脱出と旅路②
「ふーん、じゃあ私もついていこっかな。記憶もないしやることもないし。」
「そっか、じゃあ一緒に行こうか。ところで君の名前は?」
「ん?だからわかんないって。なーんも覚えていないの。あ、そうだ君が名前つけてよ。多分私センスないし。」
「いや、僕もセンスなんてないと思うよ。」
「私が決めてほしいと思ったからいいんだよ。」
「そうか、じゃあセス、セスはどうだい?」
「セスね。わかったこれからはセスって呼んで。ところでさ、なんか聞こえない?」
そういわれてケーゴは耳を澄ます。砂が落ちる音がする。そしてその音はどんどん大きくなっている。
「ここは崩れる。早く逃げよう。」
そういってケーゴは立ち上がりセスの手を引く。「ライト」の光でぼんやりと周りは見えるが進むスピードは遅い。音はどんどん大きくなっている。駆け出したいのに駆け出せない。苦虫をかむような思いをしているとセスが口を開く。
「ねえねえ、私が案内してあげようか。あんまり見えてないみたいだし。こっちから空気が流れてるよ。」
そう言ってセスはケーゴの了承を得る前に手を引いて駆け出す。
「そういえばさ、君の名前を聞いてなかったよね。これからなんて呼べばいいかな。」
「僕はケー、いや僕の名前はミスラ。ミスラって呼んでくれ。」
駆けながら僕は答える。
「わかったよミスラ、外でたらたくさん旅をしよう。私は知らないことばっかだから、色んなものがみたいんだ。何にもわからないけど、楽しいことがいっぱいある気がするんだ。」
ミスラはハッとする。これまでこの世界を楽しもうとしたことがあっただろうか。僕は力が全てのこの世界で必死に生き残ることを考えていた。結果は突き落とされてしまったが。あの時地球人としての僕は死んだんだ。力に妄信していた僕は。生まれ変わろう、弱者なりに楽しんで生きよう。セスとならできる気がする。いやそう生きるんだ。これは誓いであり契約だ。
「セス、僕はどこまでも君と旅をすることをミスラの名に誓おう。面白おかしく生きよう。」
「うん、どこまでもいこう、どこから来たかなんてわからないけど、どこまでもいこう。あっ、ミスラ外が見えてきた。」
駆けた先には優しい光が見えていた。