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4話 発動

いつの間にか、眠ってしまっていた。



湿気を含んだ服、昨夜の雨でひんやりとした空気に

寒さで目を覚ます。


雨はもう止んでいた


(こんな知らない街じゃな。言葉だって通じなさそうだ)

外国に行くと、言葉が分からなくて殺されることもあるらしい、と聞いたことがあった。


俺は、うろつくのをやめて、ただ彼女の側に腰を降ろし続けた。

心配というのは偽善で、ただ俺一人じゃ怖かったのかもしれない。

何もかもが違い過ぎていて・・



空が明るくなってきた、

しののめ頃だ

方角が判った。雷が鳴った方が西側だ



「ぐぅぅぅ・・・・」

空腹でお腹が鳴る


バイト先から急いで出てきたので、賄い料理を食べそこなっていた。

(死んでも、腹ってへるもんかな?)


ショルダーバッグにサンドイッチが入っていたので、バックを探していたら

上からバサリと何かが降ってきた。

(なんだ!?)


それは上着だった。


俺が、少女に掛けた服だ。

(なんで上着だけ)


辺りを入念に見渡した。


バックも少女の姿もない

(いや、あった。バックは今の今まで間違いなくあった)


立上り周囲を見渡す。

(何なんだ?)


上着を、もう一度ばさばさと振ってみた。

何故、上空から上着だけ降ってきたのか、上の方を見渡す。


低層にどんよりとした灰色の層積雲が所々まだ残っており早い速度で風に流され、上層には巻積雲が太陽に照らされ東の空がほのかに色づいていた


目線を落とすと、建物が視界に入る。


屋根は茅葺き、四角くて大きな煙突がある。壁は白い漆喰作り。

壁の表面に見える黒く張り巡らされた柱は木製だ。


日本の古民家というより、レトロなヨーロッパ風だ。

なぜかって、煙突や壁の一部は黄土色と赤土色のレンガ造りだったからだ。

長手だけの段、小口だけの段と一段おきに積んである。イギリス積みだ。


洋画などでしか見ない建物だ。


たしか、シャーロックホームズの向かいの家も灰色の茅葺屋根だった。


さびれた英語らしき看板、所々字が消えている案内板はレトリック文字で書かれている。

何て書いてあるかなんて読めやしない。

せっかく行先らしい矢印の看板があるのに読めないのだ。

英語は、一番苦手だった。

いや、そもそも英語だろうか。英語とフランス語の区別だってできない。

もう、絶望的だ。



「コツコツ」



前方の方から石畳を歩く音が聞こえた。足音は一つだけだ。

俺は耳に、全身全霊で集中した。


無意識に、俺は後ずさりしていた。



「動かないで! 両手を上げなさい!!」


不意に背後から何かを後頭部に押し付けられる。

全く、気配を感じなっかた。足音は前方からしたはずなのに



声の主は女性の声だった。もっとも鋭い口調には女性らしさはみじんもなかったが。



意思に関係なくガタガタと震えだした両手をやっとの思いで上げると

「ゆっくり、こちらに向きを直しなさい! なお、一切の抵抗を禁止する。」

そう言われた。


情けないことに俺は両ひざまでガタガタ震えだしていた。

おそるおそる向き直ってみると、俺の頭につい先刻押しあてられていたモノは


棒のような・・先端が丸みを帯び星型をしている、錆鼠色さびねずいろの杖だった。



10代ぐらいの菖蒲色あやめいろの髪を頭のてっぺんで一つに丸めて纏めた女性。

赤っぽいモンゴルの民族衣装の様なものを着ている。


目は、薄い翡翠色(ひすいいろ)



八頭身の整った体形で顔立ちも透き通る美しさで引き込まれそうだ。



不意に、彼女のいくえにも重なった長いスカートが一瞬不自然に

風もないのに揺れた。


「キャァ」」


俺が凝視していたその先で、彼女は先ほどとは全く違った声を上げた。


何故か、セクシーな声と姿だ。頬も少し顔が紅潮しているようだ。



長いスカートの中から見えるはずのない彼女の白く美しい素足が見える。



原因が判った。

3~4才位の幼女が彼女の長いスカートをたくし上げて、顔を出し覗いていた。


「ソフィア様そこからは顔を出さないで下さいと何度も・・・・」


幼女はまた、スカートの中に隠れてしまった。



杖が一瞬それたが、何事もなかったようにすぐに杖を構え直してこちらに向ける。



菖蒲色あやめいろの髪の美女はもう気にしていないようだ




「あなた、不思議な見なりね。どこから来たの」

十代の女の子の声というものはどうしてこうぶっきらぼうなのだろう。

美しさが台無しだ。


自分の価値をまるで判っていない。声だけが男性的、暴力的に俺の心に響いた。


しかし、その姿を眺めているうちに美しい菖蒲色あやめいろの髪が俺に何かを

思い出させようとしていた。



そう、青いコインだ!

今思えばあれもこんな色だった。


青白く発光し

丸く、☆の様な刻印が押されていたコイン


俺は、コインを探した。

何処か服の中にないだろうか。


手に取ったはずだけど、その後の記憶があいまいだ。

俺はここにいる経緯を説明しようとした。けれど、


「・・・・」


相手の話は理解できるのに言葉が話せない

(なんで声がでない!?)


口をパクパクさせ頭を少し左右に振り話せないとジェスチャーした。


「そんなウソ・・つくもんじゃないわ」

彼女が警戒心をさらに強めた。


突如、左上腕に違和感を覚える。

ジリジリと、火傷の様な熱さに思わず右手で左上腕をかばった。

(何かされたのか? 音はしなかったけど、彼女がやったのか?!)


「両手は離したままに」



あわてて、手を放そうとした瞬間

視界に文字の羅列のイメージが喚起された。


何かに、つき動かされたように、俺は

おもむろに文字列に重なるように左から右に手を動かした。


精神感応(テレパシー)


「・・・・だよ」


お団子ヘアが目を見開いて驚く、杖を両手に抱える様に持ち直した

精神感応(テレパシー)が使えるの?」



ただ、頭の中に言葉が聞こえる。それをなぞっただけだ。

意味なんて知らない。


今まで、そんなの使ったことはない・・当たり前だ、聞いたこともない言葉。

(何なんだ、くそ)

精神感応(テレパシー)なんて使ていたらこんな人生送ってきていない。
























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