103 さあ、こちらに参れ!
「鎮まれ!」
影の中に一人、フードをはずしたものがいる。
はっとした。
門番!
「我らは皆、ニューキーツの住人。仲間同士で憎みあっているときではない!」
近づいてくる。
「サントノーレ市長、ブロンバーグである! 鎮まれ!」
声を張り上げる。
「ロクモンは、おのれの兵達の手によって処罰された!」
もう一人、フードをはずしたものがいた。
ロクモン隊の幹部。パッションという男。
その男が何も言わないのを確かめると、ブロンバーグがまた声を張り上げた。
「このシェルタに集う者には、先刻承知のとおり、街をアンドロから取り戻すこと。これは、喫緊の課題である!」
声が余韻を残しシェルタに吸い込まれていく。
門番。
市長だったのか。
市長の声が続く。
なぜなら、太陽フレアの状況は予断を許さぬ。
これが襲ってくる前に、サントノーレ及びニューキーツに平常を取り戻し、秩序を回復しておかねばならぬ。
人類を滅亡から救うのは、この街の宿命!
そのためにも、我らが定めのとおり、動かねばならぬ!
今まさに、ロクモン隊を含めたンドペキ隊に、騎士団が合流するとき!
市長を名乗るブロンバーグが、巨岩の上に立った。
「さあ、こちらに参れ! ンドペキ! ドトー!」
よかろう。
いずれただ者ではないとは思っていた。
巨岩の上で、三者会談。
ンドペキは立ち上がったが、ドトーは席を立とうとしない。
「さあ、行こうぜ」
声を掛けたが、それでも動こうとしない。
そして、呟いた。
「我々には我々の役目というものがある」
「ん?」
レイチェル騎士団。
レイチェルを守り抜くこと。
それが使命。
しかし、レイチェルは死んだ。
自身が作り出したクローンによって。
「レイチェルは……」
もういないんだよ。死んだんだよ。
どこからともなく、そんな声がした。
ドトーは、その声がした方を向くと、
「いいや」と、短く言った。
そして、
「ブロンバーグ市長。あなたはどうお思いか?」と聞いた。
「わしにはわからぬ」
ブロンバーグの返事はそれだけだった。




