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イケメンチャラ男とポンコツチョロイン

しじみのお味噌汁に溺れて死んでしまえ

作者: 空原海

イケメンチャラ男シリーズ(なろうラジオ大賞3)「しじみのお味噌汁(https://ncode.syosetu.com/n2859hj/)」の続編です。




「あんたのお父さんって、ジョンなんだって?」


 ジョンはアメリカの有名なロックバンドのイケメンギタリスト。

 と言っても、既に五十近いんだけど。

 しかし。

 ハリウッドスターもロックスターも、イケメン達は年齢を重ねても、永年イケメンぶりを誇っていたり、ますますイケメンになったりする。

 化け物がウヨウヨしている世界だ。

 逆に、全盛期とのあまりの落差に、自分の質素さを棚に上げ、『お気の毒に』と同情を捧げることも、これまたよくある。


 まあ、そんなことはいい。

 話を戻そう。


 目の前の後輩の顔。

 異様なイケメン――認めるのも(かん)(さわ)るが、否定するには整いすぎてる――だから気になるのかと思いきや、初めて見たときの既視感。

 あれはジョンだったのだ。


「認知されてねぇ……ませんけどね」


 ギロリと一睨みすると、ヤツは眉を上げた。

 このオーバーな顔芸がまた、イラっとする。

 この業界には()()()()類の人間が多いのも事実だが、()()()てんじゃねーよ、と嘲笑してやりたい。

 一方で、()()()じゃなくて、()()()()だと言わんばかりの顔が腹立たしい。


「私生児ってこと?」

「そ。先輩つっこむね。ファン?」


 またもやヤツの敬語は、百億光年彼方の銀河団へと投げ捨てられた。


「ファンじゃない」

「ふーん」


 興味なさそうに会話を打ち切られる。

 そしてしじみの味噌汁を白い陶器のマグカップで啜っている。


 ヤツの連日の二日酔いに、仕方なく。そう仕方なく。

 あたしはLAにある日系スーパーでフリーズドライ味噌汁を買い求めた。


「会ったことはあるの?」

「ねーよ」

「会いたくないの?」

「まあ……気にならねーってわけじゃねぇけど」

「この世界、どっかで繋がってるわよ。あんたが声上げれば、セッティングしてくれるんじゃない?」

「そこまでは。それより覚えたいこともやりたいこともあるし」


 チャラくていけすかない男のくせに、まっとうなことを言うから、まるであたしの方が仕事を忘れた脳みそ空っぽの浮かれ女みたいだ。


「随分、薄情なのね」


 これは当てこすりだと、さすがにわかっている。

 だけどヤツは特に気にする素振りもなく「アイツが俺のハハオヤを覚えてるとも思えねーし」と言った。


「まさか! いくらスターだって、そこまで――」

「あのさ。夢見てるところ悪いけど。俺ですら、覚えてねぇ女はいるよ。()()からって相手を全部覚えてられるほど、女のことしか考えてねぇわけじゃねーから」


 しじみの味噌汁に溺れて死んでしまえ。

 心底そう思った。




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― 新着の感想 ―
[良い点] 先輩、優しいーー。 わざわざ日系スーパーに!! しかもフリーズドライの高級品!! 安いインスタントのしじみ風味じゃなくて! 先輩の愛を感じてしまった。 [気になる点] ジョンきたーーー…
[一言] 『しじみの味噌汁に溺れて死んでしまえ。 心底そう思った。』って なんだかねー しょっばい愛情を感じちゃうわけですよ このフレーズが分かる日本人で良かったなあと思えてしまいます(#^.^#)…
[一言] 最初から最後まで空原海節でロックな感じの中に、しじみのお味噌汁をぶちこむと言う暴挙。 最高すぎる! しじみのお味噌汁って日常感漂う単語が入ってると、登場人物に何故か親しみを覚えてしまうのよね…
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