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平安女子のイケない食卓 ー 摂津源氏物語集 (3) ―  作者: クワノフ・クワノビッチ
10/12

(10) 兄様は紳士な武人!

ギリギリ、連休前にセーフ!

宜しくお願いいします。

 天延の火事の頃、頼光はまだ、正式に官職には就いていなかったように思われる。

 すくなくとも、記録には残ってないからだ。

 ただ、父親である満仲様が国司の仕事を何度も経験していたので、おそらく他の兄弟達と共に、その仕事を手伝っていたのではなかろうか。

 それでも、朝廷の中で、何らかの政争があり、荒事が起こった場合には、源満仲一門は必ず召集される立場にあった。

 例えば、都で

『"平将門の息子"が上洛してきて、戦を仕掛けようとしている! 』

 という噂が流れた時などは、満仲様らと一緒に、一斉捜査に出張ったのではないかと思われる。

 また、花山天皇が出家する時には、護衛を兼ねて天皇が逃げないように移送する役割を果すなど、いろいろなところでコッソリと活躍していたのではなかろうか。

 そんな理由から、頼光は自然と()()()()の扱いにも慣れ、彼自身も立派な武人に育ったのであった。


 天延元年のその夜、源頼光は偶然にも外出していたので、賊との戦いに直接巻き込まれることなく済んだ。だが、帰る道すがら、異常な事態が起こっていることに気付いたのである。

 沢山の人々が、邸がある方向から押し寄せて来たからだ。

 よく見ると、邸の周辺が明々と輝いて見え、黒い煙が強烈に巻き上がっている。

 そこで、少しでもいいから、邸の方へ近づこうとしたが、残念ながら、人の多さと、家が燃える熱の為に、もう進めないようになってしまった。

『どうやら、再び満仲様の邸が賊に襲われ、火を着けられたらしい! 』

 と言う、誰かの話し声が聞こえる。

 その話に、頼光は思わずカッとなった。

 だが、周囲は炎に包まれており、全く進めそうにもない。

 これでは、火を放った連中も、もうここにはいないだろう。……そう思った。

 すると眼前に、炎の中を逃げ惑いパニックになっている人々の姿がハッキリと見えたのである。

 頼光は、大きく呼吸をすると、必死に怒りを鎮めた。

 そして、付き従ってきた者達と共に、急いで避難誘導を始めたのである。

 せめて、目に見える範囲の人々だけでも、無事に救わねばならないと思ったからだ。

『まさか、ここまでヤラれるとは! 』

 頼光は唇を噛み締めた。

 上昇志向が高く、手段を選ばない父に対しては、常々、不満があったが、こんなにストレートに(しっ)箆返(ぺがえ)しを受けるとは思わなかったからだ。

 満仲邸の周辺には、他にも何軒か中級貴族の邸がある。

 彼らにとっては、とんだ()()()()()だ。

 我が一族の巻き添えにあって死人が増えれば、さすがに目覚めが悪い。

 そこで、頼光は懸命に働いたのである。

 そして、そんな時に迷子になった小萩は拾われた。

 小萩は、親どころか面倒を見てくれる者達からもはぐれ、一人で泣いているところを保護されたのだ。

 幸いなことに、当時、頼光は満仲邸とは別に棲家を構えていたので、暫くの間、小萩は無事にそこに留め置かれることになったのである。


 だか残念なことに、待てど暮らせど、小萩の縁者は見つからなかったのである。


「今日から、そなたは我が家の()じゃ! 」

 焼き出されてから、一ヶ月程過ぎた日のことである。小萩は満仲様にこう言われた。

「……そうじゃ、これからそなたは妹子(いもうとご)じゃ! 我のことは兄様と呼んでも良いぞ! 」

 小萩の横に座っていた頼光も、すかさず口を挟んだ。

 どうやら身内を失い、引取り手も現れない小萩は、いよいよ()()()になるようである。

 とはいえ、この頃の小萩は、まだ七歳になったばかりの子供だったので、自分の立場の変化を理解できなかった。

「兄様ですか? 」 と、少し首をかしげる。

 小萩は、頼光の顔をじっと見ながら問いかけた。

「何じゃ、不満か? 」

 何やら()()()()()()幼な子の反応に、頼光は楽しそうに突っ込んだ。

「えっと、……お爺様が、お父上様になられるのですか? 」

「ははは、……この年で、また子供が増えるとは思わなんだ」

 満仲様が面白そうに笑う。

「まぁ、兄とはいえど、そなたと頼光では親子ほど年が離れておるからな! ……それとも、そなたは頼光の娘になりたかったのか? 」

「でも、……兄様では、()にして頂けないでしょう? 」

 何気なく、ポロリと零した小萩の言葉に、二人が大笑いする。

「そなた随分と小萩に好かれたものじゃな、これは我が是が非でも貴公子(よいおとこ)見繕(みつくろ)って、(とつ)がせねばなるまい」

 そう言って、ちょっと苦笑いしながら、満仲様は小萩の瞳を改めて見つめ直したのだった。


 その時のことは、幼いながらも小萩の脳裏にしっかりと焼き付いている。

 今となっては、よくもあんな恥ずかしいことが言えたものだ。

「でも、……兄様では、()にして頂けないでしょう? 」

 時折懐かしがって、あの頃が話題になると、必ずからかわれる。

 そして、その度に顔から火が噴き出しそうになるのだが、

 ……おそらく、一番恐ろしかった時に手を引いてくれた優しさが、頼光に対する思慕とも恋情ともつかない思いになっていたのでは?

 と、 ……今では、そう思って納得しているのだ。




三連休は暇ですが、それでもゆっくりしたいです。

また、続き書きますので、宜しくお願いします。

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