夏祭りといえば告白
電車が高校最寄りの駅で泊まる。いつもの聞きなれた車内アナウンスとともにドアが開く。
「なあ、冬毬祭りの場所どこだっけ?」
「お兄ちゃん知らなかったの!?まあいいけどさ、確か近くの神社だった気がするよ」
僕も冬毬もここのお祭りに来るのは、初めてで僕は開催場所すら把握していなかった。最寄り駅から約20分高校とは、真逆の方向にやってきた。
「お、いたいた葉大まった?」
「大丈夫今来たとこてか、お前甚平かよ」
「ふ、妹とおそろいだぜ。じゃあ冬毬気おつけて一人で帰ってもいいけど、お兄ちゃんが恋しかったら呼んでくれ」
「多分大丈夫だから、お兄ちゃんも楽しんで」
僕のことをしっかり考えてくれるとは、い妹を持ったものだ。
「それで、どう回る?僕あんまりここの神社知らないんだけど」
「とりあえずぶらぶらみて回ってみるか。ちなみにここの神社ちょっと入り組んでるから、はぐれないようにしろよ」
この神社は、見た感じ結構広くアニメや漫画で見るそこそこ大きめの神社と同じくらいの規模だ。
「葉大、僕を何歳だと思ってるんだ15歳だよ流石に人が多かろうとはぐれないよ、しかもはぐれても連絡すればいいからね」
「まあ、それもそうだな。じゃあとりあえず入るか」
開催地である神社は結構大きかった、縦幅はあまりないけれど横にでかかった。
「ここ確かにでかいな、ところどころに抜け道があるし店も結構出てるな」
「まあ、ここら辺の祭りってこれくらいしかないからな。てゆうかお前そうゆうの知らないのか?」
「あー僕ここら辺に来たの去年の冬だから、あんまり知らないんだよね」
僕の親は、仕事の都合で引越しが多く色々な場所を転々としている。
「へーそうなんだな。もしかしてお前と離れるかもしれないってことか」
「いや多分もうそれは、ないと思うよ。この間父さんが、そろそろ身を固めようかなみたいなこと言ってたから」
「そうなんだなまあ、お前が幸せならいいけどな」
ここでゆう身を固めるとは、マイホームの検討をしているらしい。
「とかやってる間にやっと見つけた型抜き。俺結構好きなんだよね、全部いけた時の快感と言えばなんとも言えないものが」
「型抜きか、僕やったことないな」
「以外だなじゃあやってみるか」
そう言って僕と葉大は、黙々と型抜きを始めた。最初は全く出来なかったけれど5回ほどやるとコツをつかめ、きれいに型を抜くことが出来た。
「お、お兄ちゃん上手くできたね。はい賞金600円」
「ありがとうございます、あれ?葉大、どこいった」
「あー横にいた子か、なんかさっき人の波に飲み込まれて行ったぞ」
座ってるのに人の波に飲み込まれるってそんなことあるかよ。まあ、いいかスマホがあるから。
「圏外…」
人が多いせいでスマホが圏外になっていた、一旦人気が少ないとこに行かないと行けなくなった。型抜きの屋台から進み、少し長めの階段を昇って本殿までやってきた。
「流石にここなら人少ないし圏外解けてるだろ…」
「陽葵さん!入学した時からずっと好きでした、僕と付き合ってください」
スマホを取り出して電波の調子を確認しようとしたとこで、本殿の裏から聞き馴染みのある名前を呼ぶ声が聞こえた。
「私なんかが、君に惚れられるような部分あったけ?」
「私なんかとか言わないでください、陽葵さんは僕みたいなやつにも優しいし、しかも人によって忖度しないしその…とっても可愛いとか他にも沢山いい部分があるんですよ」
そこをこっそり覗くと、名前は覚えていなけれど確かバスケ部の人だった気がする。それにしても神楽坂さんにたいして結構な熱弁をしているからこれは、有り得るのかもしれない。
「私の事そんなに好きでいてくれるのは、嬉しいんだけど…ごめんなさい今好きな人がいて」
「そうですよね、僕みたいな顔普通なやつが陽葵さんみたいな人と付き合えるわけが無いか。すみませんでした」
そう言って、踵を返してすごい速度走り出すバスケ部君。やはり運動部とゆうこともあり足が早い。
「ちょっとまって、別に顔ってわけじゃ…行っちゃったまあしょうがないかな、ん?人の感触」
バスケ部君に弁明するために、少し追いかけたけれど浴衣とゆうこともあり少ししか走れない神楽坂さんが僕の横で止まり壁に手を着くように僕に触れる。
「ごめんなさい私誰もいないと…て、一葵君!?」
「あ、ごめんなさい告白盗み聞きしてしまって」
