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剣杖の女帝は転生したらやりたいことをやりたい  作者: 玉白美琴
剣杖の姫の帰還
19/23

謀略家の焦燥

「派手に言ったね。ありゃりゃ」


「まあ、予想は出来ていたし今さらですわよね?」


「どうする?この異空間も乱れちゃとばっちりが私達にも来るが?」



「シェレスティアナと身内の者が居れば干渉出来るのに……」


「……身内……」


異空間の中も大混乱だった。

一台のきらびやかな馬車が帝国の領地を目指し国境へと急いでいた。


馬車に施された紋章は、剣を構える戦女神ヘルオーネ。

その紋章を掲げることが許されているのは世界広しと言えど唯一つ、オリヴァ女王国のみだ。


そしてその馬車に乗れるのも王族のみ、馬車の周囲を美形の騎士達が五十騎程並走して護衛している。


金色の鎧に身を包んだ騎士達は、女王を守る直属の騎士団ゴールデンナイツ。


女王を守るべく高位の貴族であることは勿論、知勇に優れ尚且つ、女王の側でも問題ないように美しい美青年達で構成されていた。


金色の長い髪を二つに結わえ、左右の髪を顎の高さに縦ロールにし、黒いシックなドレスを着た少女が怒りを露にしながら自分の指を噛んでいた。


ローザスト・デュエル・オリヴァ。

近年大国として台頭したオリヴァ女王国の女王。

才色兼備と、高い手腕で次々と小国を属国にして領土を拡大し、遂にアグノース帝国さえも力付くで滅ぼそうと画策して居た。


……どういう事ですの!?アグノース帝国との戦を明日に控えていたと言うのに……謎の三ヶ国がアグノース帝国を制圧ですって!?


さっきまで滞在していた属国の王都で、駆け込んで来た伝令から聞いた報告を思い出し、ローザストは更に怒りを募らせる。


……我が国とアグノース帝国との戦争を妨害するとは良い度胸ですわ、これ以上邪魔をするのなら……我が自慢のゴールデンナイツで血祭りに差し上げましてよ!!


狂気に満ちた笑みを浮かべローザストは決めると、勝利を確信して拳を握る。


その時だ。国境の入り口まで来た時、突然馬車とゴールデンナイツが止まったのは……。


「……何をしていますの!?さっさと森に入って抜けなさい!!」


怒りを露にしてローザストは怒鳴り付ける。


「女王陛下、それが……突然森の入り口に二人組が現れまして……」


ゴールデンナイツ率いる若き騎士団長がローザストに答えた。


白銀色の髪を一つに結わえ、青い瞳の美しき青年。


カザリフ・ツェガーズ。ツェガーズ公爵家三男でローザストと幼馴染みである。


知勇を備えたカザリフは実力と共に人望もありローザストの剣として仕える忠臣。


「……二人組……?」


訝しげにローザストは目を細めた。


馬車の窓を開けてローザストが前方を見ると、白銀の鎧を着た二人の騎士が前方に立ち塞がっている。


「……あの鎧は……聖騎士?ですが……我が国以外に聖騎士が居るなど有り得ませんわ。さっさと追い払いなさい!!」


ローザストは不愉快そうな顔をしてカザリフに命じる。


「はっ!!」


直ぐにカザリフは返事をすると部下の元へと足早に駆け寄って行く。


「さっさと追い払うぞ!!」


「「「御意!!」」」


カザリフに命じられ、隊長である三人の騎士も返事をすると鞘から剣を引き抜いた。


「あれれ?君達剣を抜いて俺達に向けたと言うことは……殺ってもいいんだよね?あははは!!」


木に寄りかかっていた長身の青年が楽しそうに笑うと、同時に魔力を一気に放出した。


魔力の余波で、長い青年の紫色の髪が靡き、美しい顔立ちには好戦的な笑みを浮かべる。


「ダブラス、姫も我が王も無益な争いは好みません。殺すのは絶対に駄目です」 


そこへもう一人の騎士が釘を刺す。


白に近い金色の髪は肩まであり、目は紫色の布を付けて隠した同じ身長の青年だった。


「へいへい……。分かったよ。ラブラス。で?誰が相手すんの?」


渋々ダブラスと呼ばれた青年は、ラブラスと呼ぶ青年に言うと、軽く腕をぐるぐる回しながら尋ねる。


……何なんだ?……さっきの強大な魔力は……おぞましい闇の魔力だ……。


カザリフは冷や汗を流してダブラスを見詰めたまま立ち尽くす。


……化け物……何なんですの……!?


