食事? あるいは今晩泊まるところ?」
「全部だ」
少年は、よしっ、というようにまた親指を立てて見せた。
「頼もう」
「了解だ!」
少年はゆっくりとした足取りで歩き始めた。
「案内は無料じゃないよ」
「いくらだ?」
「お金は要らないよ。でも、お願いがある」
「なんだ」
「飛空艇に乗せて欲しい」
「はあ?」
「行き先はロア・サントノーレだろ」
「えっ」
行き先まで知られていたとは。
むう……。
「隠さなくてもいいよ」
「……」
少年が今度は小さく言った。
「どうする? 非公式の飛空艇乗りを知ってるよ」