神楽坂さんの服装は、夏祭りとゆうこともあり浴衣。神楽坂さんの浴衣は、白の生地に夏の花のひまわりと鞠の模様。そして僕のあげたヘアピンをつけている
「いや、まあ別にいいんだけど。てゆうか、一人で来たの?」
「妹と来て、友達と回ってたんですけど。さっきはぐれちゃって」
「へー、そうなんだ実は私もなんだよね。迷子仲間だね」
「そうなんですか、じゃあここに呼んできてもらいましょうか」
「ちょっとまって、ここで待つのも暇だし一緒に回りながら探さない?実際、こっちから連絡できてもあっちが受信出来ないかもしれないしさ」
神楽坂さんの言ってること結構正しいかもしれない、さっき下では圏外で上へ来たのだから。
「そうかもですけど、僕が神楽坂さんの友達の顔を知らない問題が」
「はいこれ、なんとなくでもいいから全員覚えといて」
神楽坂さんの見せてきた写真には、神楽坂さんを入れて4人が写っている写真だった。恐らくここは、遊園地かどこかで撮った写真だろう。
「分かりました、頑張ってみます。僕の方は、写真あるかな」
「雨川君だっけ多分大丈夫、前に少し話したことがあるから」
話したことがあって顔が分かるのは、分かるけど何故僕の交友関係を知っているのだろうか。まあたまたまか。
「じゃあ行きましょうか、回りながら友達を探す旅へ」
「旅じゃないけどね」
そんな感じで、神楽坂さんと僕の連れを探すために一緒に祭りを回ることになった。
「お、あったあったりんご飴。だいたい祭りにあるから嬉しいんだよね。1つください」
「一葵君って結構甘いの好き?」
「まあ、好きな方ではありますね。この間のベビーカステラも美味しくいただきましたし」
「え!あれ全部一人で食べたの?結構凄いね」
全部食べたとは、言っても1日ではなく2日に分けて食べた感じだった。ベビーカステラは、全く飽きることなく平らげることが出来た。
「あと欲しいものは…あ、横にあったそこの狐のお面ください」
「なんでお面?」
「さすがに、神楽坂さんが僕みたいなのと歩いてると変な噂が立って後処理が面倒くさそうなので、それなら顔を隠そうかと」
僕が買ったのは、木彫りの狐のお面。普通のお祭りに売っている感じのやつではなく、なぜか木彫りだった。
「もう、別に私気にしないのに。それで噂が立っても嬉しいし」
「なんか言いました?」
「い、いやなんでもないよじゃあ探しに行こうか。」
狐のお面を入手し、一緒に回る。かき氷、ヨーヨー釣り、焼きとうもろこしなど、色々回ってみてはいるもののお互いの探し人は、見つからなかった。
「一葵君当たらないんだけど」
「まあ、そんなもんじゃないですかね。じゃあ僕も」
今僕達は、射的をしている。神楽坂さんの狙っているラムネ菓子を、神楽坂さんよりも比較的至近距離で狙う。
「多分行けるはず…」
「あ、はずした。その距離で外す?」
「いや、これはお面で前が見にくいだけです」
「じゃあ、外しなよ歩いてる時も歩きにくそうだし」
「それは、神楽坂さんと僕のためと言いますか、とりあえず外しません」
正直神楽坂さんと歩いてるとこを見られると神楽坂さんに彼氏が出来たとゆう噂で、夏休み明けに神楽坂さんとともに大量の質問攻めに会うのが目に見えていた。まあ、僕が質問受けなくてもこのままだと神楽坂さんだけ質問攻めに会うことになりそうだけど。
「そう、ならいいけど次行こ…あー流されるー」
「あ、ちょっま」
屋台を離れ後ろに下がった神楽坂さんが、人混みに流されそうなところを手を掴んで引き寄せる。
「大丈夫ですか?怪我とか」
「う、うん大丈夫。とりあえず近いから少し離れて」
「あ、すみません」
引き寄せた反動で、そこそこな距離になっていた。まあ、好きでもない男にそんな距離に居られたら嫌だもんな。
「それにしても人増えましたね。このまま人混み入るとさっきの二の舞になりますけど」
「そうだねー、じゃあ手繋がない?」
「え、手ですかそこまでする必要は…」
「なに、それとも腕組みたい?」
「手でお願いします」
「よろしい」
神楽坂さんが手を差し出してくる、神楽坂さんの手を握ると普通の手繋ぎとは違い結構がっちり握ってきた。
「あの神楽坂さん、そんなにがっちり握らなくても大丈夫だと思うんですけど」
「え、知らないの?恋人繋ぎ」
「あーそうかこれ。恋人繋ぎかでも神楽坂さん恥ずかしいなら、やめた方がいい気がしますけど。顔赤くなってますよ」
