19-4 鋼の戦士達
数人の靴音が廊下をやって来る。
いつもなら、食事を持ってくる看守一人の足音のはずである。羽田は、怪訝に思って体を起こした。
足音だけではない。物々しい雰囲気と、歩調に合わせて響く金属音。これは、重装備の兵士が出す音だ。その足音が、羽田の独房の前で止まった。
『……ロックを解除しろ』
低い声が扉の外から響く。どうやら、看守が銃を押しつけられるか何かして、脅されているらしい。
扉に遮られて見えないが、看守がカードキーをかざしたのだろう。小さな電子音の後に軽いモーター音が響き、扉のロックが外れたようであった。
「新堂少佐……何しに来た?」
開け放たれた扉の向こうに、見覚えのある顔を見つけて、羽田は思わず驚きの声を上げていた。アスカがやって来た事自体は、想定内である。
だが、まさか数人の部下を伴い、武器を携えて現れるとは思ってもいなかった。
これはもはや反乱である。おそらく、彼女直属の部隊で拘置所を占拠したのだろう。こんな強引な手を使うとは、いったい何が起こったというのか。
「北米が、暴走したナノマシンによって壊滅したことはご存じですよね? それを救おうと、松尾所長……松尾紀久子さんが、Gドラゴニックで出撃しました。天使たちは、おそらく次の一手で、人類に残された抵抗手段を殲滅しに来る……それを防ぐために、隊長の力が必要なのです」
真っ直ぐに自分を見つめるアスカの目には、一点の曇りもない。羽田は、深いため息をついて言った。
「ふう……これは、完全な反逆行為だ。君はMCMOに……いや、人類に反旗を翻したことになるんだぞ?」
「理解しています。しかし私は、決して人類を裏切っているつもりはありません。羽田隊長……あなたも人類を裏切ったわけではないのでしょう?」
「何故、そう思う? どうして、俺を信じられる?」
「どれだけ……生死を共にしたと思っておられますか?」
アスカは微笑んだ。その視線を受け止めかねたように、一瞬困ったような表情をした羽田は、そのままぎゅっと目を閉じた。
アスカは、そんな羽田を見つめたまま、言葉をつなぐ。
「たぶん天使は、計画に邪魔なイレギュラーの排除を始めるでしょう。Gドラゴニック、松尾さんの娘さんたち、そして……」
「天使の計略に気付いた者……すなわち、俺たちのような人間……か。だが、正直俺はもう――」
目を閉じたまま、自嘲気味に呟こうとする羽田に、アスカは言葉をかぶせた。
「隊長、今、あなたが必要なんです。現状、あらゆる機器が信用出来ない。これは連絡も連携も不可能だということを示しています。つまり、誰かが行動で示すしかないんです」
「……行動? だが今更……いや、そうか。もしかしたら……」
羽田はようやく目を開き、アスカの目を見返した。その瞳には、もはや迷いと呼べるものは浮かんでいない。
「了解した。では、行こうか」
すっと立ち上がって扉を出て行こうとする羽田の背中に、アスカは慌てて声を掛けた。
「ま……待ってください。行こうか、とはどこへ?」
「決まってるだろう? 決して俺たちを裏切らない、共に戦った仲間のところ……バリオニクスのもとへ、だ」
その言葉に、アスカは眼を白黒させた。
たしかに、二十年以上前の機体であるバリオニクスには、ナノマシンシステムどころか、ネット通信システムすらついていない。天使からの外部干渉を受ける可能性は、低いだろう。しかし、バリオニクスが一線を退いてから、すでに十年以上が経過している。
退役後は機動兵器用の火器・兵装試験機として、木更津の武器格納施設に置かれていることは知っているが、たしかGPS照準や内燃機関、外部装甲も取り外され、動ける状態ではなかったはずだ。
「で……でも、バリオニクスはもう……」
