第10話
これは久しぶりのガチ戦闘
アリス、ツッコみ増えて来たけどお前がナンバーワンだ
522〜529日
「昨日、蓮也さんたちと話したのですが、彼らは、湖の奥にある荒廃した都市の近くに、カグラの中継拠点を建てる予定のようです。」
「そうか。俺たちは火山地帯を突っ切る。」
「わかりました。」「了解。」「・・・。」「やってあげる。」「わかったわぁ。」
6人が、火山地帯に入ると、周りはマグマが流れ、黒い岩がゴロゴロとある。
時折、マグマの気泡が弾けたり、マグマが噴き出るところも見られる。
魔物・マグマゴーレムLv10〜13
コアを中心に流動的なマグマの身体を持つゴーレム。物理、炎魔法に対してほぼ完璧な耐性を持つ。高レベル帯は、土魔法も使う。
魔物・レッドワイバーンLv11〜13
体長3m程の小柄なワイバーン。6から8体の群れで行動することが多く。傷が多い者程、強く、気高い。
魔物・ゴートフィシュLv9〜11
コアと骨だけになった魚型の魔物。闇属性と炎属性の混合魔物であり、屍系に属する。マグマの中からの奇襲に特化しており、中距離戦闘を仕掛けてくる。
魔物・ティラワイルドLv12〜15
ティラノサウルス型の魔物で、10m程の巨体を持つ。高い物理耐性にタフな体力、そこからの高火力な物理攻撃を主な攻撃手段とする。
魔物・ハイステークLv8〜10
火山灰に擬態する蛇型の魔物。灰の煙幕を戦闘時は放出し、視界を遮ってからの、集団で絡みつく戦法を得意とする。
・・・etc
「魔物の種類も多ければ、そのレベルも軒並み高いな。」
「本当です。良く、詩乃さんたちはここでレベリングしてましたね。」
「私たちはぁ、入り口付近で魔物を釣りながらしてたからぁ。」
「・・・無謀。」
当時の詩乃たちは本当に、安全性が限りなくゼロに近いレベリングをしていたことがわかる。
火山地帯は中央に行くにつれて、レベルが高かったり、戦法が狡猾な魔物が増えていく。また、むせかえるような熱さは、熱変動耐性が有ろうとも、空気で喉が焼けてしまいそうな状態である。
「はぁはぁ、この暑さはキツイな。魔物のレベルなんかは、何とかなるが、この暑さは、集中を奪われる。」
「それだけじゃないですね。奇襲を得意とする魔物が多いので、常に警戒しないといけないのが、追い打ちをかけています。未来さん、舞さん、美穂さんがそろそろ、限界かもしれません。」
「べ、別に私はまだへばってないわよ。」
素直じゃない、美穂もその顔に疲れが見えている。
「湊霞、これは中央部分の探索は今は難しいよ。」
「・・・危険。」
「だが、回り道は無駄な時間を使う。」
「あんたね。全員が全員、あんたと同じ思考と集中力持っているわけじゃ無いんだから。」
(これがあるから、仲間って言うものは無駄なんだ。時間を無駄にすることになる。何とかして、突っ切る方に話を持っていきたい所だな。)
湊霞の気遣いは、湊霞に利益があるからするのであって、仲間だからしているものでは無いのである。
「!なら、ここから先は俺だけで探索をする。俺にも索敵はそこそこ出来る。戦闘を避ければ、突っ切る事が出来るだろう。他のメンバーは、草原の方に抜けてから拠点を目指してくれ。」
「な!」
湊霞は、そう言い残すとスタスタと先を急ぎだす。久しぶりに見た、自分勝手な湊霞に言葉を失いつつも急いで追いかける、アリス。
「そういえば、慣れてきてましたけど、湊霞さんは仲間に対しても有用性を求めてた人でしたね。」
「私たちと行動するのも、メリットがあるからで、メリットが無くなれば、別行動は当たり前にするね、湊霞。」