同じく、ダブラスの魔力を感じたローザストも思わず凍り付く。


「貴様のような軟弱者、我々の敵ではない!!」


「まっ待て!!」


ダブラスの膨大な魔力の感知が出来なかったのか、一人の隊長がカザリフの命令を無視してダブラスに斬り掛かる。


「せっかちだなぁ……」


隊長が繰り出す下段から上段の剣の斬り上げを僅かに左や右に避けてダグラスは笑みを浮かべる。


そのまま体勢を低くして軽く地面を蹴ると、一足飛びに隊長の懐に入り込む。


「なっ!?」


簡単に懐に入られて隊長は目を見開く。


「……ダーク……ヘッドアタッーク!!」


何を思ったのか、ダグラスは額に闇の魔力を纏わせると……そのまま隊長に頭突きを喰らわせた。


「ぐは!!」


顔面に頭突きを喰らって鼻血を出しながら、隊長はそのままカザリフ達の元へ吹っ飛び仰向けに倒れた。


「おいっ!?大丈夫か!?」


「よくもっ!!」


隊長の一人は助け起こし、もう一人の隊長は怒りで剣を構える。


「よせっ!!」


慌てカザリフが手で制して剣を引かせた。


「ん~?やらないの?……まぁ、次ぎやる気なら手加減しないけどね」


ダブラスはつまらなそうに言うと、ペロリと舌を出して僅かに殺気を放つ。


「っ!!」


「「!!」」


「くっ!!」


その殺気を気絶した一人以外、前方の三人や、馬車に乗るローザスト、馬車を守るゴールデンナイツ全員が思わず気圧され息を飲む。


「……我々は魔教国の十聖騎士が一人、光のラブラスと、同じく十聖騎士が一人闇のダブラス。

……アグノース帝国は既に、我が魔教国と、蛇竜王国、魔獣王国の手に落ちました。

二度は言いません。命が惜しければ早々に去りなさい。……オリヴァ女王国現女王陛下が懸命な判断を為さる事を願っています」


不敵に笑みを浮かべラブラスは忠告する。


……こいつ……私が馬車に居るのを……気付いて……


ローザストは驚愕すると、恐怖と怒りで心がぐちゃぐちゃに掻き乱されるものの、この場では恐怖が勝り身体が震え出す。


政変を起こし国の全てを掌握したあの日、ローザスト自らの剣で母である前女王の首を撥ね飛ばした日の光景をフラッシュバックで思い出す。


自分より優れ、王太子として人望もあり、いつも側近に囲まれていた兄を王の座を継ぐのに相応しいと常々言っていた前女王。


最期がとても呆気なく、赤い血の海に落ちた前女王の首を見て、初めてローザストは他人の死なんかよりも、自分の死が最も怖いのだと自覚した。


「っ!!……引きなさいっ!!」


「……えっ?女王陛下?」


「私の言うことが聞けないの!?早くゴールデンナイツを引かせなさい!!このまま属国に帰るわよ!!」


ほとんど女王らしくない金切り声でローザストは命じる。


「しょっ承知致しました!!引き返すぞ!!」


「「御意!!」」


慌てカザリフも従い命じると、二人の隊長も返事をして馬車とゴールデンナイツは森の入り口から反転し引き返して行く。


「……いいの?簡単に逃してさ……。今なら女王の首も取れたんじゃねぇの?」


木の根に座ると、ダブラスは頬杖をついてラブラスに問い掛ける。


「姫も王も殺生は好まないと言った筈です。それに、あの女王からはかつて感じた禍々しい魔力を感じました」  


「……へっ?それって……」


笑みを浮かべラブラスは言うと、ダブラスは驚いて目を見開く。


「魔力の主を追うには女王を泳がせた方が早いです。種が芽吹いて花を咲かせてから刈り取る事にしましょう」


人差し指を自分の口許に当て、ラブラスは微笑む。


「うわ~~、ラブラス滅茶苦茶悪い顔をしている~。でも、過去の礼をたっぷり返せるなら獲物を敢えて生かすのも悪くないねぇ」


ラブラスに軽く引きながらも、ダブラスも意地悪そうに笑みを浮かべた。


その時だ。帝国のある場所を中心に、二つの魔力領域が展開したのは……。


「この魔力の一つは我が王の?もう一人はトゥーリ殿か?」


