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#7 【パーティ結成】いこうよゴブリンの森【ストーリー攻略】

はい。(はいじゃないが)



2022/11/15/9時追記


日間9位って何?(ありがとうございます)


 配信開始から30分ほど経った。ここまでのあらすじは

・今日はストーリーをやる事にした

・歩き雑談中にシェリーがクリエナ飲んで咽せた

・ジジイの長話を聞いた

・暇すぎてシェリーがクリエナ飲んで咽せた

・クエストが発生した

・目的地の森に向けて出発!←イマココ!


「……ゴホッ」


 昨日に抜けた門とは別の東門――平原ではなく森林行き――に並ぶ三人。今回は空気を読んでシェリーとアリサは魂魄武装を仕舞っている。


>黙って飲むな

>咽せるなら飲むな


「好きだから…」


「ついでに持ちネタだから、でしょ」


「暗黙の了解を明かすな!?」


「可愛いし、よし」


「バレっち……」


>これ百合?

>百合……

>……無自覚百合、だな


 門番が居た堪れなくなり目を逸らした。ため息混じりにアリサが二人を現実に引き戻す。


「二人とも、見つめ合ってないでさっさと行くよ。まず私が前衛、バレッティーナは中後衛を一緒くたに。シェリーは突撃。OK?」


「あたぼうよ!」


「了解」


 そうして東門からリンドの森に突入した三人。森と呼ぶには間隔が広いが、背は高く繁る広葉樹と、疎らにある茂みからの不意打ちには気をつけねばならない。


>おー…

>流石オープンワールドゲーって感じ


「私のオファニエルはどうにかなるけど、アリサはちょっとキツそうだよねー」


>わかる

>何故かって? いやいや…デカァァい!説明不要!


「いや……ここらの木程度ならなんとかなる」


 アリサが木を軽く叩きながら答える。何を測ったのかは……敢えて追求しないでおこう。


「えぇ……っと、アレはうさぎかな?」


 パーティを組んでいる場合、その人数に応じて登場するエネミーの強さや数は変動する。その最たる例がボスバトルであり、例えば先日ソロ攻略されたロック・ギガントであれば体力は増え、ミニロック達が横に控えるようになるし、地響きだって頻繁に起こしてくる。

 そして、今森の入り口にいる三人の前に登場したのは4体のウサギ。もしシェリー一人ならウサギは1体だけだったろう。とはいえ……攻めタンク(サードムーン)瞬間ダメージ(ミラーラミ)継続ダメージ(オファニエル)。この脳筋達の前には……


>合掌

>可哀想

>ちょっとトイレ行ってくる


「れでぃごーオファニエルッ!」


 オファニエルが地面に叩きつけられて猛進。ウサギはその音に驚き一時足が止まる。その視線の隙を見逃すアリサではない。武術で習得した踏み込みと、ゲーム(体術I)の補正を存分に活かし死角からの急襲を成功させる。


「よそ見してるんじゃない?なんてねっ!」


 サードムーンの特徴である身体強化を存分に活かした薙ぎ払い&避けた一羽にオファニエルのギャリララお説教がヒット。感極まったウサギ達は涙目で上に飛ぶ。


「視界良好」


 そしてザザザザッザザンッと軽快に響く発砲音。3羽のうちそれぞれ左右で4発真ん中に2×2発。それで終わり。ドロップ品をゲット。


>うーん、想定通り

>小さいとこれくらいなんだよな

>最初からロック・ギガント見たせいで物足りない

 

「流石にアレ連チャンは疲れるよ…」


「その割には楽しそうだったけど?」


「楽しさと疲労度は別っ!」


>わかる…

>終わった後に感じるよね、疲労


「あんまり視聴者達もシェリーのこと甘やかさないでね。すぐに調子乗るから」


>了

>#[シェリー、この金で焼きそばパン買ってこい]#

>自分で行けw


「何で!?」


「……行かないの?」

 

 今度はリロードをとっくに済ませたバレッティーナが二人を牽引する。コメント欄に捨て台詞を吐いて元のフォーメーションへと戻る。まだ森の散策は始まったばかりだ。


「さっきの射撃でわかった。ミラーラミ、射速と弾道落下が着弾まで変わらないね」


「エッ、もう気づいたの?戦闘回数ってまだ2桁もないよね?」


「私の位置から算出した相対的距離と高さでわかる。詳しい検証はしてないから確証はないけど」


>怖…

>なんかシェリーの幼馴染だなって思った

>もしかして大体のゲームの銃もそうしてる?