「心配するな。俺に考えがある」
不安げな表情のアスカに、羽田は不敵な笑みで答えた。
*** *** *** *** ***
『広藤二等陸佐!! 命令違反の上に、帰ってくるなり出撃とは、一体どういうことだね!?』
通信機から流れてくる東部方面総監・村松陸将の声に、珠夢はわざとのんびりした口調で答えた。
「ああ、申し訳ありません村松総監殿。通信機器を持たない友軍からの緊急支援要請を、偶然キャッチしてしまったもので……広藤大隊長以下、東部方面第二大隊は、これより彼らの支援に向かいます」
『ふざけるな!! 天使を刺激するなと、首相から命令が出ているんだぞ!! すぐに出撃を中止せよ!! それに、貴様たちの乗るその三機の機動兵器は、我が国唯一の――』
わめき続ける村松陸将の通信をあっさりオフにすると、珠夢はおおげさにため息をついた。
「あーもうしつっこい。救援だっつってんだから、素直に出撃させてくれりゃいいのに」
いきなりくだけた口調でぼやく珠夢に、サブモニターの通信画面に映る男が苦笑した。
『そういうわけにもいかないだろうな。そもそもこの機体は、第二大隊所属じゃない』
二十年分、歳をとってはいるが、その精悍な顔は紛れもなく元・チームドラゴンの干田茂朗である。
『まだ干田さんはいいですよ。俺は自衛隊員ですらないんですから。これ、後で処罰されないでしょうね?』
もう一つのサブモニターでは、石瀬北斗が少々ふて腐れた様子でコクピットに座っていた。
「お二人とも、無理にお願いしてすみません。でも、偶然基地内でお会いできて良かった。この機体、部下の中にはまともに動かせそうな人間がいなくて」
謝罪の言葉を述べてはいるが、珠夢は妙に嬉しそうで、罪悪感を抱いているようには見えない。
それは、干田も北斗も同様であった。第二次巨獣大戦以来、二十年ぶりに乗る機動兵器を操りながら、どこか懐かしそうにしている。
『気にするな、広藤二等陸佐。君に誘われなくても、どのみち俺達は、兵器を奪って恐竜どもに特攻をかけるつもりだったんだ』
『ま、そうですね。兵器を奪取しに忍び込んだ先が、珠夢ちゃんのとこで良かった』
それを聞いた珠夢は、ホッとしたように微笑んだ。
「で……本当に、私が新生チーム・ドラゴンのリーダーでいいんですか? カインさんはいないし、干田海佐の方が、階級も上なんですけど……」
現在の干田茂朗は、防衛庁の特務機関に所属していたが、階級は一佐である。
『これは陸自第二大隊の作戦って建前だからな。部下だと思って指示してくれてかまわん』
「……分かりました……陸上自衛隊、東部方面第二大隊。機動兵器『日輪』。広藤珠夢、出撃します!!」
叫ぶと同時に、珠夢は手元のレバーを一気に押し上げた。
プラズマエネルギーを利用したリアクターが静かに回転数を上げ、低い振動音がコクピットを揺らす。特殊鋼板製の床が二つに割れ、モスグリーンの機体がゆっくりと地上へ姿を現した。
全長四十メートル。一見して大型の装甲車のように見えたが、車輪も履帯も見当たらない。折りたたまれていた脚が展開し、機体が二本足で立ち上がった。その背部に翼のような突起が開くと、それは西洋の竜に似た、二足歩行の機動兵器へと姿を変えていた。
背部スラスターから噴き出す炎が蒼く変わると、踏ん張っていた脚から留め具が外れ、機動兵器『日輪』は、大空へと舞い上がっていった。
「同じく、機動兵器『烈火』。干田茂朗、出撃!!」
干田の声で姿を見せたのは、『日輪』とほぼ同じ型式と見える機動兵器であった。
珠夢の乗る日輪と違うのは、赤系の迷彩カラーであることと、前脚にあたるアームに、左右で違う砲門らしきものが付属している点であった。
烈火もまた、日輪の後を追って飛び立っていく。
