ありふれた少年。自分を正当化させるために人生を右往左往するその生き方は。果たして何処に着地するのであろうか。
極限の状態で互いの目的が同じベクトルに向いている。そこには思いやりと尊敬、同時に嫉妬が相まみえ、自我を曝け出す。
内心すら外に写し出される鏡の世界。
某一流大学を目指していた僕は、負けず嫌いも手伝ってか学業の成績は常に学年のトップだった(ある時期から)。そのキッカケとなったのは、VHSビデオが欲しかったから。当時周りの友達の家庭には当たり前の物だったが、今だにラジカセを好きな音楽ア−ティストがでてくるとテレビに近づけて録音していた僕にとっては喉から手が出るほど欲しい物だった。
録音した曲の始めと終わりは必ずカチッとした音が入っていた。
しがない溶接工の家庭には高級品でしかなかった。
中学に入学した頃の僕は成績が後ろから数えた方が早く、中間テストが終わって流石にみかねた一つ上の姉が、いい加減に少しは頑張らないと良い大人になれないよと言ったことを今でもよく覚えている。元々スポーツにしか興味がなかった。
小学校の時に周りに付き合わされて受けた全国模試でビリケツだった僕のところに合ったことのない二人がやってきて母と神妙な面持ちで話していた。あまりにもひどい成績を心配し家を訪ねて来た模試の主催者だった。