「当然。自分の使う道具の仕様くらい全て把握しておくべき」


「分かる!」


「うっわぁ……」


 大会勢(バレッティーナ)の行動に同調を示すTA勢(シェリー)と、困惑するエンジョイ勢(アリサ)。データを突き詰めないと良い成績を叩き出せないプレイスタイルと、とりあえず殴れば解決するという経験則の違いだろう。


「でも、アリサの強引さは少し憧れてる。前線に出るならそれくらいの胆力は積まないと、ね」


「……褒めてるの?」


「もちろん」


「……そ」


>本当にこいつら仲良いな

>これはガチ幼馴染

>突然の告白は百合の特権


「……」


>[シェリー機嫌直して]

>耳壊したくないからやめて

>膨れっ面可愛いなおい…


「……ッフ」


>いやクリエナ飲んでただけかい

>心配を返せ


「私が嫉妬とか似合わないからね!」


>……ハハッ

>TAとか嫉妬の連鎖な気がするんですがあの


「うるさいなぁもう。マイクの位置オファニエル直上固定にするよ?」


>許して…

>嫌だ…

>アリサ何か言ってる


「ならば私に刃向かわない事だなぁ!はーっはっはぁぁぁぁ――」


>え

>は?


 突如反転するシェリーの視界。理由を探れば足に掛かる麻紐。これは――


「――来たっ!ゴブリンの群れ!」


>すごい足音がするんだが

>法螺貝も聞こえね?


 そう。ストーリークエスト第一話は[ゴブリンの群れを調査せよ]。ろくすっぽ話も聞かずクエスト受理を押したシェリーは覚えていないだろうが。


――

ストーリークエスト

1-1

[ゴブリンの群れを調査せよ]

現在、リンドの森にはゴブリンが大量発生しているらしい。群れの様子はどうなっているか確かめに行こう。

報酬:3000C

──


 これが受注時のクエスト画面。そして現在は少し変わってしまっている。


――

ストーリークエスト

1-1-β

[ゴブリンの群れを調査せよ]

現在、リンドの森にはゴブリンが大量発生しているらしい。群れの様子はどうなっているか確かめに行こう。

β:ゴブリン達の知能は平時よりも高く、なんと待ち伏せされてしまっていた。この窮地を切り抜けよう。

報酬:3000C

──


 βへは罠に掛かるなどで発見されることで強制分岐する。ちなみにαは完全隠密でゴブリン拠点へと辿り着くことで分岐到達できる。一応報酬自体には差はない。


「ヘルプっ!!ヘルプミー!!」


「馬鹿じゃないのシェリー!?さっき罠あるって言ったじゃん!『コッチを見ろぉぉぉっ!!!』」


「聞こえてなかったー!タスケテー!」


「……解くのは自分でやって」


>ゴンッていったww

>銃弾で紐を…ロマンだな


 纏めて波状的に突っ込んでくるゴブリン達をアリサが咆哮Iで纏めて惹きつけ、薙いで薙いで堰き止める。バレッティーナは呆れた様子で遠距離攻撃ゴブリンを撃ち、余りの弾丸ででシェリーを捕まえた紐を撃つ。脳天で地面とキスをした結果HPが減少したがまぁ再生もあるし許容の範囲。なんなら自業自得まである。もしも捕獲されていたのがアリサだったと考えたら……光に目の眩むシャケが如く押し寄せる緑の波に潰されていただろう。


>量おかしくない?

>まぁ一人くらいタンクがいるという想定なんだろうな。それか全滅前提か。


「だーもうっ!もう少し丁寧にしてよ!」


「戦犯に優しくするほど私はお人好しじゃない」


 そんな台詞と併せザザザザザッと的確に吐かれる弾丸。舌を巻くようなオールヘッドショット。裏を掻かんとしたゴブリンはワイプアウト。

 ついでにアリサの方はと目を向けると、彼女は戦闘時徐々にステータスアップ(+アドレナリン増加)の狂化Iと、キル確定時HP&MP微回復(+高揚感付与)の勝鬨Iの相乗効果で……いやもう、それは凄まじい本性を曝け出している。

 

「ザコがザコがザコがザコがッ!雑兵が幾ら束なったとしてもな――『テメェら全員等しく地獄行きだァァァァァ!!!!!』ァァァァァァッハハハハハハァァァッ!!!」


>怖っっ!!??

