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セカイが変わっても  作者: マルネ
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脱出と旅路⑤

 暗闇を歩いていくとこちらに向かってくる生物の気配がした。


「セス、何か見えるか。」


「なんかおっきい犬が来ているよ。」


ミスラはナイフを持ち戦闘態勢をとる。


暗がりから犬の魔物が勢いよく出てきた。ミスラ達を噛み殺そうと迫ってくる。それをミスラはサイドステップで避けようとする。避けたことを確信して魔犬の横っ腹にナイフを突き立てようとする。刹那、魔犬が反転しミスラに迫る。何度も経験した死の気配を感じる。


「よいしょー。」の声とともにその死の気配は霧散した。ミスラと魔犬の間に入りこんだセスの拳が魔犬に叩き込まれる。


頭を強打された魔犬が脳を揺らされ昏倒する。その隙にミスラは魔犬の頭にナイフを突き立てる。悲鳴と共に魔犬は体を黒い霧なようなものに変えてミスラの体に吸収される。


ミスラの体に力が溢れるのを感じる。そしてここがダンジョンであることを確信する。魔力吸収が起きるのは魔物だけだからだ。


そして「なんか消えたよ。」とか「体大丈夫なの?」とか言ってくるセスを横目にミスラは自分の底意地の悪さに恥を感じていた。魔物を倒した時に得られる魔力吸収はラストヒットをした者の総取りだ。つまりこの世界はパワーレベリングができる世界なのだ。王立学園でもある程度ダンジョンに慣れたら、強者に付き従いパワーレベリングをする予定だった。伝手さえあれば誰でもある程度の強者になれるのはこの世界も一緒だ。ただ吸収できる魔力には一人一人に限界量があり、転移者は総じて現地の人より多いとされている。実際現在一線で活躍し、名を知られている者たちのほとんどが転移者だ。そんな彼らも幾たびも魔物を殺し、魔力吸収を重ねたことで強くなったのだ。それほどこの世界において魔力吸収は大切だ。それを動転していたとはいえ、火事場泥棒のようなことをした己をミスラは許せなかった。ただそれをミスラはセスに言えなかった。何も知らない彼女に。いずれは知ることにはなるのだろうが、今は言えなかった。


 この世界では強者になればなるほど単独で行動するものが多い。パーティーで強敵を倒したとしても力を得られるのは一人だからだ。強くなればなるほど孤独になるのだ。セスは強い。ここまで生きてこられたのはセスのおかげがほとんどだろう。だから、いつかは真実に気づき去ってしまうのではないのかと思うと恐れてしまう。王国に生存確認をされないために人里を避けたのもあるが、心のどこかには何も知らない彼女のままでいて欲しかったのかもしれない。そんなエゴからセスとはきちんと向き合っていなかったのかもしれない。


だがいまはこのダンジョンを脱出することに集中するべきとミスラは感情に蓋をする。


「体は大丈夫だよ。さあ、ここはやっぱりダンジョンみたいだし、早く抜け出そう。また斥候を頼めるかい。」


「任せてよ。」


そういって胸をたたくセスと共にミスラは歩き出す。


 



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