Girls have Next challenge
肩に鈍い衝撃が走った。
私を突き飛ばそうとするじゃじゃ馬を必死に抑える。
まあ、そーゆートコも可愛いんだけど。
目の前の地面から叩きつけるような爆発音が聞こえた。茶色の土煙が上がる。
ダメだったか。
標的は無傷。まー、その前には何発か当たってるし。他の大会参加者に比べれば、着弾地点がバラついているけど。
いやいや、気にしても仕方ない。命中率がもともと悪いスラグ弾を使っているんだ。それに2回目の大会参加で、これなら上出来だって。それに的は50メートルも離れているのだ。当てられるほうが化け物なのである。
と思うことにしよう。そうしよう。スラグで50メートルは別にそこまででもないってことは気にしないでおこう。
大会は午後もある。それに銃砲店の開いたお客さん用の大会なんだ。気楽にいったほうがいい。
午後は混合だから、ライフル部門に参加している五味さんとも戦えるし。
前回は惨敗だったからね。今年は勝つぞー。オー!
一緒に頑張るぞ。「ミヤムラ」。
銃に名前を付けるのは変かもだけど、この子には特別愛着がある。何と言っても、貯金とお年玉と冬と春の長期休みをつぶしてやったアルバイト代を合わせてようやく買えた散弾銃がこの子なのだ。まあ、正式には「ミヤムラ」はこの子じゃなくて、この子を作った会社の名前なんだけど。正式名称は「MSH―12 ダークストック」。なかなかシャープなショットガンで色はクールにブラック。銃身の下についた前後に移動する部分を動かして発射準備をするポンプアクション式。スラグ弾だけでなく、散弾も使えるタイプ。結構、とゆーか、人生で一番レベルに高い買い物だったが、後悔はしていない。私は今、君に出会えたことに心から感謝している。
「やるようになったな。アキ。これでもう、私がお前に教えてやれることは何もない。」
とゆーわけで、射撃エリアから戻ってくると付き添いの空音が現れた。
どーもいいけど、謎の師匠ムーブやめれ。アナタに教えられた覚えはないよ。どっちかというと、師匠ポジションはヒマリの方だよ。
ちなみにそのヒマリはというと、今日は来ていない。ちょっと用事らしい。何でも、知り合いの猟師が引退するから、その送別会に行くらしい。だから、と言っていいかはわからないけど、代わりに暇だという空音がついてきた。いくら、GWでやることがないからってわざわざ来ることないのに。大学も違うのに何やっているんだ。
まあ、そんなことは置いておいて、ヒマリと一緒に観戦席に下がる。観戦席と言っても、ただの屋外射撃場にブルーシートを敷いて、三角コーンとビニールひもでスペースを区切っただけだけども。
そろそろライフルの部が始まる時間かな。そう思って、射撃スペースを後ろから眺めていると、ちょうど五味さんが入ってきた。手の持っているのは第2次世界大戦でドイツが使っていたアサルトライフル「StG44」か?
すごいモノ持ち込むな。五味さん。あれで意外にミリオタなのかもしれない。意外でもないか?
一応、法律上は軍用のアサルトライフルと呼ばれるものも特殊な措置を施せば、使っていいことになっている。自動連射機能を使えないようにして、銃の弾薬を入れておく弾倉に5発しか入らないように改造すればOK。こーすると、自動連機能付きの物騒な軍用ライフルも普通の狩猟用ライフルと変わらない。
とゆーわけで、軍用のライフルを法律の沿って改造したものを持ち込む人も多い。
中には旧日本軍の三十八年式歩兵銃を持ち込んでいる人までいる。
もう趣味だよね。あそこまで行っちゃうと。いくら銃砲店主催の軽い大会とは言え、ヤバいな。猟をする人はみんなオタク気質なんだろか?ヒマリもそうだし。
そう思いながら五味さんを眺めていると、急に空音がこっちを振り向いた。なんだ?どうした?