「冷徹なわけじゃなく、純粋に自分の行動の障害を排除しているのだ。」
「ただ、拠点で落ち合う約束をするあたり、バグ少年が心を開いているのも確かなんだよな。」
未来と凛は、自分たちの容姿をデメリットと言っていた湊霞を思い出し、中々、縮められていない関係値に落胆する。
「・・・。」
「あ!舞、待ちなさい。私も行くわ。」
「ニシシ。舞ちゃんは少年に随分なついている。」
「美穂さんも、なんだかんだで、彼が心配なんです。」
軽く息を整えた舞は、スタスタ歩く湊霞の後ろに追いつくと、まるで飼い主を追いかける小型犬のようである。そんな2人を美穂は、追いかけていく。
「私たちはぁ、どうしましょうぅ。」
「私は、もうギブ。大人しく、回り道する。」
「私も、未来さんと一緒に回り道をします。詩乃さんはどうします?」
「私もぉ、そっちに行くわぁ。」
3人は休憩後、草原方面へと向かう。
湊霞サイド
「あんたね。折角、あんたと一緒に行動してくれる、いい子たちなんだから、折れて上げなさいよ。」
「無駄だ。」
「湊霞、少しずつでも、寄り添う努力をするべきよ。別に、湊霞の事を思って言ってるわけじゃないけど。」
湊霞を何とか、更生しようとアリスも美穂も、努力するが一向に考え直す気の無い湊霞。
「それより、来るぞ。」
「・・・『合成召喚』『契約:開』ガブ。」
「グワァァァ!」
「ッ!」
横のマグマ溜りから、小柄な人形の魚が槍を持って飛び掛かってくる。ガブは、大きな顎でその腕に噛み付くと魔物は驚いて、マグマ溜りに飛び退く。
「『創生回帰』『錬成』『冷華短剣』×2『投擲』。」
「『闘いの舞:静』。」
湊霞は、マグマ溜りから顔を出す魔物に短剣を投げつける。美穂は、緩やかなステップをその場で舞、蒼オーラを纏う。
「グギャャャャャャャ!!」
不快な声を上げる魔物は、吐き出したマグマで短剣を防ぎ、そのまま、湊霞たちに飛びかかる。
「・・・ガブ、ブレス。」
「グワァ!」
「『創生回帰』『錬成』『冷華剣』×2」
「はァ!」
舞は、ブレスで魔物を牽制、体勢の崩れた所を湊霞は剣で斬りつけ、美穂は蹴りを加える。
グキッ
首に入った蹴りで魔物は、そのまま絶命する。
戦闘は短く、いつもほど激しいものでもなかったのに舞、美穂はドッと疲れた表情を見せている。
魔物・レッドサハギンLv7
高い熱耐性でマグマの環境に適応した半魚人型の魔物。縄張り意識が強い。単独行動するものもいれば、上位種に率いられて集団行動することもある。
レッドサハギンの鱗
半透明な柔らかな鱗。高温で溶けて、保温性のある粘性物になる。状態:最低
レッドサハギンの身
焼けるような辛味のある身。食用には適さず、主にトラップに用いられる。状態:最低
火魔石:極小
火の属性を持つ魔石。素材として用いられる。
3人が洞窟を進むと体育館程ありそうな大きな空間が見える。
すると、3人は妙な威圧感を受ける。エリアボス特有の肌を刺すような威圧感とも、人間が向けるねっとりとした不快感を与える威圧感とも違う。まるで、背中を押されながら坂道を下るような、拒みたいが、無理やり歩かされる感覚のある威圧感。
「何かいるな。」
「・・・マグマの人形。」
「気配は人形ね。」
3人が空間の入り口に来ると中にはマグマで象られた人がいる。
(なんだ、コイツの鑑定結果。さっきからコロコロ変わりやがる。)
「おかしい、鑑定結果が変わる。」
「なにそれ。遂にあんたおかしくなっちゃった。」
「・・・多分、違う。」