驚愕してラブラスは目を見開いた。


「うちの王様、一体何しちゃってんの?……って……」


ダブラスかま言い掛けた瞬間、闇魔力と聖魔力の爆発的な波動が周囲に波紋のように広がった。


「……はぁ!?今度は大魔王と大勇者達の魔力!?世界ブッ壊すつもりかよ!?」


余りにもな事態にダブラスは叫ぶ。


「いえ、ダブラス。これはきっと何か想定外な事が起きたのだと思いますよ」


首を横に振ると、ラブラスは否定して断定した。


「……ラブラスの勘は当たるから信じるけどさ……、姫大丈夫かなぁ?」


少し安心すると、ダブラスは首を傾けて問い掛ける。


「さあ?それは分かりかねますが……きっとオロオロしてるんじゃないでしょうか?」


苦笑してラブラスも肩を竦めると、魔力領域を見上げるのだった。


「てえへんだ!!皆頑張れ!!気合いだ!!」


目をぐるぐるに回し、オロオロしながらシェレスティアナは叫ぶ。


「お前が落ち着け!!」


呆れて思わずラーティスがツッコミを入れた。


「シェレスティアナ!!いいか!?絶対に目を開けるなよ!?」


美しい人間の姿になったカインが念を押す。


「僕達、ヤバい状態で淑女の君に見せられないからね!!そのまま目をぐるぐるに回してなさい!!」


此方も美しい人間の姿となったロイスも念を押した。


十二匹のチビエマ士族は美しい人間の姿となり、全員が見せられない裸体になっているのである。


「イエス!!ボス!!」


目をぐるぐるに回しながらシェレスティアナは答えると、緊張し過ぎたのかフラ~と後ろにひっくり返り


「わぁー!?姫ぇ!!」


間一髪、ノヴァがシェレスティアナを受け止めた。


皆もホッと安堵したのは言うまでもない。


頭で考えるよりも、身体で動くタイプなので、シェレスティアナはオーバーヒートを起こしてしまったようだ。


「ふふっ、懐かしいですねぇ。姫は良く私が勉強を教えると、知恵熱を出して居ましたからね」


その様子を見て、トゥーリは昔を思い出し微笑む。


「トゥーリ?」


訳が分からないラーティスは目を丸くする。


「……姫は……大聖女サイラス様の他にも二度転生してます。我が国の姫としてね……」


「っ!?」


ラーティスにしか聞こえない声でトゥーリは答え、ラーティスは目を見開くのだった。




「……この私を……侮辱してあまつさえ上から見下すなんて!!」


属国へと向かう馬車の中、ローザストは怒りを露にしていた。


彼女は人一倍死を恐れるが、それも踏まえ気位が高いので侮辱されることが大嫌いなのである。


「女王陛下!!あれを!!」


不意にカザリフに言われ、ローザストは何事かと馬車の中からそとを見ると……


「……何ですの!?」


その光景に思わずローザストは叫ぶ。


強大な魔力領域が広がっているからだ。


「先程まではアグノース帝国にありませんでしたわ!?」


「危のうございます!!馬車へお戻り下さい!!」


身を乗り出してローザストは叫ぶが、カザリフに馬車の中へと戻されてしまう。


「ですが……あの魔力領域を我が国で展開されたら……!!」


最悪の予想をして言い掛けたローザストは思わず青ざめてしまった。


その瞬間、膨大な闇と聖の二つの魔力を感じて更にローザストは開こうとした口を閉ざす。


「……化け物……」


すっかり強硬状態になり、ゴールデンナイツが速度を上げ属国へ急ぐ中、ローザストは青ざめた顔のまま呟いたのだった。


「仕方無いなぁ。あーぁ、これでバレちゃうな。まぁ、言うつもりはないけど?」


一人の小柄な青年が背中にドラゴンの翼を拡げると、異空間の中に魔力を放出して干渉する。


「異空間が?」


「外に詰まってる子孫も出来ると思うよ?あと、ニケもね」


笑って青年が答えると集中するのだった。

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