「あれ、?さっきより的遠くなってね。ハンデ?」
「ェ、ああ、あながち間違ってないかな」
「あ、じゃあ、五味さん?で合ってたったけ?その五味さんより
アキのほうが弱いんだw」
「いや、ちげーよ!違くはないけど。ちげーよ。」
「確かにそれだと、アキと一緒に撃ってた人達までこっちのグループの人たちより弱いってことになっちゃうか。失言、失言」
「私は弱いって言いたいのか?」
ふざけるんじゃないよ。いくら友達だからって言っていいことと言っていいことが…
「じゃあ、強いの?」
「強くはない。けど…」
うぅ、そう言われるとグーの根も出ない。
「ごめん、ごめん。冗談だって。で、なんで的が遠くなってんの?」
空音が謝ってくるが、すぐに話を元に戻した。
コイツ。さては、反省していないな。
まあ、いっか。答えてやるとしよう。
「まあ、単純にさっきの銃と今から撃つライフルだと、
あー、有効射程って言ってわかるかな。撃って確実にダメージ与えられる距離が違うのよ。だから、有効射程が長いライフルの的は遠くすんの。」
「へー。知らんかったわ。いつも高校の教室で銃トーク聞いてたけど、いまだに知らんことがあるとは驚きだったわ。」
わ、悪かったな。でも、いつも聞いてくれてありがとうございました。
「いや、それにしても高2の冬にヒマリンに山連れてって貰ってから、たった一年でこうなるとは。銃買いに行くの付き合ってって言われたときはどうしようかと思ったよ」
あの時は大変お世話に…って、いや、どこ目線だよ。
あ、親友目線か。
そうこうしているうちにライフルの部が始まった。まず、立射。その後、時間をおいて座って銃を撃つ膝撃ちをやる。5人の射手が横一列に並ぶ。ちなみに左から見て2番目が我らが五味さんである。
各選手の右側に置かれたテーブルが置かれ、その上に水筒やらライフル弾やらが置いてある。
全員が発射準備を終えた。いよいよライフルの部が始まる。
「射撃始め!」
合図とともに一斉に弾丸が放たれる。空気を貫き、的が食い破られる。爆発があたりを裂き、衝撃が空間を殴りつける。
各選手はそれでも興奮しない。ただ、機械のように冷静にライフルのボルトを引く。次弾が装填される。もう一度、引き金を絞る。銃口から閃光がともる。火花が散り、周囲の空気を焼き尽くす。的がはじけ、そのどてっぱらに風穴をあける。続いて、3,4発目と打ち込む。その度に的の向こうが見えやすくなった。最後の一発。五味さんは息を吸い込み、ボルトを引いた。息を止め、静寂をまとう。こちらも緊張してくる。静寂。辺りが喧騒の現実から「しずか」な世界に作り替えられていく。
それを食い破る一発の銃声。
夢に現実が追いつき、衝突した際の衝撃は人を昏倒させ得る。しばらくして、選手が射撃スペースから出てきても、まだ、人々は茫然としていた。誰かが拍手をした音が脳に届いて初めて、会場に現実が戻ってきた。拍手に包まれる会場から的に目線を戻す。五味さんのライフルが創り出した弾痕はキレイにまとまっていた。私のとは大違いだ。
うぅ、午後にはこの人と競うのか。ちょっと武者震いがしてきた。
よ、よーし、やるぞー。
私はなんとか自分を奮い立たせた。ちょっと、自信なくしそう。いやいや、相手はライフルなんだぞ。命中率で劣るスラグ弾と比較してもしょうがないじゃないか。ベストを尽くすんだ。私。ガッツポーズをして、覚悟を決めるんだー。オー!
「何やってんの?」
空音の目が冷たかった。そんなに呆れなくたっていいじゃん。
そんなこんなで、次の膝撃ちも順調に終わった。
午後はいよいよ混合の部だ。
おっと、その前に昼食だよ。腹が減っては戦はできぬだ。
さーて、今日の昼食は何かな?楽しみだ。何と言っても今回は五味さんが弁当を持ってきてくれたのだ。あの人のジビエ弁当はマジでうまい。さすが、元バックパーカー。自給自足の天才である。
ゲ、現実逃避なんてしてないよ。食事というのは人間の活動に欠かせない行為なんだから。抜くほうがおかしいんだよ。
さーて、そろそろ行きますか。
ちなみに結果は10人中8位でした。当たり前だけど、五味さんにはフツーに負けた。
つらい。
でも、五味さんの弁当はやっぱし美味しかった。
次は頑張るぞー。オー!




