日直はよく仕事を押し付けられる
「一葵君おはよ。はやいね」
「そうですかね」
僕のクラスの日直は、出席番号前後ペアで回されていて今日は僕と神楽坂さんの日だった。
「仕事何やった?」
「さっき来たばっかりなので、ちょうど黒板消しを始めたくらいですね」
日直は、他の人達よりも早く来て黒板消しなどの雑用をやらされることになっている。
「じゃあ、黒板消し手伝ってあげるよ」
一概に黒板消しと言っても単純に黒板に書いてある文字等を消すだけではなく、黒板のレールの掃除も含まれている。
「でも、黒板って文字消してると服に粉かかるから面倒だよね」
「それはもう、許容範囲するしかないんじゃないですかね」
かく言う僕も粉が服にかかる事をあんまし良しとしていない。
「よし!こんなものでしょう。他仕事あったっけ?」
「あとは、学級日誌を少し書いて終わりですかね。今日は特に仕事頼まれませんでしたし」
「じゃあ一緒に書こ」
「いや、別に学級日誌ぐらいなら僕一人でできますよ。別に工夫する必要ないですし」
学級日誌に書く内容は今日ある授業を書いて、その内容を書いて、今日の反省や感想を書くくらいだから僕一人で完結できる。
「別にいいじゃん!二人で書いた方が楽しい?はずだし?」
「はてな着いてるじゃないですか。それじゃあやりましょうか二人で」
「やったー!」
何故か、本当に何故か学級日誌を二人で書き始めた。しかも、早朝だから書くのは今日ある授業だけ。
「よーし!到着今日は早起きだったから、朝早くの俺登場!…二人とも何してるの?まさか…」
神楽坂さんと並んで学級日誌を書き始めてすぐに、城谷さんが登校してきた。
「違うよ、僕達日直だから学級日誌書いてるだけ」
「ほんとかよ…あ、ほんとだそれじゃあ別に横に並んで書く必要なくね?」
「それは…なんか神楽坂さんが」
僕の言葉で城谷さんが、神楽坂さんの方向を見る。
「いや、違うのほらサポートがいた方が仕事って早く終わるじゃん。だからね私が風見君のサポートをしようかなーって」
「なーんだ、陽葵ちゃん効率思考だね」
「そうでしょー効率は大事だからね」
その割にサポートと言うよりかは、ただただ喋ってるだけだったような。
「じゃあ俺もサポートに入ってやげるよ、朝早すぎて暇しそうだし」
俺もついでにと、城谷さんが参加したけど結果的に二人が喋ってる中僕が黙々と学級日誌を書くだけだった。
「今日日直の二人ちょっとこっち来てもらってもいい?」
お昼休憩の時間が来ると同時に担任の田中先生が僕らを呼ぶ。
「どうかしましたか?」
「いや、それがね先生資料室の整理の仕事があったんだけど、出張が入っちゃってねたがら二人にお願いしたくて」
「僕は大丈夫ですけど神楽坂さんは…」
「うん、私も大丈夫」
「そう、ありがと。あとついでに、資料室から辞書も探しといて見つけたら私の机に置いといていいから。それじゃあ先生急いでるから」
一つ面倒な仕事任されたと思ったら、また一つ面倒な仕事がまわされ当の本人は、逃げるように去っていってしまった。
「それじゃあ一葵君、放課後頑張ろうか」
「そうですね、やれるだけ頑張りましょうか」
資料室の場所は知っているけど、中を見た事がないからどのくらいの仕事量なのかが分からないのが一番面倒だ。
「それじゃあオープン…そこそこ散らかってるね」
「これ、そこそこの量ですか?」
放課後になって、資料室の鍵でドアを開けるとそこらじゅうに紙とファイルが散らばった、汚部屋が広がっていた。
「この散らかり方は、誰かが暴れないとなし得ない汚れ方ですよ」
「だよねー、先生これ知ってて私達に託したのかな?」
多分説明がなかったあたり、そうなのだろう。
「まあ、ごたごた言ってても仕方ないので始めましょうか。怪我には気おつけてくださいね」
「はーい、まあそれは一葵君もだけどね」
少し面倒ながらも、資料室整理を始めた。落ちているファイルを所定の位置に戻したり、散らばっている紙をまとめたりついでにホコリの掃除も。
「にしても、ここってなんの資料があるんだろうね」
「ずっと無心でやり続けてたので考えてませんでしたね」
八割型が片付いたところで、神楽坂さんから素朴な疑問が出てきた。
「あ、これとかわかりやすいんじゃないんですか」
「何それ本?」
たまたま僕の整理していた棚に入っていた分厚い本を取り出す。
「これ、卒業アルバムですよ」
「なにそれ、気になる」
