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103/258

103 さあ、こちらに参れ!

「鎮まれ!」


 影の中に一人、フードをはずしたものがいる。

 はっとした。


 門番!


「我らは皆、ニューキーツの住人。仲間同士で憎みあっているときではない!」


 近づいてくる。


「サントノーレ市長、ブロンバーグである! 鎮まれ!」


 声を張り上げる。


「ロクモンは、おのれの兵達の手によって処罰された!」


 もう一人、フードをはずしたものがいた。

 ロクモン隊の幹部。パッションという男。

 

 その男が何も言わないのを確かめると、ブロンバーグがまた声を張り上げた。


「このシェルタに集う者には、先刻承知のとおり、街をアンドロから取り戻すこと。これは、喫緊の課題である!」


 声が余韻を残しシェルタに吸い込まれていく。



 門番。

 市長だったのか。



 市長の声が続く。


 なぜなら、太陽フレアの状況は予断を許さぬ。

 これが襲ってくる前に、サントノーレ及びニューキーツに平常を取り戻し、秩序を回復しておかねばならぬ。


 人類を滅亡から救うのは、この街の宿命!

 そのためにも、我らが定めのとおり、動かねばならぬ!

 今まさに、ロクモン隊を含めたンドペキ隊に、騎士団が合流するとき!



 市長を名乗るブロンバーグが、巨岩の上に立った。


「さあ、こちらに参れ! ンドペキ! ドトー!」



 よかろう。

 いずれただ者ではないとは思っていた。


 巨岩の上で、三者会談。

 ンドペキは立ち上がったが、ドトーは席を立とうとしない。


「さあ、行こうぜ」

 声を掛けたが、それでも動こうとしない。

 そして、呟いた。

「我々には我々の役目というものがある」

「ん?」



 レイチェル騎士団。

 レイチェルを守り抜くこと。

 それが使命。

 しかし、レイチェルは死んだ。

 自身が作り出したクローンによって。



「レイチェルは……」


 もういないんだよ。死んだんだよ。

 どこからともなく、そんな声がした。


 ドトーは、その声がした方を向くと、

「いいや」と、短く言った。

 そして、

「ブロンバーグ市長。あなたはどうお思いか?」と聞いた。

「わしにはわからぬ」

 ブロンバーグの返事はそれだけだった。

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