「い、いや恥ずかしくないから。暑いだけだから。あと人混みではぐれたら心細いから」
そんな神楽坂さんの顔は、いつもより赤く見られた。
「あのー、すみません店の前でイチャイチャ見せつけないで貰ってもいいですかね」
「あ、すみません神楽坂さん行きましょうか」
「う、うんわかった」
なぜか恋人繋ぎをしながら神楽坂さんと一緒に回ることになったけど、夏休み明け神楽坂さんの質問攻めがエスカレートする気がする。まあ、僕関係ないけど。
「全然見つからないね、このままだと花火始まっちゃうよ」
「この夏祭り花火やるんですか?」
「え!知らなかったの?毎年やってるんだよ。しかも普通よりも少し規模が大きいんだ」
「いやーこの祭りきたの初めてで。この際探すの諦めて一緒にみますか?まあ、じょうだ…」
冗談を話していると神楽坂さんの目がなぜか期待の目を持っていた。
「ど、どうしたんですか?そんなに期待の眼差しを向けて。もしかして僕と見たいんですか?」
「い、いや違う。冗談言われたから私も冗談で返しただけだから。ほんとに冗談だから」
そんなにきっぱり否定されると、言葉の槍が僕の心に刺さってくる。また神楽坂さんにからかわれた気がする。
「で、でもそれは最終手段としてやるのもいいかもね。私花火よく見える場所知ってるから」
「そうなんですか、じゃあもしもの時は楽しみにしておきますね」
「ま、まあ任せてよ。」
それにしても全く葉太と神楽坂さんの友達が見つからない。大きいお祭りは、楽しいけれどこうゆう弊害もあるのか。
「そういえば、僕ラムネ飲んでませんでした」
「あ!私もだ買いに行こ」
唐突にラムネを飲んでいなかったことを思い出し、ラムネの売っている飲み物系の屋台を探しに行く。
「お、ありましたよ飲み物の屋台。ラムネは…あった2本ください」
屋台のお姉さんが、冷えた水の中からラムネの瓶を2本取りだしタオルで拭いて渡してくれる。
「どうぞ神楽坂さん」
「ありがと、お金」
「いいですよ別に、葉太探すの手伝ってくれてるお礼ってことで」
「いや、それ私も同じ…」
実際は、夏休み明けの質問攻めを全て押し付けた迷惑料的な感じでわあるけれどこれは、黙っておこう。
「まあまあ、にしても浴衣にラムネって完全に夏って感じで似合いますね」
「そ、そうかな。でも一葵君も甚平似合ってるよ」
「いやいや僕は、普通くらいですよ」
「そんな謙遜しなくても、狐のお面でさらに夏感あるし」
「あ!陽葵ちゃんいた!」
そんな言い合いを、していたら後ろから神楽坂さんを呼ぶ大声が聞こえた。
「あ!やっと見つけた。どこいたの?」
「それは、こっちのセリフだよ陽葵ちゃん私たちから急にはぐれるんだもん」
どうやら、綺麗に神楽坂さんだけはぐれて迷子になっていてそこで、たまたまバスケ部君に捕まったらしい。
「それでは、神楽坂さんさよなら。今度は、はぐれないようにしてくださいね」
「それ、私も言えることだけど…まあ、雨川君探すの頑張ってね。じゃあねまあ夏休み明けか、どこかで」
「なに?陽葵彼氏?それなら私たちのこと気にせず回ればいいのに」
「違うから、たまたま一緒に迷子になっただけだから」
僕といた事に対して、神楽坂さんがいじられている。それにしてもどうやって葉太を探そうか。
「治ってる」
探し方に迷いまたスマホを見ると、圏外が治っていたため直ぐに葉太に電話をかける。
「お、でた葉太今どこにいる?」
「俺か?今お前を探して颯と一緒に回ってる」
「颯来れたんだ」
颯は、言っていた予定が終わったらしく葉太と合流して一緒に回っていたらしい。
「じゃあお前、本殿来てくれるか?俺らも今から行くから」
「わかったじゃあそこで合流で」
神楽坂さんと別れて電話の約束の後直ぐに本殿に向かう。本殿から初めてまた戻るとは。
「お、きたきたなんでお面つけてるんだ?」
「まあ、これは諸事情がありまして」
「そんなことどうでもいいから、早く移動するでござる。花火がもう少しで始まるですぞ」
そこから約20分後3人で花火を見ていた。それでも少し神楽坂さんの言っていた花火が綺麗に見える場所が気になる。
陽葵ちゃんの方に関しましては、また後日に上げさせてもらいます。さすがに長すぎて投稿に支障が来たしてきたので。
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