第五話
「ルカ君、エナ。あなたたちは……。ってそのメモ帳は??」傘を持って玄関から出てきたエナの母親はルカが持っているメモ帳に目を付けて訊ねる。
「これはお母さんからもらって、それで、えっと、ここに書かれた場所に行きなさいって」ルカは出来るだけ具体的にしゃべろうとしたが頭が真っ白になって難しかった。
だがそんなルカの言ったことをエナの母親は理解してくれた。
「ルカ君。それは絶対絶対に地図に書かれたところの人以外誰にも見せたら駄目よ??分かった??絶対によ。あと全身黒いマントを被ったものには絶対会わないこと。会っても逃げるのよ。そいつらは悪者だから。それとルカ君とエナ。貴方達はそこへ行きなさい。お母さん達が必ずお迎えに行くわ。二人とも愛しているわ」エナの母親はエナの頭にそっとキスを落とした。そして「お守り」と言いながら母親がずっと大切にしているペンダントをエナの首にかけた。
だがそのペンダントはエナが生まれる前からもずっとつけていて大事にしているものだとエナは知っていた。何故そこまで大切にしているのかは分からなかったがエナの母親はいつもペンダントに向かって話しかけていた。だからどうして自分にそんな大切なものをくれるのかエナはよく分からなかった。
少しして遅れて出てきたエナの父親も傘を持っていて
「ルカ君、エナ。お父さんも必ず迎えに行くから、だから書かれたところへ行きなさい。ルカ君、エナを少しの間頼んだぞ。二人とも愛している」とだけ言う。そして母親と同じようにエナの頭にキスを落とした。
「え、お母さん、お父さん?」エナは意味がちっとも理解出来なくて首を傾げた。
「じゃあ行きましょう」
「ああ」
「じゃあまたね。いい子にするのよ」
「そうだぞ」
そうして母親と父親は走って去っていく。そして段々と二人の姿は見えなくなっていく。相変わらずルカとエナはただじっと立ち止まって母親たちが向かった方向を眺めているだけだった。だがしかし少しして「……ルカ私はお母さんたちにこっそりついていくわ」とだけエナは呟いてエナの母親と父親が消えていった方向に向かって走った。
ルカは嫌な予感を感じながら不安な顔をして「僕も」とだけ言って後をついていった。
二人が無言で電線柱に隠れて様子を見ていた中とうとうエナは口を開いた。
「ルカ、何でお母さんとお父さんはルカの家に入ったの??何も悪いこと起こらないよね」
母親と父親の後を追えばルカの家の玄関から家の中に入っていってその後、姿は見えなくなった。何とか見ようとエナが家の中に近づいて試そうとしたがルカがそれを頑なに止めた。エナはそんなルカに疑問を抱いたかルカが泣きそうだったから言うことを聞くことにした。
「分からない……」
ルカがエナの問いに答えた次の瞬間だった。
——ドッカンッッ
その大きな爆発音と共に大きな黒い煙がルカの家から立ち上がった。辺りは騒然といていてルカとエナはあまりよく状況が呑み込めない。
そして家全体に燃え広がる炎。二人の頭の中は真っ白で耳の中に何も音が入ってこない。
少しして「ルカ嘘だよね。ねえ。嘘だよね」
「……い、や、わか、らない」
ルカは後退る。
さっき確かにエナの母親と父親は今はもう家とは言えないあのところへ入った。そしてルカの母親も居た。だが今は燃えている。
「あぁ、うぅ」泣き崩れるエナ。
その瞬間ルカの視界には確かに入った。母親と戦っていた全身黒いマントを被ったものがいるのだ。そしてその者は今確かに燃える家から出てきた。
ルカは震える手を抑えながらエナの手を取り全速力で走った。
「ルカ!」そうエナが言ってくるけどルカは気にしない。




