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マリー編


地面が冷たくなって夜も更けた頃、母親はベッドの中の子供に聞きました。


「なんで朝になったら地面があったかくなるか知ってる?」


子供は布団の中で言いました。


「しらないよー」


母親は優しくもう一つ聞きました。


「じゃあなんで風がずっと吹いてるか知ってる?」


子供は布団の端をパタパタさせながら言いました。


「しらなーい」


「じゃあ、今日はそのお話ね」


母親は本を開いて話し始めました。


「“遠い遠い昔のこと、二匹の龍がいました。”」


「わぁ」


優しい声に子供が小さな声をあげる。


「“一匹は火の神様で一匹は風の神様でした。二匹の龍はいつもみんなの生活を豊かにしてくれました。”」


「ゆたか?」


子供は不思議そうに言いました。


「お手伝いしてくれたってこと」


「おてつだい」


子供は今度は確かめるように言いました。


「“火の神様はいつも大地の下でみんなをポカポカ温めてくれました。


風の神様はいつも道に迷ったときにこっちだよと風を吹かせてくれました。”」


「かみさまが?」


「そうだよ」


「めがみさまは?」


「どうかなあ?


“みんなはそれに感謝していました。”」


「かんしゃってなに?」


「ありがとうってお礼のことだよ


“でもみんなはいつのまにか神様に感謝することを忘れてしまいました。”」


「なんで?」


「なんでだろうね?書いてあるかな?


“朝が来るのも当たり前、風があるのも当たり前、

みんなみんな忘れてしまいました。”」


「わあ、おこらない?」


「どうかなあ、続きを読むね」


母親はページをめくって、続けました。


「“あるところにマリーという女の子がいました。”」


「まりーだ!」


子供が嬉しそうに言いました。


「マリーだね」


母親は子供の頬を小さくつついた後に続けました。


「“ある日突然、地面が冷たくなったまま、風が止まったままになりました。”」


「よるじゃない?」


「ずーっと、何日も冷たいままだったんだって」


母親は子供の素直さに笑みが溢れました。


「かぜもふかないの?」


「風も吹かないの」


親子でこわいね、そうだねと言って続けて読みました。


「“マリーは地面に向かって言いました。


『どうして地面は冷たいままなの?』


地面が答えてくれました。


『みんなが僕を忘れてさみしいんだ。』”」


「かみさま?」


「火の神様だよ


“マリーは驚いて言いました。


『どうして忘れちゃったの?』


地面は言いました。


『しらない。いつも地面を温めてたけど、みんなはおはようって言ってくれなくなっちゃった。

もうみんな忘れちゃったみたい。』


マリーは誰かが地面にいるなんて初めて知りました。


『じゃあ、どうして風は止まったの?』”」


子供が布団を揺すって声をかけました。


「ねえねえ、まりーといっしょだ」


母親は嬉しそうにそうだねと続けました。


「“風が答えてくれました。


『みんなが僕を忘れてかなしいんだ


マリーはまた驚いて聞きました。


『みんな知らないだけじゃないの?』


風は言いました。


『わからない。いつも風を吹かせていたけど、みんながありがとうって言ってくれなくなっちゃった。

もうみんな忘れちゃったみたい。』


マリーは誰かが風を吹かせているなんて初めて知りました。”」


「かぜのかみさま?」


「せいかい」


母親はまた一つページをめくって続けました。


「“『僕らの声が聞こえたならみんなに伝えてきておくれ』


風と地面からそう言われたマリーはみんなにその日のことを話しました。


でもみんなはマリーを疑いました。”」


「うたがいました」


「ほんとうに?ってことだよ


“そうすると、風と地面から二匹の龍が顔を出して言いました。


『伝えてくれてありがとう』


みんなは驚きました。”」


子供は閉じかけていた目を開いて聞きました。


「かみさまでてきたの?」


「すごいね」


「すごいねぇ」


「“それから龍に謝りました。


みんなが話しかけてくれて嬉しくなった火の神様は地面はあたたかくして、風の神様も風が吹かせました。”」


「わぁ」


「“それからみんなはあたたかくなった地面に『おはよう』と言い、吹き始めた風に『ありがとう』と言いました。


それからというもの


今も風は吹き続け、朝も毎日来るようになりました。”


おしまい」


子供は小さくペチペチと拍手をした。


「眠くなっちゃった?」


母親は静かにたずねました。


「ううん、まだおきてるよ」


母親は少し笑って布団を整えました。


「めがみさまでてこなかったね」


「大地の女神様は別のお話で出てくるよ」


母親は少し驚きながら言いました。


「まりーはね、しってるよ」


母親は耳を傾けます。


「まりーはね、おっきいおさかなにいるんだよ」


子供は小さい腕を大きく広げて言いました。


「そうなの?」


「そうだよ、ゆめでね、みたんだよ


ゆめでね、おっきいおさかなみてね、まりーのおうちだねって」


「その上に女神様の大地があるの?」


「んーん、しらない」


子供はまた少し目を開けて母親に聞きました。


「よるはひのかみさまさみしいの?」


「それはね、明日話してあげるね、

火の神様も寝ちゃってるから、

マリーも今日はもうおやすみ」


母親は寝息を立て始めた子供の腕と布団を少し整えて


静かに本を閉じました。

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