すると、アリスが湊霞の前に現れた。
「あんたたち、引き返しなさい。あの魔物からは害神関係の力を強く感じる。」
「ニシシ。多分、天使が不正に干渉した個体。」
「ふふふ。元はただのマグマミミックね〜。」
「明らかにシステム外の事象。腹立たしいのは、システムを使ったシステム外の事象だから。全能神様はこの件に干渉できないことね。」
アリスは、よほど害神が嫌いなのか魔物をものすごく睨みつけている。
すると、そんな睨みつけているアリスの視界に湊霞が映る。
「「「「「え!??」」」」」
「『創生回帰』『錬成』『冷華剣』『身体強化』!!」
「『ψ✤□♀♧∆√∑∣∷』『¹Ⅿⅹ↤↜◑✓✜✖◁』『◁▲▶▶▽∷∥∣∏√∨』『√∞⊗∷Ⅺ¹ⅮⅧ♠▶』『♡◁♢◀♡∏∨⊗≯』」
魔物は、マグマで出来た狼を召喚すると、それと合わさり腕に爪を形作る。そのまま、湊霞の剣を受け流す。
「『投擲』『流剣』。」
湊霞は、地面に受け流される片手剣を無理やり振り上げつつ、反対の手に持つ短剣を投げる。
これを魔物は、振り上げる蹴りで打ち飛ばしつつ、その勢いのままバックステップする。
(しっかりとした対応をスキルと高いステータスで行っている。だが、この動き、感覚・・・。)
湊霞は、弾かれた短剣に結んでおいた紐を引き、バックステップした魔物を上から更に強襲する。
「『✖∣↤∏♠』『▽Ⅷⅹ¹∃∣↤∏』。」
これを魔物は、マグマで固めた拳で打ち返す。衝突すると、波紋が起こり湊霞の片手剣は割れる。
そのまま、オーラを纏う魔物は回し蹴りを打ち出す。
(攻勢に移るつもりか。)
湊霞は、再度紐を思いっきり引いて攻撃範囲から退避する。
「『▽◀Ⅾ◀Ⅿ✓◀◑♡』『▶Ⅷ▲=✜〜《』。」
魔物が、詠唱するとマグマで象られた鷹を召喚、そいつは湊霞に向かって攻撃を加えようとする。
「『創生回帰』『錬成』『冷化拘束鎖』。」
素早く片方の手に冷気を発する鎖を出した湊霞は、飛んでくる召喚獣を拘束、鎖を思いっきり地面に突き刺す。そのまま、流れで煙幕を張りつつ、アリスたちのいるところまで下がる。
「あんた!何しているの!?私、戦わないように話してたわよね。」
「聞くのは無駄だと判断した。ところで、あいつの事、分かってきたぞ。」
「ニシシ。何処までも自己中心的思考。」
「ふふふ。話くらい聞いてもいいと思うわ〜。」
「あいつは、どうやらこちらのステータス、スキルをコピーしているようだ。」
「無視なのね。私、そろそろ泣くわよ。」
アリスたちの文句を受け流し、湊霞は戦った上での考察を続けようとする姿に舞と美穂は、やっぱり、この男は終わっていると再認識するのである。
「剣の押し込み、反応速度から俺たち3人の中で基礎ステータスが高い美穂と同じ、使うスキルは舞の物が多い。」
「・・・手伝う。」
「湊霞がどうしてもって言うなら。手伝って上げる。」
魔物の特徴を聞き、舞と美穂は疲れる身体に鞭打ち、臨戦態勢を取ろうとする。
しかし、湊霞はそんな2人を無視して再度走り出す。
「ッ!」「ちょッ!?」
「身体が、万全の状態じゃない舞たちじゃ邪魔。『創生回帰』・・・。」
更に、魔物に急接近、片手に冷気を纏う片手剣を出すと思いっきり切り下ろす。これに、魔物は、跳躍で回避、その手にマグマを集約する。
「⊗∣✓♢¹*♡Ⅷ✖▲∣¹Ⅿ」
両腕を巨大な爪に変化させると回転しながら落下する。湊霞は、振り下ろしの体勢のまま、片手に用意した、鎖付きの短剣を壁に投擲、鎖を引っ張ることで空中で体勢を変える。
「『流剣』!」
魔物からの攻撃を受け流すと、そのまま、鎖を操り、空中で体勢を変える。
