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あれ? 俺……詰んでね?  作者: Aion
天に唾吐く愚か者……編
4/41

チャンスは突然やって来るよなっていう話。 ③

次回は10/1の朝八時です。


 よし、今回は少し余裕をもって間に合ったみたいだな。


 まだ放送室の電気がついているのを見て、そう判断する。

 が、その直後にパッと電気が消えて栗色の髪をサイドテールにまとめた小柄な人が出てくるのを見て、意外とギリギリだったんだなと冷や汗が出てくる。

 手早く用事を済まして、帰ろう。


 そう思い、声をかけようとすると、東城先輩も俺に気がついたのか声をかけてくる。


「君、一年生? まだ残ってたの? 早く帰った方がいいよ!」


 東城先輩がそう話しかけてくる。


「あっ! それとも放送部の誰かに用があったの? ごめんね、今は私しか残ってないの」


「いえ、先輩に用があったんです」


「私?」


「はい」


「そっか。分かった! ちょっと待ってね、今この部屋の鍵閉めちゃうから」


 彼女は〈放送室〉とかかれた鍵を取り出し、扉を施錠する。

 扉を横に引いたりして、きちんと扉に鍵がかかっているのを確認してから、彼女はこちらを振り返り、サイドテールがフワッと回る。


「それで、用ってなに?」


 東城先輩が用件を聞いてくる。


 さっきと同じように、少しずれた告白で自然に振られる作戦でいこうと思う。

 どうしようか……やはり、フィクションではありがちな、純粋そうな人が実は腹黒いっていう感じでいくか。

 噂では一切そんなことはなく、マジで聖人君子みたいな評判だったからまず間違っているだろう。


「俺は来栖秋人です! 先輩の誰にでも優しくて、天真爛漫なところに惚れました!」


 まず噂で聞いた通りのことを言う。

 その次に、ずれた内容を話す。


「実は人見知りなのに、頑張ってそれを隠しているところが可愛くて、守ってあげたくなるし、実は腹黒くて、猫をかぶっているところとかもカッコいいと思いました! 俺と付き合ってください!」


 自分でも何言ってるか分からなくなってきた。

 守ってあげたくなるとか、上から目線過ぎて、お前何様だよって感じだし、腹黒いのを隠して猫をかぶってるところのどこがカッコいいんだよ……。

 

 思わず自分で突っ込んでしまうほどの意味が分からない告白文になってしまった。

 だが、これなら確実に振られるであろう。


「もしかして君が! ………いや、それはないかな………なにかに使えるかもしれないし………よし!」


 小声で何か喋っているようだが、距離があってよく聞こえない。


 きっと、この変人をどうやってうまく躱そうかとでも考えているに違いない。

 噂通りのモテ具合だと、俺みたいな変な告白をしてくる変人もたくさんいただろうし、どんな感じに断るのか、期待が高まるな。


 そういえば……噂の中に、東城香奈は腹黒で、その態度は全て計算づくのものであるっていうのがあったな。

 一人しか言ってなかったし、信憑性は低いと思ったが知らず知らずのうちに告白文に影響してしまったようだ。

 あり得ないと思うが、もし本当なら俺の立場はヤバイことになりそうだな。

 秘密を知った俺は生かして返さない……とまではいかずとも何かしらの対策は打ってくるだろうから。

 まあ、そんなことはあり得ないが。


「ごめん! 一晩考えさせてくれない? 明日にはちゃんと返事をするから!」


「別に全然構わないですよ」


 俺としては、振られるのは確実なので、結果が遅いか早いかの違いでしかなく、いくら時間がかかっても一向に構わない。

 

「ありがと! 後輩くん!」


 去り際に彼女は俺に挨拶をして、身をひるがえす。


「じゃ、私は帰るけど後輩くんも遅くならないようにね!」


 そして彼女は小走りで下足の方へかけていく。


 よし、俺も帰るか。


 用事が終わったので、帰路に着こうと思い、歩き出す。

 が、時計を見ると最終下校時刻まで時間があまりなかったので、若干早歩き気味で東城先輩が走っていった方向とは逆に移動する。




 マンションの入り口で部屋番号を打ち込み、自動ドアをくぐる。

 エレベーターにのって五階ほど上がって、エレベーターを降りたところから四部屋目の604とかかれたプレートがつけられた部屋が俺の家だ。

 両親は俺が十歳の頃に他界していて、それ以来俺を引きとってれくれた母の弟の弘之(ひろゆき)叔父さんのお世話になっている。

 とはいっても、学費以外は両親の遺産と俺が稼いでいるお金でやりくりしているわけだが。

 叔父さんは生活費も出してくれるといってたけど、さすがにそこまで迷惑かけるわけにもいかないからな。  


「ただいまー」


 家に上がり、制服を脱いで椅子にかける。

 中学で着ていて、今は部屋着になっているジャージに着替えるとシャツとその他の洗濯物を入れて、洗濯機を回す。

 時計を見ると、もう七時を回っているところだった。

 急いで、晩飯兼明日の弁当に詰めるおかずを作り始める。

 

 今日はいつもより大分遅いし、あんまり凝ったものは作れないか……。


 そう判断して、割と簡単にできるレシピにする。


 まず、手早く玉ねぎと人参、キャベツを切る。

 厚めの豚肉があったので小麦粉をまぶし、フライパンを火にかける。

 今のうちに、冷蔵庫から生姜チューブ、ニンニクチューブを取り出す。

 ………ニンニクは弁当にも入れるからなしでいくか。

 酒、みりん、醤油、砂糖を混ぜたところにすりおろした玉ねぎを入れて生姜を絞りだし混ぜ合わせる。

 これで生姜焼きのタレはできた。

 次に、同じく酒、醤油、みりんを混ぜたところに今度はオイスターソース、鶏ガラスープの素、味の素を入れてかき混ぜる。

 フライパンが暖まったところで、油を引き片方には豚肉を入れて焼き色をつける。

 もう片方には玉ねぎ、人参を入れて火を通す。

 豚肉の両面に十分焼き色がついたら、玉ねぎを入れてその上に蓋のように肉を被せて、蒸し焼きのようにする。

 もう一つの方で、人参を箸で突き刺して、火が通っているか確認する。


 うん、この感じなら大丈夫だろう。


 キャベツを入れ、水分が抜けてしんなりするまで炒める。

 生姜焼きの方に戻り、タレをかけてかき混ぜながら少し煮詰める。

 先に出来た生姜焼きをさらに盛って、残ったフライパンを見てみるといい感じに水分が抜けていたのでタレをかけて混ぜながら炒める。

 仕上げにブラックペッパーをかけて完成。

 

 料理をさらにのせる前に、三分の一ほどをタッパーに入れる。

 そして、盛り付けた料理をテーブルに持っていき、食事を始める。




「ごちそうさまでした」


 食べ終わった皿を流しに入れ、水を張っておく。

 時計を見ると意外に時間はたっておらず、七時五十分だった。


 たしか……今日はライブの方か。


 実は、俺には裏の顔って言うほど大したものではないけども、もう一つの顔がある。



 そう、俺は………配信者なのだ!!



 ………登録者数六人の底辺配信者だけどな。

 

 自分で言っていて悲しくなったので、気分を変えるために準備を進める。

 と言っても、ほとんどする準備なんてないんだが。


 サクサクッと準備が終わってしまい、八時まで五分間待機する羽目になる。


 ……ようやく八時か。 

 よし、配信開始して―――。


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