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紅蓮の嚮後 〜桜の鎮魂歌〜  作者: 佐倉井 鱓
彷徨う紅

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第97話 裁きの灼炎

夜の帳が降りた街──古びた家屋の中。


若者達が酒を飲み交わしながら

たむろしていた。


粗野な笑い声が飛び交い

使い古されたテーブルには

空の酒瓶がいくつも転がっている。


油の染み付いた布で雑に吊るされたランプが

煙草の煙で淀んだ室内を

薄暗い光で揺らめかせていた。


「なぁ、誰だよ?

あの桜の根元に、お宝があるなんて言った奴」


一人の青年が、酒を煽りながら悪態をついた。


「マジだって聞いたんだよ。

先祖代々伝わってるってさ」


「デマじゃねぇか!

わざわざ穴掘ったってのによぉ!」


「くそ!くたびれ損だぜ⋯⋯」


苛立った声が響き

誰かが手元の瓶を投げつけた。


ガンと音を立てて床を転がり

ガラスが割れる音が室内に響いた。


その時──


【⋯⋯みつけた⋯⋯】


不意に耳の奥で低く響くような──

微かな声が聞こえた。


「⋯⋯?

おい、今なんか言ったか?」


青年の一人が首を傾げて周囲を見渡すが

誰も気にした様子は無い。


「はぁ?なんも言ってねぇよ」


「いや、今──なんか変な声が⋯⋯」


青年達がざわつき始めた、その瞬間。


「⋯⋯なんか、暑くねぇか?」


次第に室内の温度が異常なほど上がり

息苦しささえ感じ始める。


額に浮かんだ汗を拭おうとするが

異様な熱気に指先が湿っていく。


「なんだこれ⋯⋯?

誰か、暖炉にでも火を入れたか?」


「いや、火なんて誰も⋯⋯」


誰かが不審そうに呟くと──


【みつけた⋯⋯っ】


──パリンッ!


吊り下げられたランプの硝子が

熱に耐えきれずに砕け散った。


飛び散った破片が床に散らばり

中の灯火が、赤黒い炎となって床に落ちた。


その炎が、まるで生き物のように蠢き

人の形を作り始める。


やがて黄金の髪が靡き

燃え立つ炎の翼を拡げた──アリアが現れた。


その深紅の瞳は怒りに燃え

冷徹な表情が青年達を射抜く。


「貴様らだな⋯⋯我が夫を⋯⋯

冒涜したのは──!」


低く震える声が、怨嗟を帯びて響き渡る。


「な、なんだ!?あの女⋯⋯!」


「人間じゃねぇ⋯⋯っ!?」


青年達は恐怖に凍りつき

目前に立つ、異形の存在に身体を強ばらせた。


アリアの瞳が──ひとりの青年を捉えた瞬間


「あ⋯⋯っ?」


男は突如

頭部に異様な熱を感じ、額を押さえた。


「う゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁっ⋯⋯!!」


頭の中で、何かが煮え滾るような感覚。


まるで脳の中に炎が入り込み

沸騰させられているかのようだ。


額の下、眼球の奥で血液が沸き立ち

視界が赤く染まっていく。


「熱い──っ!

あづ⋯ぅあ、頭が⋯ぁ、割れるぅ⋯⋯!」


男は両手で頭を押さえ、膝から崩れ落ちた。


「助けて⋯⋯っ!誰か⋯ぁがっ!」


叫ぶ度に目から血が溢れ

耳からも鮮血が垂れ流れる。


鼻孔からは赤黒い液体が噴き出し

口からも血泡が滴り、声が次第に掠れていく。


頭蓋骨の内部が脈打つように膨張し

血管がブツッ、ブツッと破裂する音が

耳鳴りのように響く。


「い、痛い⋯⋯!いだいぃあ゛あ゛っ!」


痛みに耐え切れず

男は頭を床に叩きつけ始めた。


ガン、ガン、ガンッ──!


音が響く度に、血の飛沫が周囲に散る。


脳が高温で膨れ上がり

圧力で眼球が前に突き出していく。


瞼が裂け、眼球が膨張し──

とうとう、パンッ!と弾けた。


空洞になった眼窩(がんか)から

血煙のような蒸気が激しく立ち上る。


「ぅがああぁぁぁっ!!」


内圧に耐え切れなくなり

ギシギシと頭骨が軋む音が響き

頭皮が裂けると、青年の頭が一気に破裂する。


脳漿が、血飛沫と共に──飛び散った。


断末魔の叫びが室内に反響し

やがて、その声も小さくなっていく。


男の身体から炎が噴き出し

赤黒いその炎に全身を包まれながら

ドチャリ──と、力無く崩れ落ちた。


焼け爛れた肉が

異様な甘さと苦さを含んだ腐臭を放ち

充満する匂いと恐怖に

他の青年達は

その光景を呆然と見つめたまま、動けずにいた。


──が。


「う、うわあああぁぁぁ!!」


「見ないで──見ないでぇえええ!!」


アリアの視線が動く気配を感じるや否や

パニックに陥った青年達は

一斉に背後の出口に向かって

這いつくばるように逃げ始めた。


恐怖で足が竦み、動きが鈍くなる中

無様に逃げ惑う。


アリアはそんな者達に一瞥する事もなく

炎の翼を上へと大きく広げた。


「時也を穢した罪⋯⋯

地獄で──永遠に悔いるが良い」


鋭く冷徹で、怨嗟を孕んだ声が響き渡る。


青年達が狂ったように叫びながら

背後のドアに触れようとした。


次の瞬間──


空気が歪む程の熱量が迸る。


「死して、償え──⋯」


炎の翼が叩きつけられ、爆発音が轟いた。


家屋の壁が青年達ごと吹き飛び

炎の柱が迸り──

地面には、巨大なクレーターが刻まれた。


空気が震える程の熱波が、街の一部にまで広がり

建物が崩れ落ち、火の手があがる。


遠くからは驚愕と悲鳴の声が重なり合い

混乱の渦が広がっていく。


アリアは背後の光景を気にする様子も無く

ただ冷たく燃え続ける瞳で──

目前で震える唯一の生き残りを見下ろしていた。

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