脱出と旅路⑨
セスが起きると、ことの成り行きを話した。魔猪を倒したこと。依頼をほっぽり出したこと。それによってもう街には入れないこと。セスはわかっているのかわかっていないのかわからない返事を繰り返していた。
それからミスラとセスはひたすら西に歩いた。街にもよらず荒野を歩き回った。
幸いにも荒野でも食べれるモンスターは多く、水もミスラの魔法で何とか凌ぐことができた。
二週間も道なき道を歩いていると、段々と木々が増えてきた。マンティブ大森林が近い証拠だろう。その間、セスに知ってる限りの魔法を教えたがどれも上手く使うことができなかった。
さらに一週間も歩くと、完全に森の中を入った。常に薄暗く、鬱蒼とした雰囲気がずっと続いていた。そしてその場所についた。
そこはさっきまでの森とは思えないほどひらけていて、大小様々な家が建っていた。しかも家の形も和風だったり洋風だったり無茶苦茶だ。そしてそんな光景に目を奪われていると、僕とセスは囲まれていた。人間や様々なモンスターに。
その中でゲームに出てくるような神官の服を着た人間が前に出てきて、僕たちに話しかけてきた。
「君たちは何者だ。」
「僕はライザム王国で召喚された転移者です。ミスラと言います。あ、彼女、セスっていうんですがセスは転移者じゃなくて、ダンジョンの最下層でたまたまあって記憶を無くしてるようだったので一緒に旅してます。元からここにくる予定だったのですが、ブダモンクさんに会って西に行けっていわれたのもあります。」
ブダモンクの名前を聞くと明らかに神官風の男の雰囲気は軟化した。
「ブダモンクさんの知り合いですか。それならようこそと言いたいところですが、いくつか聞きたいことがあります。」
「はい、知ってることなら。」
「まず、なぜライザム王国からこちらへ?」
「仲間にダンジョンから落とされて、命からがら助かったと思ったらダンジョンが崩壊してきて逃げてきたら王都とは全然違うところにでてしまい元から王国もあまり好きではなかったのでこちらにきました。」
「なかなか過酷な体験をしたんだね。それでもう一つ聞きたいんだけどもいいかい?」
「どうぞ。」
「ライザム王とは握手したかい?」
「いえ、しようとしたんですが静電気みたいなのが起きて握手はできませんでした。」
そう言い終わると、神官風の男は目深に被っていたローブを外した。その顔は中東風の浅黒い顔立ちをしており、彼はにっこりと破顔させ言った。
「ようこそ、僕らのコミュニティ、「新しい村」へ」