「機動兵器『迅雷』、石瀬北斗、出ます」
石瀬の機体は、ブルー系の迷彩であった。やはり同型のバリエーションである本体に、特徴的なのは両脚である。他の二機より太く長い脚部には、背部のそれと同様のスラスターが取り付けられていた。
三体の機械竜は、陸上自衛隊横浜基地の上空を、編隊を組んで旋回すると、速度を増して、西南の空へと飛び去って行った。
*** *** *** *** ***
「いったい……どういうことだ? 何故、通信がつながる?」
樋潟総司令は、呆然とメインスクリーンを見つめて呟いた。
画面には、きょとんとした顔のMCMOニューヨーク総本部の代理責任者、権藤参謀の姿が映し出されている。
『総司令こそ、何を仰っているのですか。ニューヨーク総本部は対巨獣地球防衛の要。通信がつながらなくなることなど、考えられません』
権藤参謀の背後には、大きなガラス張りの窓があり、その向こうには平穏な青空が輝いている。ゆっくりと流れる白い雲。あの空の下には、いつもと変わらぬ日常が流れているに違いない、画面を見つめる誰もがそう思うような青空であった。
だが、樋潟は心の中で強く否定した。
(そんなはずは、ない。タロット大統領が灰となって崩れ去り、周囲の人間達もまた灰と化していくところを、俺は見ているのだ)
人間だけではない。有機ナノマシンの異常増殖体であるグレイ・グーによって、北米大陸からは、あらゆる生命体が消滅したはずだ。
だが、そのことを伝え続けていたはずのTV画面にも、いつもとまったく変わらぬアメリカの様子が映し出されていた。不通となっていた通信機器は、いつの間にかすべて回復し、正常に機能しているようだ。本当に北米が蘇ったのか? それとも、そもそもあのような事件は、何かのでっち上げだったのであろうか? リアルタイムで事件を見ていた樋潟ですら、そう思ってしまうほどの現実感が、そこにあった。
司令室にいる樋潟以外のメンバーがざわつき始めた。周囲のオペレータや士官達からも、恐怖とも安堵ともつかない、複雑なため息が漏れている。
『まあ、そんなことは結構です。それよりも総司令。いつ、ニューヨークに帰還されるのですか? 天使に消滅させられたとはいえ、忽然と現れた巨獣群の謎は、いまだ解決しておらんのですよ?』
権藤参謀の声には、一切の陰がない。
MCMOが独自で派遣した、遠距離型無人機からの通信情報を伝えるサブモニターに、灰色の細かな塵に覆われた暗い空が映し出されていなければ、樋潟自身ですらアメリカの健在を信じたくなる。
それは、様々な既存情報源とは別に、樋潟が直に命令して出動させたドローンであった。
MCMOの専用衛星を経由したその画像が、リアルタイムのニューヨーク近郊であることは、疑いようがなかった。
だが、同じ回線を使っている権藤参謀からの通信もまた、リアルタイムのニューヨーク本部からであるはずだ。
一種異様な感覚にとらわれ、思わず吐き気をもよおしそうになったその時、樋潟はふと別のモニターに映し出された光景に気づいて、思わず声を上げた。
「おい第三ドック!! 何をやっている!? 誰が機動兵器の出撃を許可した!?」
しかし、第三ドックからの返答はない。代わりに答えたのは、オペレータシートに座っている女性の一人だった。
「え!? いえ、先ほど樋潟総司令ご自身が、バサラ隊に出撃を命じられましたが……」
「バカな!? 私がずっとここにいたのを、君も知っているだろう!? いつ、そんな命令を出す時間があった!?」
「あれ? そ……そういえば……でも、たしかに正式コードで入力がありましたが。記録にも残っているはずですけど……」
