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平安女子のイケない食卓 ー 摂津源氏物語集 (3) ―  作者: クワノフ・クワノビッチ
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(5) 小満仲様の幸せ!

遅くなりましたが、今日も更新しますので、宜しくお願いします。

 確か、……桔梗は、一族の中でも取分け"気の強い(おんな)(のこ)"だと言われていたはずだ!

 そう思うと、桔梗の"無作法な態度"が、何だか妙に()()()()見えてくるから不思議である。


 幼い頃、桔梗は多田に住んでいたことがある。そしてその頃は、他の男兄弟に負けず外で遊ぶ子であった。

 邸の周りの川で水遊びをしたり、子供達の面倒を見ていた熊爺(くまじい)に肩車をしてもらって高い景色を楽しんだり、女の子としては、かなり野性的(ワイルド)な子だった気がする。


 ある日のことだ。

 邸の裏にある高い木に登るために、熊爺に無理矢理持ち上げてもらったことがあった。

 熊爺とは、腕っ節の強さを買われて東国からやって来た"熊谷(くまがや)"という男なのだが、名前に(たが)わず、本当に背が高く、熊のような大男だった。

 だが、小萩が多田に来た頃には、もう年を経て"熊爺"という風貌(ふうぼう)になっていたので、よく子供達に絡まれていたのだ。

 大きな体に似合わず、子供が好きで優しい男だったので、いつの間にか子供達の守役になってしまったのである。


 その日も、熊爺は桔梗を肩車してやると、高木の比較的低い幹に座らせていた。

 いつもなら暫く遠くの景色を眺め、満足して下りたがるのだが、その日は何故か自ら木に登り始めたのである。

 そして、あっという間に、熊爺の手が届かない上の方に登ってしまった。

 当然、大騒ぎである。

 ここ多田には、血の気が多い若い衆が沢山いるので、本来、木に登って下りられなくなった子供の対応ぐらいは、それ程問題にならないのだが、如何(いかん)せん、桔梗は女の子だ。そのせいで騒ぎが大きくなってしまった。

 もちろん、木に登って桔梗を誘導する者と、落ちてきた時に受け止める者らの連携によって、桔梗は無事に下ろされたが、それでも、満仲様から大目玉を食らったのである。

「そちは、もう一度、母の腹に戻って男子(おのこ)に生まれ変わって来るがよい! 」

 今となっては、満仲様が真剣(まじ)に怒っていた姿が懐かしい。

 (つわもの)(ども)には厳しく、妥協を許さない武人ではあったが、家族やとりわけ()()には優しい人だったので、本当に珍しい光景を見たものである。

『真に、……小満(こまん)(じゅう)(さま)とは、よう言うたものよのう! 』

 小萩は、可笑(おか)しくなって吹き出した。


「もう、……何が可笑しいのですか? 」

 桔梗が涙目になって怒っている。

「いや、いや、・・・・・何だか桔梗様が愛らしいので」

「もう、……私は、父と年が然程(さほど)変わらない(ひと)を夫にせねばならないのですぞ! 分かりますか? 」

「……それは、真にお気の毒で 」

「いや、いや、いや、……ならば、叔母様は如何(いかが)ですか? まだ、お若いことですし、もう一度、私に代わって婿を取りませんか。相手の方は二度目とはいえ、見事に身分は()()ですぞ 」

 酒のせいで酔いが回ったのだろうか、桔梗は赤い顔で本音をぶちまけた。

「私は、…… 」

 小萩が何かを言い淀んだ。

「……本当は、この家の(むすめ)ではないのです」

 その言葉に、今度は桔梗が沈黙した。

「この家の方々は、よく御存知かもしれませんが、私は養女にしていただいた身ですので、もし、義兄上様が望まれるなら、私が替わることもあるでしょう。しかし、私の身の上では、その方の格を下げるのではないかと心配です 」

 小萩は、そう淡々と語った。

「……ただ、幸せなことに、私は入道(にゅうどう)(さま)(満仲様の出家後の呼び名)に本当の娘のようにかわいがっていただいたから夫を持つことだってできたのです 」

 そう言うと、寂しそうに笑い。小萩にとっては一生忘れられなくなった、別れた夫である藤原惟成(これなり)との馴初(なれそ)めについて話し始めたのである。


突然、寒くなったので、体調管理が大変ですね。

……皆様も、風邪をひかないように気を付けて下さいね。

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