チビエマ士族の消滅の危機!!
「あー、本当にやらかしましたわ。あの馬鹿共」
「剣杖の特性を理解してないのか?あいつらは……」
美しい二人の女性は、頭を抱えて異空間から溜め息をついた。
「……おい、別に転移させれば一瞬だろ?移動に時間掛ける必要あんのか?」
ラーティスはトゥーリの右肩を掴むと、自分の方へ振り向かせて問い掛ける。
「ラーティス様、貴方と大勇者様、大魔王様が因縁あるように私達と他の剣杖にも浅からぬ因縁があるのですよ」
苦笑してトゥーリはラーティスに答えた。
「……そうかよ。まぁ、それなら仕方ねぇな」
ラーティスは手を離すと、苦虫を噛み潰したような顔をする。
「……ダテン?」
何気無く、ルエドはシェレスティアナの後ろが気になって回って見た。
「ダテン!?」
後ろを見たルエドはびっくりする。
「ルエド?どうしたエンジェ?」
ルエドを見てフレイも近寄ってきた。
「エンジェ!?」
フレイもシェレスティアナの後ろを見てびっくりした。
「ん?」
当のシェレスティアナはキョトンとしていて分からない。
「何騒いでるダテン?」
「ギャーギャー五月蝿いエンジェよ」
カインは目を丸くし、ロイスは目を細めて文句を言う。
「たっ大変エンジェ!!姫の後ろに異空間の魔法陣が出現しています!!」
目を白黒させながらフレイが報告する。
「しかも、その魔法陣の中からチビエマ士族がみっちり詰まって出てこようとしているダテン!!」
目をグルグルに回し、身振り手振りを交えながらルエドも報告した。
「何だって!?私の後ろだと!?」
慌てシェレスティアナが振り返ると……
「……キシ……?」
無理矢理抉じ開けた異空間の魔法陣から、みっちり詰まったチビエマのうち一匹と目が合った。
「……クラノス!?って事は光同盟と闇同盟か!?」
直ぐにクラノスと分かり、シェレスティアナはびっくりする。
「……チカ族の馬鹿弟子と、魔導師の馬鹿弟子メインでやらかしたダテンね」
クロードも把握すると、絶対零度のブリザードが吹き荒れる。
「……マジか?」
「……エンジェ」
カインとロイスも顔を見合わせた。
……クラノス……光同盟と闇同盟……もしかして因縁ってのは……
気付いたラーティスが思わずトゥーリに振り向く。
「姫にお願いしようと思って居ましたが……自分達で出てくるなんて……」
トゥーリは苦笑して肩を竦めた。
「召喚されてないのに出てくるなんて馬鹿エンジェ!!」
ミルフィーユは慌て叫ぶ。
「……姫……このままではクラノス達の身が危ないダテン!!」
ルエドもシェレスティアナに言う。
「こうなっては仕方無い。済まないが、他の皆も協力してくれ」
「……弟子達が申し訳有りませんダテン」
シェレスティアナに命じられ、クロードは申し訳無さそうに謝る。
「おいっ!!馬鹿!!良く聞くダテン!!このままだと、お前らは消滅するダテン!!」
声を大きくしてノヴァが叫ぶ。
「なっ何でキシか!?」
訳が分からないクラノスは目を白黒にさせて慌てる。
「馬鹿エンジェ!!私達は剣杖が本来の形エンジェ!!
チビエマの姿と人間の姿じゃチビエマの姿の方が魔力半分だからヤバいエンジェ!!
姫が召喚してないのに無理矢理とか自殺行為エンジェよ!!
私達剣杖は姫の魔力無しに存在出来ないエンジェ!!」
普段大人しい静かなディーヴァも手をバタバタ動かして、顔を林檎みたいに真っ赤にして叫んだ。
「キシぃっ!?」
「ケビっ!?」
「ニャ!?」
クラノスを始めとするチビエマ達は絶望して真っ青になる。
「ですが、このままでは姫の異空間にチビエマのまま我々も干渉すると消滅する可能性もありますエンジェ」
冷や汗を流してマノもシェレスティアナに進言する。
「なぬ!?」
それを聞いてシェレスティアナも目を白黒させフラフラしてしまう。
「たっ大変だぁ!?てぇへんだ!!」
えらいこっちゃ、えらいこっちゃとシェレスティアナは動き回る。
「姫!?新生児が動いたら駄目エンジェ!!」
慌てハルヒもシェレスティアナに駆け寄る。
「どうする!?どうすりゃいいんだぁ!?
このまま剣杖が消えたら目覚め悪りぃ!!」
ラーティスも慌て百面相を始めた。
「私の魔法で15分だけ、この辺り一面を全てこの私の魔力領域にします。
その間だけ、皆さんの姿も元に戻れると思いますのでその間にクラノス達を穴から引っ張り出してください」
状況を見ていたトゥーリは進言して周りを見回す。
……キシ……!?
……冷酷な軍師が……何故そんなことを言い出すキシか!?
クラノスの記憶にあるのは、聖騎士や臣下を殺した恐ろしい獣の姿。
今は人間の姿で優しく微笑むトゥーリの表情に、クラノスは困惑する。
「トゥーリがやるなら仕方ねぇ!!俺も魔力領域を展開すりゃ30分は時間作れるだろうぜ」
苦笑してラーティスも言うと、魔力を一気に放出して周囲に展開させて行く。
「……すまん、ラーティス、トゥーリ……任せる!!」
申し訳無さそうにシェレスティアナが言うと二人に頼んだ。
「承知致しました」
笑みを浮かべトゥーリも一気に魔力を展開させて行く。
「仕方ねぇな」
ラーティスは笑って言うと集中する。
二人の魔力は辺り一面を膨大な魔力で消していく。
その様子は光景は、姫の元へと向かっていた亀馬車からも見えた。
「……なんて強い魔力領域でしょう……!?」
メイドは思わず息を飲む。
「ラーティス殿と、これはトゥーリの……!?」
気付いて驚愕する騎士。
「……何が……一体……」
目を見開いて固まる騎士。
「不足の事態でも起きたのかもな……」
「敵襲でしょうか?」
目を細める騎士に隣に居る騎士が尋ねる。
「いや、剣杖の姫に危害を加える奴は居ないだろう。
それ以外の何かだ」
首を横に振って騎士は答えた。
「……申し訳有りませんウサ……」
「これ以上亀馬車は進めませんカメ……」
ウサビトとカメが謝ると、亀馬車はゆっくりと止まり辺りに静寂が満ちる。
膨大な魔力領域は魔力の壁として具現化しており、同じく強い魔力を持っていない者が入ると魔力毒となり身体に甚大な障害を与えてしまう。
他にも近くにいた聖騎士や魔騎士、人間の聖騎士達も帝国の者を連れて魔力領域から離脱してくる。
辺りは静寂が支配していた。
「あのチビエマの下半身、私達も内側から押せば良いのかしら?」
マリアナは隣の美女に尋ねる。
指差す先には、下半身だけあるチビエマ士族の身体。
「いや、我々は召喚されてない身だ。外界に下手に振れてしまえば消滅してしまう危険がある。
ここは様子を見よう」
マリアナに女性は首を横に振って答えた。
「歯痒いですわね」
マリアナは心配そうに眉を寄せると、両手の拳を握りしめるのだった。