女性オペレータは、タッチパネルディスプレイに慌てて指を走らせた。画面上には、間違いなく樋潟本人の指令による出撃命令が表示されている。そのことを確認し、報告しようとしたその時、彼女は異様な光景を目撃して息を呑んだ。
「し……司令!! 第四、第五、第六ドックにも出撃命令が……・」
開かれている画面上に、新たな指令が書き込まれていく。
樋潟はもちろん、彼女自身も端末に触れてすらいない。誰も入力しているはずなどないにも関わらず、である。
目を白黒させている女性オペレータの肩に無言で手を掛け、少々手荒にどかせると、樋潟はその端末を操作しようとした。
「すまない。どいてくれ……くそッ!! なんだこれは!? なんで受け付けない!!」
何度入力しようとしても、すぐにもとの画面に戻ってしまうのだ。勝手に、そして次々に機動兵器部隊への出撃命令を出していく、自分自身のIDを見つめつつ、樋潟は愕然と立ち尽くすしかなかった。
その時、樋潟の背後でメインエントランスのドアが開いた。緊急事態の司令室に入室できる人間は限られている。樋潟は驚いて振り向いた。
「どうして全機動部隊に出撃命令なんか出したんです!? いったい何が起こっているんですか!? 樋潟総司令!?」
騒がしく司令室に入ってきたのは、科学顧問の加賀谷であった。その後ろには、ここしばらく特別顧問として復帰している鍵倉博士も続いている。
「関係各方面から、問い合わせの嵐ですよ!! 第一、インダラ隊なんかパイロットがまだ復帰していないのに、自動操縦の機体だけで出撃している!! 何のつもりなんです!?」
極東本部所属のインダラは、先日のGとの交戦で大破した。
パイロットは、フィードバック回路の逆流をもろに受け、負傷しているのだ。出撃したのは、あの夜の機体とは別の予備機だ。
うろたえた様子の加賀谷の手には、基地内専用の通信端末が握られ、うるさくバイブ音を響かせている。
樋潟は、思わず彼の手から端末を叩き落としていた。
「な……何をするんです!?」
「通信機器から離れるんだ。私は……機動兵器の出撃命令など出していない。これはおそらく、天使の仕業だ……」
「な……バカな。どういうことです!? せっかく北米が無事だと分かったこの矢先に……っ!?」
加賀谷がそう言うところを見ると、北米からの通信が回復しているのは、この司令本部だけではないのだろう。サブモニターを地上波のTV放送に切り替えると、歓喜と安堵の声を上げる人々と、ホッとした様子で首をかしげる男性キャスターの顔が映った。
北米の無事を信じ切っている様子の加賀谷に、樋潟が苦い表情を向ける。
「違います加賀谷顧問。北米は無事なんかじゃない……お二人とも、これを見てください」
樋潟は、ドローンからの通信画像を指し示した。灰色の嵐が吹き荒れる画面に、時たま見え隠れする建造物は、たしかにニューヨーク、マンハッタンの見慣れた町並みに違いなかった。
息を呑む加賀谷の隣で、鍵倉博士だけが何度も頷いている。
「なるほど……奇妙だとは思ったが……やはりな」
何かが腑に落ちたような様子の鍵倉に、加賀谷は驚いて言った。
「鍵倉先生……これはいったい……どういうことなんです? ニューヨークと連絡が付いたのではなかったんですか!?」
「君は鈍いな。少し考えれば分かるだろう? つまり、連絡が付いたニューヨークというのは、仮想世界に創り出されたニューヨークに過ぎんということだ」
「バーチャル?……まさか……」
「信じられないか? まあ、そうだろうな。こちらから見ていても、そう思うくらいよく出来ている。おそらく当の住人たちは、自分が仮想世界にいるなどとは認識していないだろう。そして……こういうことができる、ということは、やはり先日の羽田司令による造反事件も……ヤツらのでっち上げ、といったところか……」