>耳は壊れないけど心が壊れそう

>ねぇ、画面に女の子しか映ってないはずなのに全部トラウマに見える

>安心しろ、みんなそうだ


 (使用者のテンションにより補正のかかる)声量に応じてヘイト値を上昇させて畏怖を与える咆哮Iスキルも、当然絶好調。なんなら仲間であるはずのシェリーも軽く竦んでしまう程。このままいけば、ただの笑い声さえ咆哮I扱いになるのではなかろうか。そう思わせるほどのラッシュタイム。それと風切音(ヴォォンッ)with血肉と骨の砕ける音(ドグチャバギッ)


「シェリィィ!!!!」


「ひゃぃっ!?」


 まるで地獄の呼び声。流石にこれにはいつものシェリーでは耐えられない。


「"行けェ!"」


「ひゃぃぃっ!」


>お目目ぐるぐる

>かわいいね

>(|)<かわいいですね

>やめろww


 闇がフカフカしてきたがオファニエルのセットは恙なく。接地と同時に回転あいや"戒天"し、ロッカーアームでジャンプ台を設置する。踏み切りの際には縦に回って足で踏み切る。こうすることで縦回転を挟むことができ、邪魔な枝ごと纏めてゴブリンを合挽き肉にする。


>精神は弱るが技術は衰えない法則

>いいなそれ採用


 ミラーラミの射程では届かないゴブリン達の奥へとオファニエルの駆動機関は出力全開。どこから湧いてるのコレ、という疑問を抱く暇もない緑緑緑。いや、元々緑だったが……アリサの周りは既に赤く染まっている為認識が狂ってしまっていたらしい。ちなみにアリサは累積した強化の結果、木を幹ごと粉砕している。脳筋は極まると怖くなる。


>お目目に優しいね

>いやゴブリンの血走った目はなかなか怖いぞ?

 

 なんだかんだ地味かつ技術チートなバレッティーナがビジュアル的には三人の中でマシなポジションに落ち着くのである。ちなみに彼女のスキル構成は体術I(基本装備)はもちろん追撃I(加算)銃劇I(乗算)のダメージ上昇セット。そして更に魂魄拡大I(昆布の特徴強化)も載っており、ミラーラミの効果(ヒット数階乗)と併せるとマガジンダメージは中々のものになる。勿論、"当てられるのならば"。

 

>っていうかこいつら正気じゃなくない?

>ゴブリンに理性とかないだろ

>SWのゴブリンはかなり面倒。ここまで直線的に来る事は少ないぞ?


「……確かに。そういえば魔物がなんとか言ってたっけ」


>ヴァーサ様の魔物が活性化…って奴?

>活性化どころかイカれてませんかね…

>ジジイも様子がおかしいって言ってたぞ


「何も聞いてない」


>……

>……

>[異世界の化物とかいうの探して]


「わかった。ありがとう」


 スパチャに礼を言って決意をキメると、ピロリンとシークレット分岐が発生。その内容は、側から見ている視聴者達の予想通りだった。


――

ストーリークエスト

1-1-EX

[ゴブリンの群れを調査せよ]

現在、リンドの森にはゴブリンが大量発生しているらしい。群れの様子はどうなっているか確かめに行こう。

β:ゴブリン達の知能は平時よりも高く、なんと待ち伏せされてしまっていた。この窮地を切り抜けよう。

EX:長く戦っているあなた達は気がついた。このゴブリン達の様子は、ハッキリ言って『異常』だ。その原因を探れ。

報酬:3000C+?

──


 分岐条件は一定時間耐えること、またある程度の進行度を達成している事、そして――"異世界の化物"の関与を疑う事。その推理を打ち立てた者に一斉に向けられる目。アリサが馬鹿みたいに稼いだヘイトが、一斉にシェリーに向けられる。


「……えっ?」


>ヒッ

>グリンってこっち向いたな?

>これなんてホラゲ?

>SWORDです


「『よそ見してんじゃねえぞゴルルルァァァッ!』」


 アリサからヘイトが完璧に剥がれた為、もう尋常ではない身体強化を受けているアリサは堰き止めから鏖殺に転化。クラシックホラーはスプラッタホラーで再び上塗りされた。


「えーーと…二人とも!私はこのまま前進する!アリサとバレっちは後から追いついてきて!」


「先に行ってろ――『キル数はアタシの勝ちだがなァァァァァァ!!!!』」


「了解。また後で」


 二人と別れ、何故か全力で追いかけてくるゴブリン達から逃げまくるシェリー。その理由は何か、この後に思い知ることとなるだろう――

サーモンランのヒカリバエとL4D2のゾンビラッシュを掛け算してゲーム初期補正をかけたくらいのラッシュです。三人なのでまだマシです。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 姦しい……かしましい……ぉかしぃまじぃ……
[一言] バーサーカーがバーサーカー過ぎてこちらもテンションを上げないと対抗できない… そして咆哮を上げる乙女と、機械の駆動音とそれに興奮して歓喜の絶叫を上げる乙女が視聴者たちの鼓膜に破瓜の血を流させ…
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