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105 ドトー! 何をしている!

 そのときだった。

「ドトー! 何をしている!」

 声が響く。


 女の声。

 甲高い声。

 また一人、フードを取った者。


 なっ!

 なななっ!


「私はニューキーツ東部方面攻撃隊、ンドペキの配下!」


 チョットマ!


「ならびに、ニューキーツ長官、レイチェルのクローン、チョットマである!」


 そして、瞬時に巨岩の上、ブロンバーグに並んで立つと、

「レイチェルの命を、騎士団に伝える!」

 と宣言した。

 おもむろにヘッダーを取り、緑色の髪をなびかせた。




 ドトー!

 貴様、ここで何をしている!


 防衛軍が消滅に至った今、街を救うのは、貴様ら、騎士団の務め!


 防衛に多大な貢献のあった、しかも今まだ奮闘を続けるンドペキ率いる東部方面攻撃隊、ならびに同隊に合流したロクモン将軍の隊!

 これらを政府建物に導き、そして援護すること!

 これが貴様らがとるべき行動ではないか!


 今ここに揃っている者達を見よ!

 サントノーレに隠れていた兵が、ないし経験のある者達が銃を手にし、決起しているのだ!


 貴様、これを何と見る!

 のうのうと、このシェルタに篭っていることが、騎士団の任務ではあるまい!


 ドトー!

 見損なったぞ!


 私の姿がないのをいいことに、己が為すべきことに目を瞑り、暗闇でただただパンを食んでいるとは!


 ドトー!


 今すぐ、行動にでよ!

 そして、私やブロンバーグに、そして市民に、ニューキーツを解放せよ!




 チョットマは仁王立ちし、声高らかにドトーに迫った。

 ドトーは既に地面にひれ伏し、顔も上げずにチョットマの口から発せられるレイチェルの命令を聞いていた。


「ドトー! 貴様は、先の団長トレッタから騎士団を引き継いで以来、なにをした!」

 ドトーがますます頭を垂れた。


「やすやすとアンドロに侵攻を許したばかりか、逆襲のチャンスを伺う策を持っているふうでもない!」


 チョットマは間を置き、騎士団を眺め回すと、

「よいか! これが貴様にとって、最後のチャンス! そう心得よ!」

 と、締め括った。




 チョットマは再びフードを頭から被り、巨岩の上から消え、影の軍団に紛れていった。


 チョットマの檄が、シェルタに集う者たちの頭に染みこんでいった。

 長官レイチェルの命令……。




 身動きする者はない。

 やがてひとつふたつと、ンドペキ達に向けられた銃口が下がっていった。

 パキトポークが立ち上がった。

 そして、胸を張り、取り上げられていた自分の武器を身に付けた。


 影の軍団は、包囲の輪を縮めていた。

 宣言の間にも、数は増えていたようで、岩陰という岩陰、あらゆる岩棚の上は人で溢れかえっていた。

 しかし、物音ひとつない。

 事の成り行きを、固唾を呑んで見守っていたのだった。



 ブロンバーグが依然として巨岩の上で待っている。

 ドトーがようやく顔を上げた。

 レイチェルのジャイロセンサーには、緑色のラインが引かれていた。


 ンドペキは、ドトーを促し、巨岩に立つブロンバーグの元へ向かった。



 チョットマめ。

 たいした芝居を打ちやがる。

 歌の稽古じゃなかったのか、と笑みを噛み殺しながら。

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