灰色の嵐と美しい青空、二つの対照的なニューヨークのライブ映像を見比べながら、鍵倉は大きなため息をついた。
「でっち上げ……しかし、人間は信じたいものを信じ、見たいものを見ます……このまま平穏なアメリカの状態が確認され続ければ、市民はもちろん、各国政府も危機を危機として捉えなくなる可能性がある。だが、そのことが分かっていても、もう……我々に打てる手は……」
呟く樋潟の顔は、強ばっている。
それ以上、誰一人口を開けずに黙り込む。MCMO極東本部の司令室には、エマージェンシーコールが鳴り響き続けていた。
もはや一切の通信機器も、目の前の機器も、信用出来ない状況であった。機動兵器群が次々と出撃していくのを、手をこまねいて見ているしかないのだ。樋潟は激しい無力感に襲われていた。
機動兵器群は、樋潟達のいる極東本部を取り囲むように整列し、周囲を埋め尽くしつつある。完全に制御を離れた機動兵器は、人類にとって巨獣と何ら変わりない……いや、それ以上の脅威でしかなかった。
「…………ここを……攻撃するつもりでしょうか?」
呟くように発した加賀谷の声は、震えている。
それに樋潟は答えなかったが、現時点で司令本部への攻撃はない、と確信していた。
今、出撃したということは、機動兵器の作戦目的は、天使を裏切ったあの六人……いや、八人の少女天使達の粛正であろう。Gドラゴニックを追い詰めていた天使たちが、何故、突然仲間割れを始め、さらに恐竜群とまで戦い始めたのかは分からなかったが、人類の希望、と呼ぶべきものがあるなら、彼女たちとGドラゴニック以外にはないからだ。
つまり、機動兵器と電子情報に頼り切ったMCMOなど、潰す価値もない、ということになる。
だが、人類に敵するような兵器を多数作り出し、保持してきた責任をとらずして、その兵器が希望の芽を摘みに行こうとするのを、ただ見ていることなど、樋潟には出来なかった。
何より、これまで共に戦ってきて、最後まで信じるべきだった羽田と紀久子を、信じ続けられなかった自分に、無性に腹が立っていたのだ。
「……第一、第二ドック、聞こえるか? 出撃態勢に入れ、攻撃目標は……この基地を取り囲む機動兵器群」
『え!? 樋潟司令!? 何を仰っているんです!? たった今出撃させた友軍を、破壊しろと!?』
素っ頓狂な声を送ってきたのは、格納庫全体の管理責任者である。
「そうだ。破壊しろ。いいか、無人だからと油断するなよ? ヤツら必ず反撃してくる。性能差は腕でカバーしろ」
それが無茶な注文であることは、樋潟にも分かっていた。
残っているのは、どれもナノマシンシステムを搭載していない旧世代機ばかりなのだ。
出撃態勢に入った第一ドックの画像を、固唾を飲んで見守っていた樋潟達の耳に、悲鳴が飛び込んできた。
『だ……ダメですッ!! カトブレパスGX、大破!! やつら、出撃口で待ち伏せしてやがる!!』
画面を黒煙と火花が覆い尽くす。
加賀谷が大きなため息をついて、膝を落とした。
「そうか……今まで回りくどい手を使ってきたのは……こっちの状況をすべて把握するためか……」
周囲で機動兵器群が待機していたのは、こちらの出方を見るためだったに違いない。
こちらが黙っていれば、放っておいてくれたのだろう。だが、こうなった以上は、この本部は殲滅されるに違いなかった。
あらゆる通信機器が信用出来ない今、助けを呼ぶことも、この状況をどこかに伝えることも出来はしない。唇を噛んで立ち尽くす樋潟の足元を、大きな振動が揺らした。
どこかで何かが派手に壊れる音が響き、誰かの甲高い悲鳴が重なる。天井の照明が数度明滅してから消えた。あたり一面に、樹脂の焦げたような臭いが漂いはじめた。