脱出と旅路⑦
ミスラとセスが扉の前に立つ。3メートルはある扉だ。装飾はたいしてない簡素な扉をミスラは一瞬セスの顔を見て開ける。
中には広場があり、その中央には大きなイノシシがいた。魔猪と言えばいいのだろうか。ミスラとセスは扉の中に入り身構える。開いた扉は自ら閉まっていく。「バタン」という音と共に魔猪がこちらに駆け出す。
「ミスラッ」
セスの叫び声だけが聞こえミスラの体が横に吹っ飛ぶ。そして「ドゴン」と爆音が鳴る。
ミスラは一瞬頭が真っ白になり、少ししてから頭を振り状況を把握する。セスが魔猪の体当たりを直接受け横たわっていた。
「セスッ」
叫ぶが反応がない。セスが勝てない相手にミスラが勝てるわけがない。魔猪は倒れているセスに一瞥してミスラのほうを向く。じりじりと突進に向けて後進していく。
ミスラはそれを見ても足がすくみ動けない。諦めに近い脱力が体を支配していた。うまく動かない体を何とか動かして防御体制だけは取る。
魔猪が今にも突進をしようとした瞬間それは起きた。上からすごい圧を感じた後天井が崩壊し、すごい勢いで人が落ちてきた。そしてそのまま魔猪の身体を貫いて半裸の体に血をべったりとつけながら地面に降り立った。そして倒れているセスのところに歩いていくと、ジロリと見た後
「変だな、この子強いけど弱いぞ。久しぶりに強い奴の気配がしたと思ったんだけどな。まあいいか、いずれ強くなるだろう。それまでは我慢だ。」
血濡れで半裸、加えて筋骨隆々の身体で腕を組み勝手に納得しているようだった。
「あなたは何者なんですか。」
ミスラは口を開く。
「おおッ、他に人がいたのか。おっよく見ると、お前は弱いけど祝福されているな。鍛えて理解すれば強くなれるぞ。理解しないことには強くなれないがな。」
そういって「ガハハハッ」と笑う。
「いや、あなたの名前とか所属とか教えてもらってもいいですか。助けていただいたお礼もしたいので。」
「ああ、名前か。俺はブダモンク。地球国の戦士だ。」