召喚と王国①
月がよく見える都会の夜半、僕と高宮シンペイは居酒屋帰りの家路までの路を歩いていた。
「いや、本当に助かったわ。ケーゴの教育実習先に連れてってもらって。来年俺が行くときの参考になった。まじで。」
「担当の芝先生に頼むの結構大変だったんだ。このご時世、学校もいろいろと敏感だから。でもよかったよ、そう言ってくれて。とはいっても明日もあるんだから帰ったらすぐ寝てくれよ。遅刻は笑えないからね。」
「わかってますよ、ケーゴ先生。さすが未来の先生はしっかりしてなさる。星でも見ながら寝ますよ。てかなんか星ってこんなに少なかったかね。」
「都会は空気が汚いから見えないのもしょうがないさ。ロマンチックなこと言ってないで大人しくすぐ寝なさい。じゃあここでお別れだね。また明日小岩駅6時30分集合で。」
「あいあい、じゃあな。」
そういって僕たちは各々の家に向かった。
翌日、僕たちは無事合流して教育実習先である都内の高校、私立青目高校2年4組の教壇に立っていた。担当の芝先生は放任主義なのか、授業を完全に僕たちに任せてどこかに行ってしまった。
「今日から本格的に授業をさせてもらいます。クレルモン公会議から十字軍への流れについて見ていきますので、黒板を見ながら配布した資料の穴埋めをお願いします。わからないことがあったら高宮か僕に聞いてください。」
「はいはーい。」
一人の男子生徒が手を挙げた。
「えっと、上村君だったよね。」
「そうです、わたくし上村ジョウです。質問というか昨日は芝先生がいたから聞きづらかったけど、ケーゴ先生とシンペイ先生はどーいう関係ですか。ソウイウカンケイですか。」
クラスにドッと笑いが起きる。
彼はクラスでなかなかの人気者みたいだった。
「そういう話題はセンシティブな話題だから、茶化すような感じはよくないな。」
「違いますよ。僕は多文化共生社会に生きる一人間として見聞を広げたいだけですよ。で、どうなんですか。」
「だってさ、どうなんだいシンペイ先生」
「あのなー、ジョウ君。どこをどう見たらそんな勘違いをするんだ。」
「ケーゴ先生とシンペイ先生って全然タイプ違うじゃないですか。なのにすごい仲良さそうだし、これはって女子が言ってました。」
女学生達の黄色い声が響く
「だから、」
シンペイがその声を遮って誤解を解こうとしたその時
僕たちは光に包まれた。