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102 裏切りの罪、詭弁の罪、いたずらに事を混乱させんとする罪!

 この扱いの違いは何だ。

 ロクモンだけは、武装解除されないばかりか、悠然とドトーの脇に立っている。



 コリネルスが抑制のきいた声で、作戦の詳細をドトーに話しかけている。

 もちろん、騎士団の動きもその作戦の中に含まれる。

 押し付けがましくならないよう、うまく話を進めている。

 それでもロクモンは、コリネルスの案に相槌を打つわけでもなく、ましてや口添えすることもない。


 まさか、ロクモン。

 こいつ!

 こいつが仕組んだことなのか!


 あの伝承も、ロクモンから聴いたこと。

 レイチェルのシェルタに、攻撃隊をおびき寄せるために打った芝居だった、とでもいうのか。



 コリネルスの話がタールツーの居住区云々という段階に入った時、ドトーがロクモンに顔を向けた。


 期待は裏切られた。

 ロクモンは、攻撃隊の作戦を推すどころか、首を横に振り、

「騙されてはいけないぞ」と言ったのだった。


「ロクモン! 貴様!」

 パキトポークの怒声が空しくこだました。


 この期に及んで、ロクモン、お前は!

 今、手に武器があれば。

 しかし、銃口に囲まれて座らされている自分にできることはなにもない。


「おのれ! ロクモン!」

 マルコの歯軋りが聞こえてきた。



 ただ、ドトーは頷きもせず、ただロクモンをしばらく見つめただけ。

 すぐに顔を戻し、捕虜となったンドペキ達を眺めている。

 立ち上がろうとするマルコに、ンドペキは「座っておれ!」と怒鳴りつけた。


 振り返った拍子に、スゥと目が合った。


 すまない。

 こんなことに巻き込んでしまって。

 心の中で謝るしかない。


 そして、ロクモンンが発した言葉に、凍りついた。


「こいつらは、レイチェル閣下を殺したのでござる!」



 シェルタは依然、静寂のまま。

 ロクモンの言葉を聞いても、ドトーに動きはない。

 騎士団員も、相変わらず、微動だにせずに銃口を向けたまま。


「サリというンドペキの隊員が」


 許せない。

 そこまで言うのか。


「ロクモン、おまえ……」




 と、乾いた音がした。


 聞き慣れた重レーザー弾の音。

 あっ、と思ったときには、ロクモンが吹き飛んでいた。



「裏切りの罪!」


 大音声がシェルタに響いた。



 ンドペキは身を硬くした。

 今、スゥを守ることはおろか、自分の身さえ守ることができない。

 武器はなく、地面に膝を折って座っている。


 発砲した者は……。

 ドトーはじめ騎士団は、相変わらず動かない。



「詭弁の罪!」


 別の方角からも声が響く。



 続いて二発、三発。

 倒れたロクモンに。

 止めを刺す。



 ロクモンの装甲は割れ、血飛沫が散り、白い煙が立ち昇った。



 ンドペキは、息を呑んだ。

 騎士団ではない者の影が、シェルタのあちらこちらに、見えた気がした。



「将軍ともあろうものが!」


 声のした方を見ると、明らかに人影が。


「本務を忘れたばかりか!」


 声がどの影から発せられたものなのかわからないが、見る間に影は数を増している。



 さすがに、騎士団に動揺が広がった。

 それでもドトーは動かない。



「レイチェルが殺されたなどと!」


 影の声が響く。



 いつの間にか、騎士団もンドペキ達も、影に取り囲まれていた。

 シェルタのいたるところに影が立っていた。

 いずれも武器を構えている。



「いたずらに事を混乱させんとする罪!」


 影、すなわち黒いローブの集団。


 総勢三百はいるだろうか。

 騎士団が狼狽している。

 あちらこちらに向けられた武器の引き金に指がかかり……。

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