2話 小さな子
どの位、目を閉じたまま時がたっただろう
コインの閃光の刺激が収まった後も、網膜や脳に
残光が残っている
あの、青白く発光した形がはっきりと
目がチカチカして瞳孔がおかしくなったのか
まだピントが合わず、視界が霞んではっきりしない
視力には自信があったのだが
もう、周囲は薄暗くなっている、それだけは判った。
両手で顔を覆い、時折まばたきを繰り返し回復を待った。
まばたきしていると、バイトの事が脳裏をよぎる。
今田とは年が離れていたが、地元が同じで趣味も似ていたから
昔はよくつるんでいた
たまたま、親に紹介されたのが今田と同じ職場だった
最初は心強かった
頼り切ってしまったのがいけないのか
一緒に働くようになってから、関係が悪化した
悪化したでは済まない、周りを巻き込んだ相克がある
もう、誰にもあいたくない。
バイト辞めて、当分の間、引き籠ろうかな・・・・人生詰んだな
俺は両頬を、手で叩く
しっかりしろ、そんなこと考える場合か、今は
ベンチに置いていたショルダーバッグに
点眼薬が入っていたのを思い出しバックを
目を閉じたまま手探りする
指先がひんやりした肌を撫でる感触がした・・・・
他人様の肌に間違って触れてしまったのかもしれない。
(やばい)
ショルダーバッグを探すのを諦めた。
諦めだけは早い
ただ、相手の反応がない
思ったより触ってなかったのかもしれない
少しホッとした。
視界が無くなってから、しばらく経っていたので
隣のベンチに誰かが座っていたのに気がつかなかった
ただ、こんな瘴気を発する俺の隣に座るなんておかしな奴だ
あれこれ、考えていると
ようやく視野が戻ってきた。
もうすっかり辺りは暗くなっていた
早々に立ち去ろう、さすがに日が落ちると肌寒い
「・・・・!」
違和感をおぼえ、おもむろに立ち上がる
周りをもう一度見渡し、はたと気付く
いつもの街の喧騒がない・・
道路が石畳の道になっている
外灯が殺風景なLEDからガス灯? になっており
周囲を薄暗く照らしていた
周囲も煙くさい、スス臭い、焚火の様な臭い
違和感で足元をみる
薄青白く照らされている物体・・それは明らかに人だった。
すらりとした白い手先、
女性の手だ。
反射的に飛び退いた、
大声を出してしまった。
運動神経は良い方だ、体がとっさに動いた。
十代そこそこの少女。
白く、いや銀色に輝く髪の毛が目に飛び込んできた。
閃光で目がおかしくなったのかもしれない。
半身を布で覆われているので
生きているのか、死んでいるのか判別しない
ピクリとも微動だにしないのだ