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Girls have Choice

 ハンティングははじめこそ渋っていたものの、結局、五味さんに連れだされた。

 店長曰く、五味さんの珍しく強引な誘いに負けたから、らしい。

 店長はそこで、銃に触れて、自分が好きだったものを思い出した。撃った時の感触は嫌いだったが、五味さんの友人の女性が銃を撃っている姿はカッコよかった。

 そこで女性でもカッコよく銃を構えていいのだと気づいた。

 半年後、店長だけが先に帰国した。

 親がハローワークに行くように強く進めてきたらしい。まあ、話を聞く限りそうなるだろう。店長も予想していたとのことで、仕方なく毎日ハローワークに通った。だけど、だんだん行かなくなった。

 ある時から、尊敬する(ガン)職人(スミス)のもとに通って教えを請うようになったからだ。

 その人を店長は偶然、ネットサーフィン中に見つけた。彼の経営する店の紹介サイト、そこに乗っていた動画を興味本位で覗いてみた。それは銃の中身の手入れをしているところを撮ったモノだった。そこで見たその人の持つ技術の繊細さと美しさに憧れた。その動画は今も店長のケータイのお気に入りの登録されていた。見せてもらったが、素人の私から見てもすごいものだった。いや、技術はよくわからないけど、ミリ単位で手を動かして何かの部品の汚れを少しづつ取ってるっぽい、この動画がヤバいってことはわかる。

 そのあと、店長は毎朝、ハローワークに出かけるフリをして、ハローワークとは反対の角を曲がり彼のもとに通い詰めた。

 そこには専門学校生のアルバイトや大学の(ガン)職人(スミス)養成コース出身の弟子がすでにいた。だから、未経験の店長は弟子入りをしぶれられた。けども、毎日通い詰めるうちにか遂に店長憧れの銃職人のほうが折れた。彼は店長の師匠となり、厳しくも丁寧に教えてくれた。基礎を知らなかった店長はメモを取り、時には夜中にコッソリ実践したりしながらその技術を少しづつ、でも、着実にものにしていった。

 免許皆伝した日、親が来た。それで師匠を怒鳴った。平謝りする師匠、止めようとした先輩と親が喧嘩してしまって、警察が呼ばれた。警察に注意されても互いに罵り合う先輩と親を置いて、店長は店を去った。戻ってきた親に追い出されるようにして、店長はしばらくビジネスホテルを転々とする生活に入った。

 店には気まずくて顔を出せず、割と仲の良かった別の先輩にメールをして店長に伝えてもらった。

 家にも帰れず、手持ちもなくなってきた。仕方なく、東京に出て仕事を探した。自分の口座はあったが、貯金の大半は母の管理する口座に入っていて引き出せなくなった。

 何とか自分の口座からお金を取り出して、それでアパートを借りた。仕事はなかなか見つからなかった。東京という大都会は銃職人をあまり必要としていないようだった。

 その頃、五味さんも帰ってきた。だが、家にはいられず兄のもとに駆け込んできた。まあ、安定を望み、店長すら追い出してしまった彼女らの親がバックパッカーの五味さんを受け入れるはずはない。

 店長は五味さんを快く受け入れた。

 ただ、金銭面はどうすることもできない。仕方なく、独立した先輩に頼んで、彼の工房で見習い銃職人として働らかせてもらうことにした。。

 2年前、29歳の時、念願の店をこの街に開いた。

 店長はそこまで話し終えると、じっと私を見た。

「勉強も勉強で覚悟を持ってやらないと大変なことになる」

 店長は一字一字を私に確実に撃ち込むように放った。

「私は銃職人になるための勉強をするのが遅くて、修業時代は常に周りに遅れ気味だった。」

 店長の言葉は後悔の念で溢れていた。

「高校時代や大学時代はただ義務感で生きてただけで、特に思い出もない。」

 店長は改めて私の目をじっと見て、言った。

「だから、狩猟じゃないなら大学、みたいな安易な決め方はしないほうが、いや、しないでほしい。」

 それから店長は「大学時代、ホント無駄にしちゃったから。私は、だけどね。」とつぶやいて、笑った。

 その時、店舗のインターホンが鳴った。店長が余所行きの高い声で返事をしながら階段を降りるのを見送った。

 見送りながら、私は悩んでいた。



 狩猟の道でも勉学の道でも覚悟がなければいけない。

 失敗すれば、狩猟だと死ぬし、勉学だと人生を無駄にする。

 まあ、人生に無駄などないらしいから、これは大袈裟かもだけど。

 よーは、楽しいけど死ぬ可能性があるか、死なないけれど楽しくないことをするかの違いなのだ。

 そーすると、迷わず楽しい方を選びたいところだけど、異世界モノの冒険者みたく「今が楽しければイイ」なんて割り切れるものでもないのがツライところだ。

 そんなことを空音に言った。そしたら、ヤツは私の唐揚げを勝手につまみながら「考えすぎ」と笑った。

「確かに死ぬかもだけどさ。あくまで確率論じゃん。そんなの」

 確率論?こいつは何を言っているんだ。

「いや、だから。デスクワークだって死ぬときは死ぬじゃん。パソコン落ちてくるとかさ。交通事故だってあるし。」

 まあ、確かに...?

