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平安女子のイケない食卓 ー 摂津源氏物語集 (3) ―  作者: クワノフ・クワノビッチ
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(1) 憧れのカントリーライフ

「秋の歴史」に向けて用意してきた作品ですが、今回はできるだけ分かり易く、読みやすい! をモットーに書いてみました。

そこで、文字数の多い時と少ない時が回によっては出てくるとは思いますが、コツコツとアップしていこうと思いますので宜しくお願いします。

----- 前年に書いた、『満仲様の終活』の続きのエピソードとして書いていますので、引き続き"小萩"の名前を使いますので、悪しからず。……摂津の皆さん! すみません。


 平安時代も半ばのことである。

 一人の貴族の娘が、少数の供の者らを連れ、都から摂津(せっつの)(くに)多田(ただ)の地にやって来た。

 時は長徳(ちょうとく)四年(九九八年)の秋。いよいよ一条天皇の御代になり、あの有名な藤原道長が関白となって権勢(けんせい)を振るい始めた頃のことだ。

 この娘の名を、仮に"桔梗(ききょう)"と呼ぶことにしよう。

 なぜなら、記録の上で、その人の存在が確認できたとしても、当時の女性の名前は、余程(よほど)のことがない限り伝わることがなかったからだ。

 そして、この桔梗は摂津国を拠点に栄えた()()()()棟梁(とうりょう)である"(みなもとの)頼光(よりみつ)"の()()であった。

 源頼光というと、いろいろと伝説がある源氏のヒーローというイメージがあるが、実際の記録の上では、源氏の始祖的な存在である摂津守・源満仲(みつなか)様の息子に生まれ、後に春宮大進の職に就くと、(おき)(さだ)親王(後の三条天皇)の世話係を任せられていたこともある。

 また、国司の仕事も度々経験するなど、当時の中級貴族としては恵まれた人生を送った人のようだ。


 長徳四年、この年の夏は、都に住む貴族にとっては大変厳しいものであった。

 宮中で働く者達の間で"赤疱(あかも)(がき)"(麻疹(はしか))が大流行し、沢山の貴族の命が奪われることになったからだ。

 また、政治を支えていた官人達が働けなくなった為に、政治機構自体が止まってしまった。

 そこで、 『都に居ると危ないのでは? 』 と、他に()()がある者らは、一時的に都を離れたのである。

 そして、そんな理由から、桔梗も祖父・源満仲様が切り拓いた多田荘の地にやって来たのだった。

 だが、肝心の父・頼光自身は、他に健康に働ける者がいない為に仕事から離れられず、そこで、桔梗だけが訪れたのだ。

 折しも、あと数日経てば満仲様が亡くなってから一年経つ。

 そこで桔梗は、頼光から御爺様(おじじさま)の供養をしっかりするように頼まれていたのである。


 その日、桔梗を出迎えに出て来たのは、今は亡き満仲様に代わって多田荘を仕切っている"小萩(おはぎ)"だった。

 小萩は、夫だった藤原惟成(これなり)と別れた後は、誰にも縁づかず、出家した満仲様の世話をしていたのである。

(ほん)に、よう、御出(おいで)で下さいましたな! 」

 開口一番、嬉しそうに小萩が声を掛けてくれた。

「……あ、有難うございます。叔母上(おばうえ)様にもご健勝にあられますようで、……あの、すみません。暫く、お世話になりますが、…… 」

 一方、桔梗は何故か緊張している。

「都の方は、今、大変なのでしょう? 兄上様からは文を頂いておりますから、御安心下さいな! 」

 そう言うと、小萩は桔梗一行を歓待してくれたのであった。

 いろいろと人生経験が豊富なせいだろうか、都から離れていても、小萩の物腰は柔らかく、桔梗より(みやび)に見えるから不思議だ。


 こうして、小萩の多田(カントリー)生活(ライフ)が始まったのである。



次回から、いよいよ本編に入っていきますので、宜しくお願いします。


実際は、桔梗が頼光の末娘かどうかは分からないのですが、年齢的なことを鑑み、今回はその設定で書いてます。また、小萩に関しても、あくまでも養女という形で書いていますが、本当のところは、違うのかもしれませんので、私の創作です。悪しからず。

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