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平安女子のイケない食卓 ー 摂津源氏物語集 (3) ―  作者: クワノフ・クワノビッチ
8/12

(8) やっぱり文官よね!

今日は、ギリギリセーフですね!

あまり長くないですが、よろしくお願いします!

「うふふ、……だって 『分からないことがあったら、何でも聞いて下さいね! 』

 ……なんて、真面目な顔して(おっしゃ)るのよ! ……私、あの頃は幼くて、何も知らない子供だったから、本当に何でも聞いちゃった 」

 そう言うと、恥ずかしそうに小萩が笑う。少し酔いが回ったせいか、耳が赤くなっている。

「それに、……(これ)様は、今まで()()()()()()()()感じの方で、和歌(うた)も上手いし、ちょっとしたことでも褒めてくれたから、嬉しかったの! 」

「なるほど、文官の方は違いますね。我が一族に、そんな優男(やさおとこ)はいないもの! 」

 つまり小萩は、細やかな気遣いのできる"文官タイプ"の男に免疫がなかったのである。

「それで、……聞きたいことついでに、政治(まつりごと)の話も聞いてしまったの、……たぶん、『女人のくせに、そんな無粋なことを聞くのか? 』 とか、怒られるかなぁ、と思ったら、……本当に丁寧に教えて下さるのよ、私みたいな小娘に! ……でも、そのお蔭で、私にも何かできることはないか? と思い始めたのです」


 そんな訳で、田なぎ(がら)みで面倒事が起こった時には、小萩の実家の面々が()()()()力を貸していたかもしれない。

 なんといっても、惟成はこの頃、検非違使(けびいし)庁の()衛門権(えもんのごん)(のすけ)という役職にも就いていた。

 これは、当時の警察機構を味方に付けていたようなものなので、実際に、田なぎの弁は、影で手荒なことをしていたかもしれないのである。


「うふふ、……、馬鹿な話かもしれないけど、あの頃、私は男の方に()()()()()()と思って、調子に乗っていたかもしれないわ! 」

 だんだん酷く酔いが回ってきたのか、小萩は、ケラケラと笑い出した。

 その姿は、何となく自虐(じぎゃく)的で、桔梗には気の毒に見えたのである。


「あの、叔母上様、大丈夫ですか? ……少しお休みになられては如何(いかが)でしょうか? 」

 桔梗も心配になってきた。

 父や祖父のように、根っから()()()()桔梗と違って、小萩は繊細なのである。酒は好きだがとても弱い。

「本当に御免なさい! ……()叔母()様」

 今度は、桔梗まで酔いが回ってきたせいか、突然、謝りだした。

「私どもの家に引き取られた為に、いろいろとご苦労なさったのではありませんか? ……私は、この家で生まれた女なので、初めから運命(さだめ)だと割り切っておりますが、……本当は、なんと申しますか、ここは()()()だとお思いになりませんでしたか? 」

 思わず、桔梗の口から本音が漏れる。

「仏様のことは(とうと)んでいるのに、必要とあらば殺生をする。それに、曾祖父(そうそふ)の代から戦があれば、一族あげて戦場(いくさば)に出向くのが当たり前です。だから、……滋養の為にと、むしろ獣の肉を平気で食べるのですから」

 小萩の悲しい結婚生活の思い出を聞いて、桔梗も悲しくなった。

 寄りにも余って、因果(いんが)な家の()()()になったものである。

 世間の人は言う。 『世はまさに、末法(まっぽう)の世だと! 』

 つまり、救いがない時代だからこそ、経を読み、死者を手厚く供養し、精進して生きていかなければ、死後の世界で不幸になる。……そう、信じられていた時代だからだ。

 しかし、桔梗の家は、まるでそれに逆行するかのように世渡りをしている。


「何を申されますか! 」

 酔っているはずの小萩が、急に勢いよく答えた。

 桔梗の方が驚いてしまう。

「私は、この家の方々が大好きですぞ! 」

 小萩は、酔っているように見えても、本当はそうでもないのだろうか?

 そんなふうに思えるほど、()()()()と言い切ったからである。

「この家の娘にして頂いたからこそ、私は、今でも息災なのです。……あの時、火事の中で救ってもらえてなければ、このように平穏に暮らしておりませんぞ! 」

 そう言うと、小萩は、満仲様の家に引き取られることになった経緯(いきさつ)について語り始めた。





これから、天延元年の大火について書くつもりです。

また、よろしくお願いします!

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