「そうそう、だから狩猟の方が、自然と正面切って戦っている分、死にやすいってだけで、どこにいても死ぬ可能性はあるわけだよ。」

 まあ、それもそうだ。

「結局、よく装備とかちゃんとしろってのも、その確率を進んで上げに行くな、ばーかってことなんじゃない。準備しっかりしてれば挑戦したってバチは当たんないよ。」

 確かにその通りかもしれない。と思った。

 全力で確認を下げまくって、最後の1%に賭けるってのもカッコイイ気がしてきた。

 それは無謀とは違う気がするし。

 まあ、でも。

 人のから揚げ頬張りながら言われてもね…。


 まあ、そこは置いておいて。

「とりあえずモノは無料お試しセットっていうじゃん」

 空音と話している横から私の唐揚げをかさっらいつつ、さも当然のようにヒマリが言った。

 それを言うなら「物は試し」だろ。

 あと、私の卵焼きをしれっと盗むんじゃない。

 空音の分しか、余計に作ってないんだ。

 今度、三つ入れてくるか。

「いや、そんな軽いことじゃないんだって」

 私が反論した。

「いや、確かに命懸けだけど。一回、チャレンジしなきゃ。何が危険かもわからないっしょ。」

 確かに。一理あるか。

 あ、でも受験勉強…そんなことしている場合じゃ…。

 その時、空音が突然、立ち上がって私の後ろに来た。

 そして

 私の背中を思いっきりはたいた。

 痛ったぁー!なにすんだ、コノヤロー。

 私が抗議しようと振り返ると、空音が満面の笑みでグーサインを出していた。

 人の背中をはたいといて何をしてるんだ?

「受験しないとしたら狩猟行くんでしょ。だったら、オープンキャンパスみたいなもんだって。平気だよ。」

 まあ、確かに。

 何となく納得したから、私は空音をはたき返すのはやめて、ヒマリのほうを見た。

 ヒマリは無言でグーサインを出していた。

 流行ってるのか?無言グーサイン。


 そんなこんなで日曜日。

 私とヒマリは、朝早くから山に来ていた。

 空音はフツーの受験生なので、置いてきた。

 なんか喚いてはいたが、それが彼女のためである。堪忍。

 雪山は危ないため、店長同伴。あ、留守番は五味さんがしてるらしいから店に影響はない…らしい。まあ、接客は心配だし、銃の修理はできないけど、何とかなると店長が言ってたから大丈夫なはずだ。店長を信じよう。ここは。

 とゆーか、寒い。

 ヒマリに言われてこれでもかと厚着してきたけど、それでも寒い。

 マジで寒い。

 ホントに寒い。

 まって、ガチのマジで寒いんだけど。

 そういえば、さっき寒くないのってヒマリに聞いたの。そしたら、けろっとした顔で「ウチも下はタートルネックセーターだよ。」って言ってきやがった。

 私もだよ。

 それにかなり厚手のジャンパーとマフラーと手袋でまだ寒いんだよ。


 なれないかんじき、あ、かんじきっていうのは靴の下に木製の輪ッかみたいなのを取り付けた雪上歩行に使うやつね。忍者の水グモみたいな。でガニ股みたいになりながら何とか狩場まで向っていく。たまにこけそうになりつつ、これでも長靴で進むのの100倍は安全と言い切る店長を信じて進んでいく。

 今回の獲物はロック鳥の若鳥だ。

 ロック鳥は額に一本角を持つ巨大な鷲型のモンスター。昔話の「千夜一夜物語(あ、シンドバッドのやつね。アラジンとか。)」にも出てくる。まあ、流石にあれは大げさだけど、物語だから。まあ、中には翼長22mとかいうのもいるらしい。それはつまり、まあ、「翼長 鳥」で検索してもらったほうが、ここで説明するよりもヤバさがわかると思う。

 実際、私もヒマリに言われて調べてみた。

 バ、化け物…。

 いくらなんでも化け物すぎる。

 まあ、流石にこんなのは日本にはいないから安心してほしい。

 ヒマラヤとかそーいうところにしかこんなデカいのはいない。

 日本にいるのはせいぜい7mくらいの小型種類。

 いや、それでも馬鹿デカいんだけど。

 それで話を戻すと、今回、狙うのは巣立ちたてでまだうまく飛べない若鳥。

 丁度、このくらいの時期に、山の奥にある巣から、滑空しやすい崖のあたりに移ってくるらしい。

 翼長は5mくらい。

 まあ、それでも大型バスよりデカいんだけど。

 ヒマリ曰く、あくまで胴体は細いし脆いから、リヴァイアサンより簡単に狩れるらしいけど。

 だけど、その巨体を大空に浮かせる為に筋肉はものすごい密度らしく、振るった羽が当たっただけでも人間なんて軽く吹っ飛ばせるらしい。

 だから、気をつけてねって店長が言っていた。

 こっわ。

 気をつけてどうにかなるものなのか。

 私は寒いせいかもしれない震えを覚えつつも、ドンドンと進んでいってしまうヒマリを追いかけていくのだった。

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