「『剛剣』!」
地面に突き刺した爪を抜こうとする魔物に対して、再度剣を振り下ろす。魔物を両断、上半身と下半身のみにする。
「・・・!」「やったわね!」
舞たちが喜びを見せると、それを嘲笑うかのように、両断された足は、落下中の湊霞を回し蹴りにしようとする。
「やっぱり、コア以外はノーダメージか!」
「流石、害神が関わっているだけに。」
「ニシシ、悪質。」
湊霞が、回し蹴りを剣で受け止めると、勢いで壁へと飛ばされる。
飛ばした本人は、肉体を再生させるが、元々が人でないため、関節がおかしな方向に再生されながら、不気味に元に戻る。
湊霞は、壁に着地後、そのまま、壁を走り出す。
「まずは、コアの発見からだ。『創生回帰』『錬成』『ペイントダガー』。」
「♠(∨>〔=ⅧⅮⅮ∨)∃」
湊霞は、蛍光色のインクを出すダガーを手に持つと勢いのまま、魔物へと走り出す。魔物は複数の鳥型の召喚獣を出すと矢でも放つように、次々と打ち出す。
「気持ち悪い!一発一発が生き物みたいに湊霞に向かって行っている。舞、貴方はあれ出来るの?」
「・・・無理。」
「でも、貴方のコピーされたスキルよ。」
「知覚能力が足りないのよ。ステータスは美穂ちゃんのものなの、舞ちゃんが使うものとはスキルは同じでも、全くの別物と思って良いわね。」
湊霞は、全てをギリギリの見切りで躱すと、今度はジグザグに突っ込む。剣を使わず、身体の動きだけで躱す。
(慣れたな、後は・・・。)
「≯《〜≯↜√∞⊗▶↜▽《∞」
魔物の腕が大きく肥大化する。何処か亀の甲羅のような腕を大きく地面に振り下ろされると、地面が割れ、湊霞と魔物とが一直線になる。
「!あれじゃ、躱せない。」
「∥∣∣◁□ψ∇>Ⅷ♠〔∣▲◑ⅪⅯ」
「ッ、『闘気』『身体強化』。」
魔物が召喚獣を打ち出すと、湊霞は反り上がった左右の地面を蹴り、時には、投擲で撃ち落とすなどでて、その場で躱し始める。
「・・・ジリ貧。」
「保たなくなる、あのバカ。」
舞たちが加勢に入ろうとすると、不意に足元に剣が刺さる。
『手出し無用』
湊霞はただその場で躱し続ける。動きは同じだが何処か違う、湊霞の表情に余裕と観察が見られる。
「あいつは、世界のバグ。それはこの世界に来てからずっと、近くで見てた私がわかる。」
湊霞は魔物との距離を一歩、また一歩と詰める。
「あいつの異常性はその性格でも、その行動でもない。」
次第に剣を使うこともなくなる。ただ壁を使い躱す。魔物は使う召喚獣を鷹だけでなく小さな通路を縦横無尽に駆け回る狼も加える。
「あいつの本質は、効率厨を体現するために改良を重ね洗練する。」
しかし、湊霞は剣を使わず、難なく躱す。
「小さな欠点を素早く見つけ、一つとして同じ反復はしない。」
距離が縮み、弾幕が濃くなろうとその全てをギリギリで躱す。
「そして、誰よりも早く効率よく正解にたどり着く。あいつをバグたらしめるそれは。」
湊霞は大きく踏み込み、魔物も腕を大きく肥大化して守りに入る。
「一瞬に濃密に凝縮された観察から来る、迷いのない思考。」
湊霞は完璧に読んでたかのように、その腕を駆け上り、魔物の背後から一太刀を加える。
パキン・・・
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この作品の裏話や挿絵、紹介動画なんかもしていくつもりなので、見に来てください。
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