召喚と王国③
そのまま上村ジョウは、王様に会わせたいと言った初代転移者前島ヒロシに連れていかれてしまった。放置された僕たちは床に座って少し会話をした。
「志村さんと佐川君は特に異常はないかな。」
「ケーゴ先生、俺は大丈夫です。志村さんはどう。」
「私も何とか大丈夫です。でもケーゴ先生、私たちはどうなってしまうんでしょう。」
「正直僕にもわからない。ただ戦いが日常にある世界だ。魔力というもので力が決まるなら、僕たちも同じ力を手に入れるために努力するしかないだろう。それがどんな形でも。」
「戦いなんて・・・私、戦いたくないです。」
「あんまりお勧めしないな。戦うしかないと思う。」
「それはおかしいですよ先生。俺たちは勝手に呼ばれて、魔王を倒すために戦えってのがあっちの言い分でしょ。志村さんの意見のほうが普通ですよ。ジョウが勇者みたいだったし、前島さんも戦わなくてもいいように配慮するって言ってたじゃないですか。」
「戦わないと戦えないは全然ちがう。力を行使するかどうかは別として、力がないと舞台にすら立てないんだ。」
「ケーゴ、わかりづらい。めっちゃわかりづらい。先生の卵はもっとわかりやすく説明するようにしないと駄目だぜ。要はさっきの前島さんの魔力は生でみて感じただろうけど、この世界は魔力が人としての格に直結してる。だから何をするにしても魔力を強く、魔力を増やす、言葉はよくわからんが魔力で価値を示さないと一生誰かの言いなりになっちまう。みんなにケーゴはそうなって欲しくないんだわ。もちろん、勇者だったジョウが全てを解決してくれる英雄譚みたいなこともあり得るのかもしれないけど、そんな他力本願より自助努力でどうにかしようぜ。まあ俺は単純にわくわくしてるけどな。ある意味究極にわかりやすい世界だぞ。」
「脳筋・・」
「志村、わかってても言っちゃいけないこともあるんだぞ。」
シンペイのおかげで少し場が和んだところでメイドたちが来て僕たちがこれからとりあえず寝泊まりする宿舎まで案内してくれることになった。
宿舎は僕たちが召喚された教会のような施設を出た隣にあった。外の空気や景色は僕らの世界とそう変わらないように思えた。ただここは城の一画にあったみたいで高い城壁があったので景色というか土の色や生えている木々を見る限りでは、だが。
宿舎には運ばれた生徒たちもいるみたいだったが、皆部屋で寝ているらしい。
とりあえず部屋は二人一組の相部屋だったから、シンペイと同じ部屋で寝ることにした。
メイドが言うには、食堂に昼ごはんの用意があるとのことなので部屋を選んだあとメイドが持ってきてくれた服に着替えて向かうことにした。