取り出した卒業アルバムを資料室真ん中にある、そこそこ大きめの机に置いて読みはじめる。
「これ何年前かな?」
「これは、二十年前っぽいですね」
「年代物だね。私達が知ってる人いるかな?」
「さすがに居ないんじゃないですかね、二十年前ですし有名人がいるなら別ですけど」
「ですよねー」
さすがに教師陣も二十年やっている古株はさすがに居ないだろうし。
「へーこの時の校舎黄色だったんだ」
「いまは、白ですよね」
卒アルの写真を見てみると、校舎の色は今と違い淡黄蘗色だったり体育倉庫の位置が違ったりと、いくつか違いがあった。
「あ!この人達カップルじゃない?」
神楽坂さんの指さした写真を見ると、二人の男女が恋人繋ぎで歩いている写真だった。
「うわ、大変そう」
「どうゆうこと?」
「仮にですけど、この人達が別れたとすると毎回この写真を見る度に相手を思い出すって考えると…」
この二人が既に別れていたら、毎回別れた相手を思い出す材料になる。
「でもさ、その逆を言えばこの二人が結婚した時は、簡単に思い出せるってことじゃない?なんかロマンチックだね」
「まあ、たしかに。とはいいつつ、僕達には今この人達がどうしてるかなんて分からないので、想像を膨らませることしか出来ないですけどね」
もし二人が結婚していたら、子供も混じえて楽しく卒アルを見返すことだろう。
「でも、いいよねこうゆう用な思い出を取り出せるものが残って結婚とか」
「ちょっと前から思ってましたけど、神楽坂さんって結婚のことそこそこ考えてますよね。あれですか?夏祭りの時に言ってた好きな人と」
「いや、まあそうなるのかな?まあ、そりゃあね人としてとゆうか結婚は人生の大型イベントのひとつだから」
なんか、支離滅裂とゆうか脈絡があっていない言葉だな。少し踏み込みすぎたか。
「とりあえず休憩は、このくらいにして作業に戻りましょうか」
「そ、そうだね早くやらないと時間が…いて」
作業に戻ろうと席から立ち上がると、神楽坂さんの腕が棚に当たり棚の上にあった箱が落ちてくる。
「神楽坂さん危ない!」
「え、ちょっ…」
神楽坂さんにものが落ちできていたため、その場に持っていた卒アルを落とし神楽坂さんを庇うように押し倒した。
「いたた…一葵君大丈夫!?」
「はい体はいい感じにクッションになるものがあったので、どっちかって言うと頭に…」
現状の説明をしていると、神楽坂さんの顔に一滴の赤い雫がこぼれ落ちた。
「ちょっと!一葵君ほんとに大丈夫血出てるよ血!」
「あ、ほんとですねとりあえず保健室行きましょうか」
体の方は、神楽坂さんの胸がいい感じのクッションなって大丈夫だったみたいだけど、頭は落下物が当たってダメだったらしい。
「先生!一葵君の頭から血が」
「えー早くこっち来て」
神楽坂さん付き添いの元保健室に着くと、養護教諭の先生が慣れた手つきて包帯巻いてくれた。
「よし、大丈夫小さい傷だったみたいだし」
「良かったー一葵君ごめんね」
「ちょっ、ちょっと神楽坂さん…」
処置が終わると神楽坂さんが急に抱きついてきた。正直胸の感触しか分からない。
「にしても、なんで頭怪我してんの」
「資料室の整理してたら私の不注意で」
「先生は?」
「出張です」
「安全管理終わってるわね」
たしかに今頃だけど、ああゆうとこの整理とかって見守りの先生くらいいるよな。
「まあ、とりあえず大丈夫みたいだから戻っていいよ、怪我にだけは気おつけてね」
「分かりました、戻ろうか一葵君…あ、ごめん」
やっと気づいたのか、神楽坂さんが僕をようやく解放してくれた。ずっとだけれてたから、少し苦しかった。
「ほんとにごめんね、私の不注意で」
「まあ、いいですよそもそも僕達に任せた先生が悪いですし」
「そう…」
少ししょんぼりした感じで、言葉を出している神楽坂さんだった。
その後は何事もなく、資料室の掃除、整理を終え無事に家に帰れた。
「ただいま」
「お兄ちゃんおかえり…どうしたの?頭」
家に帰ると、冬毬がリビングでココアを飲んでいた。
「まあ、ちょっとね。まあ、安心しなよ尊き天使の命は守られた」
「何言ってんのまあ大丈夫そうだし私は部屋に戻るよ」
本当のこと言ってるのに、呆れたふうな感じで部屋に戻っていく冬毬だった。
今回は、唐突に閃いた話だったんですけど書いてて私が「すごくいい」と思った話でした。
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