脱出と旅路⑧
「地球国。ブダモンクさんも転移者なのですか?」
「近しい存在ではあるけど正確には違うな。そんなことよりこの奥のダンジョンコアは俺がもらってもいいか?」
ブダモンクは口では尋ねつつもその足はもうすでにダンジョンコアがあるだろう場所に向かっていた。ミスラもそれに慌ててついていく。
「もちろんそれは構いません。もう少し質問してもいいですか。」
「お、あったあった。やっぱりちっちゃいなあ。まあいいか。質問はあと一つまでだ。俺はおしゃべりじゃないんでね。」
そういうとブダモンクが手に取ったテニスボールくらいの大きさのダンジョンコアにかぶりついた。およそ食べ物を食べているとは思えない音がなる。
「やっぱりこの程度じゃ全然だめだな。おうそれで質問はいいのか。もう俺は行くぞ。」
理解の及ばぬ光景に唖然としていたミスラはブダモンクの言葉で頭を現実へと戻す。そして今一番聞かなければいけないことをひねり出す。
「地球国へ僕たちも連れて行ってもらえますか?」
その言葉にブダモンクは一瞬びっくりしたような顔をした後、「ガハハハッ」とさっき以上の大笑いをした。
「無理だな。今のままじゃ。絶対道中で死ぬ。だけどその大胆さには気に入ったぜ。連れてはいけないが人生の大先輩として一つアドバイスしてやろう。いつだって真理は西にあるんだ。三蔵法師だって西へ西へとすすんでいっただろ。西にいけば俺の知っている村に運が良ければたどり着く。俺の名前をだせば話ぐらいしてくれると思うぜ。」
そういってブダモンクは自分で開けた大穴に戻ると跳躍して消えていった。
ミスラはその光景を見終えた後大きく深呼吸をした。そしていまだ気を失っているセスを担いでダンジョンコアのあった場所を超えて光のほうへ歩いて行った。
外にでると全く知らない場所だった。ここでミスラは街にもどるか西に進むかの二択を迫られた。
「真理は西にある、か。」もとから西にはいくつもりだった。それをブダモンクの言葉がよりミスラの西への衝動を強めていた。
ミスラはセスへの了解や、依頼のことなどかなぐり捨てて。落ちていく太陽に向かって歩き出していた。